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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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円香の不調

お読み頂きありがとうございます。新章です。

「有難うございました。」

「はいよ、ご馳走さん。」


料金を払って店を出る。

お気に入りのトマトピザを平らげ、腹は満ちている。

だが、プッカの顔には「満足」ではなく、「心配」の二文字が貼り付いていた。


「大丈夫かな、円香のやつ.....」


誰に言うともなく、一人つぶやく。

ここ数日、そして今日も、円香が店に来なかったのだ。


.............................................


二日続けて店に来なかった時点で、電話で話をした。


「ごめんね。仕事が忙しくて。うん、そのうちに店にも行けると思うから。」


少し元気が無いように感じたが、その時はそれほど気にはかけなかった。

むしろ、鬼の霍乱ってやつか?などとからかったものだ。

だがその後も円香は店に来なかった。

仕事上がりのビールを生きがいにしている、あの円香が。


店のシェフに聞いたところ、一応食べてはいるらしい。


毎朝、開店前に顔を出し、サンドイッチをテイクアウトしていくそうだ。

レタス、トマト、そして薄く焼いた卵焼き。

肉は入れないでくれとのこと。

恐らくそれだけが、一日分の食事。


「今まで当店でお召し上がりいただいていた量からしても、随分と食が細くなっておられるようです。余程ご体調がすぐれないのでしょうか?」


とのことだ。

知り合って結構経つが、円香が食事と酒をおろそかにしたことは無い。

事態は、思った以上に深刻なのかもしれない。


「女の部屋を男が訪ねるなんざ、ちょいと問題があるが、そうも言ってられないよなあ.....」


少し遅い時間だが、売店で栄養ドリンクを買い、プッカは円香の部屋を訪ねた。


.............................................


「......はい?ああ、プッカ。来てくれたんだ.....」


インターホンを鳴らすと、しばらくして円香の声がした。

さらにしばらく待つと、玄関の鍵がガチャリと鳴り、ドアが開く。

嬉しそうに、円香が顔をのぞかせた。

頬の肉が落ち、顔色も悪く、げっそりと痩せている。

そのさまにプッカは目を見張った。


「おいおい、大丈夫か?いや、大丈夫じゃないな。これ飲んで寝てろよ。」


と、栄養ドリンクを差し出す。

それを受け取りながら、円香は弱々しく微笑んだ。


「ありがと。まあ立ち話もなんだし、入ってよ。散らかってるけどね。」

「いや、さすがにこんな時間に女の部屋へは.....」

「いいから、いいから。私とあなたの仲じゃない。」

「どんな仲だよ.....」


躊躇ためらうプッカを強引に引っ張り込む。

だが、円香の目の輝きと、手を握る強い力に、プッカは少し安堵する。


「まあ、思ってたよりは元気そうだな.....」



部屋は散らかっていた。



「助かるわ、有難うプッカ。最近食欲が無くて、掃除する気力も無いんだ。」

「病気か?どこか悪いのか?」

「ううん、そういうわけじゃ無いの。ただ、頭痛、眩暈めまい、吐き気が酷くてね.....」


ベッドに腰掛け、栄養ドリンクを少しずつ飲みながら円香が話しかける。

目の前では、プッカがてきぱきと部屋を片付けていく。


「掃除ぐらいなら任せてくれ、だけどなあ.....せめて下着ぐらいは脱ぎ散らかさないでおけよ.....」


散らばった洗濯物を集めながら、プッカは呆れる。


「いいじゃない。私の下着にさわれるなんて、役得ってもんよ。」

「じゃあ、どれか一つ貰ってもいいか?なるべく匂いの付いてるやつ。」

「ダメに決まってるでしょ、このヘンタイ!」

「そのヘンタイに洗濯をさせてるのは誰だよ.....?」


軽口をたたきながら、プッカは本題に入る。


「それで、最近どうしたんだ.....?仕事で行き詰まってるのか?」

「うん、まあ、行き詰ってる訳では無いんだけどね.....ちょっとしんどいのは確か、かな.....」

「俺で良ければ、相談に乗るぞ。」

「ありがと。でもそういうわけじゃ無いんだ。本当に、ただしんどいだけの仕事なの.....」

「.....食事も出来ない程にか?」


円香は微笑むが、プッカは心配で仕方が無い。

食欲の無い円香なんて初めてだ.....


「ふふっ....安心して、つわりとかじゃないから。」

「ば、馬鹿っ!そ、そんなことは考えてないっ!」

「ん?ホントにぃ?」


からかうように言った後、嬉しそうにポツリと言う。


「でも、心配してくれて有難う。この仕事、もうすぐ終わると思うから。」

「何か手伝えることがあったら.....」

「じゃあ、おかゆさん作っておいてくれる?」

「分かった。本当に無理するなよ。だけど、ちゃんと食べるんだぞ?」

「うん、ありがとね.....」




(つわり、か.....私も、いつかあなたと.....)


思わずそんなことを考えてもうそうしてしまい、円香は顔が火照ほてるのを感じていた。



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