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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第五章 海の底へ

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一番深い底へ

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

「凶悪なモンスターではない......」


シンとした空気が流れる。

彼女はまるで、悪戯をした子供が許しを請うかのように、私を上目遣いで見つめる。


「......いやいやいや、駄目ですよ。危険なんでしょう?」

「じゃから、それほど危ないわけではないと......」

「というか、モンスターって何なんです?」


いや待て、まずは落ち着こう。


「素数でも数えるかの?」

「茶化さないで下さい。というか、何故に素数を?」

「え?じゃから、素数は孤独な数で1と......」

「あ、やっぱり結構です。」


何だか、話が余計にややこしくなりそうだ。


「えーと、まずはですね。ここより深いところに生物がいるということですよね?」

「うむ。そろそろ8000メートルじゃな。」


そうだった。

潜水艦は、今も潜り続けているのだ。

餌の無くなったアームは既に収納され、白い魚達も姿を消していた。


「確か、あの魚はここより深くでは発見されていませんよね?」

「正確には、水深8336メートルが記録じゃな。昔に読んだ本の記憶じゃから更新されているかもしれんがの。」

「となると、そこからさらに深くにいる生物といえば......」

「カイコウオオソコエビじゃな、これまでに見つかっておるのは。」


ふむ。

だがそれは、モンスターとやらではないだろう。


「確か、ヨコエビの一種ですよね?」

「うむ、大きくても5センチ程度じゃな。危険だというのは、もっと大きいらしい。」

「どの程度の大きさでしょう?さっきの魚は何と言って?」

「僕達が50上を向いたぐらい、とか言ってたから、6~8メートルといったところかの。」

「そのぐらいなら、この潜水艦よりは小さいですね。」


なら大丈夫だろうか?

この潜水艦は、強度に関してはお墨付きだ。

それにまだ、「切り札」もある。


「まあ、そんなわけで、もう少し潜ってみんか?」


.............................................


潜水艦「ディープシーイール」号は、水深10000メートルを越えつつあった。


「もうすぐチャレンジャー海淵じゃのう。この星の最深部へ行く日が来るとは、長生きはするもんじゃ。」

「老人みたいなこと言わないでください。所長はまだ20代後半でしょう?」

「前半じゃっ!勝手にサバを読むでない。」

「鯖は味噌より、醤油味で煮たのが好きですが。」

「どうでもいいわい!」


あえて他愛もない話をしてしまうのは、2人ともそれなりに緊張しているからだろう。

漫才の様なやり取りをしているところへ、部屋の天井に取り付けられたスピーカーからアナウンスが流れた。


『そろそろ最深部へ到着です。』


乗客達は皆、固唾を飲んで、窓の外を見つめた。

ハッチから出たアームの先には、餌の鯖の切り身が取り付けられ、どこにいたのか大量のカイコウオオソコエビが群がっていた。


「あのエビちゃん達も、鯖を食べるのは初めてじゃろうな。高圧の海水で塩味の効いた鯖になっておるかのう?」

「塩味ですか。鯖水煮の缶詰におろし生姜をたっぷりのせて食べるのが好きですが。」

「どうでもいぃ.....それ、美味そうじゃの。帰ったら各メーカーの水煮缶詰を全て買っておくように。」

「承知しました。」


そうこうしているうちに、潜水艦は、静かに海底へと到着した。

天井のスピーカーから、再び音声が流れる。


『水深11002メートルを記録。只今、当艦は最深部へ到達しました。』


無事に着いた喜びと興奮で、弾けたようにはしゃぐかと思われたが、こちらの部屋の観光客達も、隣の部屋の科学者達も、シーンと静まり返っている。

やはり、前人未到の領域へ到達したという想いが、人々をして厳粛な気持ちにさせているのだろう。


「うおぉぉぉっ!!!ついに来た!いっちばん深いところへやって来たぞいぃ!!!」


約1名を除いて.....


彼女は手近な窓に飛びつき、ライトが照らす海底をきょろきょろと見渡した。

そして素っ頓狂な叫び声を上げた。


「なんんじゃっ!!!!あれはっ!!!!!カワムラ君、カワムラ君っ!あれを見よっ!」


つられて私も隣の窓を覗き、そして、息を呑んだ。


ライトに照らされて浮かびあがったそれ。

明らかに自然の造形物では無い、それでいて、人工の物とも思われぬ大きな建造物らしきものが、ほんの数10メートル程離れたところに鎮座していたのだ。


この距離から判断すると、大きさは30メートル程だろうか?

中央に直径が10メートルほどの歪んだ球体。

そして、それを囲むようにあちこちがふくらんだり凹んだりした柱のようなものが、何本も複雑に絡み合っていた。


「何かの遺跡、でしょうか.....?」

「今のところは分からん、分からんが.....」

「?」

「古今東西、あのようなデザインは見たことが無い。なんと言うか、非ユークリッド幾何学的じゃな.....」


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