ライデン君
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「えーと、緊急時.....全環境.....」
はっきり言って、この名称は覚えにくい。
機体、でいいと思うのだが一応伝える。
「緊急時全環境対応用万能人型駆動機関ですよ。」
「ああもう、覚えられるかぁっ!今からコイツの名前はライデン君じゃっ!それでいいな?」
「ライデン君?」
それはまた、何故に?
「江戸時代に実在した、無敵の大関のしこ名じゃ。よし、ライデン君、まずはアイツと力比べといこうかのう。」
そう言うと、機体は、腰を低く落とす。
まるで、蹲踞の様に。
黒い球体が変化した、黒い人型も、つられたのか同じ様なポーズをとる。
そして両手を地面につくと、
「はっけよーい.....のこったっ!!!」
タイミングを合わせて、2つの人型がぶつかり合った。
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ガシンッ!!
「おっととと.....」
ぶつかり合いは、ライデン君がやや競り負けた。
よろめくも何とか足を踏ん張り、体勢を立て直す。
「やるのう!じゃが、次はそうはいかん!カワムラ君、エネルギーフルパワーじゃ!」
「了解。」
先程打ち込んだドリルの先には、真空状態にセットされた「石」があり、地熱をエネルギーとして吸収し蓄え、ケーブルを通して本体へ随時チャージしている。
その蓄えられたエネルギーを全て運動エネルギーへと変換することで、ライデン君は莫大なパワーを発揮できるのだ。
「どすこーい!!!」
今度はライデン君の力が相手を上回った。
吹っ飛ばされた黒い人型は、ゴロゴロと後ろ回りに転がると、先の不快な檻にぶつかって止まった。
その衝撃で、大量のレプトセファルス達が、檻から慌てて逃げだす。
しかし、相当強い衝撃でぶつかったように思えたが、檻は頑丈らしく、びくともしなかった。
そうこうしているうちに、逃げ出したレプトセファルス達が、再び檻へと戻っていく。
「どうじゃ、これでまずはわしが白星先行じゃ。」
黒い人型は、呆然、といった感じで座り込んでいたが、気を取り直したようにぴょんっと飛び上がると、再び彼女へ向かって突進してきた。
「よし来い!.....と言いたいところじゃが、ちょ待てーいっ!」
と、ライデン君は片手をパーの形に開いて、黒い人型を止める。
人型はその両足で急ブレーキをかけ、ライデン君の前で首を傾げた。
まるで、「どうしたの?」と言わんばかりのしぐさだ。
「ちゃんと蹲踞をしないとの。あと両手をつかんといかんぞ。最近は、そういった基本を疎かにする力士も多くての。嘆かわしいことじゃわい。」
それにしてもライデン君、あれだけ力任せの勝負をしながら、細かな動きもスムーズに行えている。
基本設計 : Dr.ユイ
製造責任者 : Dr.円香
流石は今を時めく2人といったところか。
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実は、ライデン君のパワフル且つ繊細な動きは、モーターによるものではない。
ライデン君には、贅沢なことに機体各所に多くの「石」がセットされている。
その数なんと108個。
いずれも砂粒程の大きさではあるが、1つの機体にこれだけ多くの「石」を用いた機体は、今のところ存在しない。
何しろ、この潜水艦ですら、同じ砂粒程の大きさの「石」が2つしか使われていないのだから(もちろん実験機としての要素もあるため、今後2号機以降を製造することになれば、その数は適正化されていくのだろうが)。
宇宙空間と同程度か、もしくはそれ以上に危険な超深海での稼働機械。
それは、「ちょっとした故障=死」となる過酷な環境下において、いついかなる時もこちらの思い通りに動く頑丈で高性能な機体でなければならなかった。
解決策を思いついたのは、やはりうちの所長だった。
「はっけよーい.....」
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