半休
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
やはり気になる。
仕事をしていても落ち着かず、どうにも集中できない。
昨夜の、げっそりした円香の顔がちらつくのだ。
何か深刻な病気なのだろうか?
円香は仕事のせいだと言っていたが、どこの世界にそんな業種がある?
ストレスか?
ブラックなのか?
.......
.....
...
ああもう、やめだやめ!
俺は上司に掛け合い、半休を貰うと、午前中で仕事を切り上げた。
悩むのは性に合わない。
売店で栄養ドリンクと、高カロリーなチョコレートを買うと、俺は円香の仕事場へ行くことにした。
.............................................
「邪魔するぜ。」
ノックはするが返事は聞かずに、普段円香がいる部屋の扉を開ける。
ここは円香達が事務仕事をする部屋だ。
端末の載った幾つかのデスクに各人用のキャビネットと、一見、ホワイトカラーの事務所の様にも見える。
だが、各端末に映し出されているのは、原料価格や純利益の推移などではない。
最新の論文や、超最新の実験データだ。
そして部屋にいるのは、俺と同じように作業着を着た者達ばかりで、やはりここは開発担当部署なのだ。
部屋の奥の方で、円香の声がした。
「あらプッカ、いらっしゃい。どうしたの?」
「いや、どうしたもこうしたも.......うん?」
そう言いながら、部屋に入ってみて驚いた。
部屋には五人程がいて、それぞれ端末に向かっていたのだが、どいつもこいつも一様に顔色が悪く、げっそりしていたのだ。
不調なのは、円香だけじゃなかったってわけだ。
俺は円香のデスクへ近づくと、栄養ドリンクとチョコレートの袋をそっと置く。
「差し入れだ。少しづつでも栄養をつけてくれよな。」
「あら、ありがと......嬉しいな、心配して来てくれたの?」
「ああ。」
そう言いながら、俺は部屋の奥へ目をやった。
部屋にいる人間のうち、一番奥のデスクに座ってるのが、円香の直属の上司だ。
そいつまでが、げっそりとやつれている。
俺はそいつのところへ歩いてゆくと、おもむろに尋ねた。
「どうも。いつもうちの円香がお世話になっております。」
「それはこっちのセリフですよ。ようこそ、プッカさん。どうされました?」
俺の突然の訪問に気を悪くした様子は無いが、こいつも顔色が悪い。
「『どうされました?』、それこそこっちのセリフなんですがね......皆さん、そんなにやつれて一体どうしたってんです?何かヤバい事でも企んでるんじゃないんですか?」
円香が慌てて立ち上がり、俺達の方へ近付いてくる。
「大丈夫よプッカ。ほんとに大丈夫。今のところ、一応極秘のプロジェクトなのよ。だからこの仕事が終わったらちゃんと説明するわ。ね、外に出ましょ?」
体調が悪いくせに慌てたせいで、ふらっとよろめいた円香を思わず抱きとめる。
「お前がこんなになってるのに、気にならないわけないだろ。仕事で全員が体調不良になるなんて何があったんだよ?俺にも言えないことなのか?」
俺は円香の上司に向き合い、直談判する。
「なあ、あんた達、一体何を隠してるんだ?俺の円香をこんなにまでして、何をしようってんだ?」
興奮のあまり何か口走った気がしたが、俺は構わず円香の上司を睨みつける。
数秒間の対峙の後、彼はため息をついた。
「......ふむ、いいでしょう。プロジェクトは終了間近だし、それにプッカさんなら円香さんの身内みたいなものだ。プロジェクトが完了するまで口外しないとお約束頂けるのなら、特別にお教えしましょう。ただし、どうなっても責任は持ちませんよ?」
そう言うと、ちらりと横の扉を見た。
確かこの向こうは実験室の筈。
そこに何かあるのか!
俺は扉に近付くと、ドアノブを握る。
「だっ、ダメよプッカ!危ないっ!」
円香の悲鳴にも似た叫びを無視して、俺は勢い良く扉を開けた。
そして.......
その部屋の真ん中に置かれていた「あるもの」を目にして、俺は気を失った。
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