表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第五章 海の底へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/60

さらに深くへ

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

ライトに照らしだされる、まるで雪の様な微粒子。


マリンスノーと呼ばれるそれは、深海において上層から絶えず降り続ける微細な有機物だ。

動物や植物の死骸や、フンその他の排出物など、その由来は様々である。

そしてそれは、太陽光の恩恵を受けられない深海の生物にとって、貴重なエネルギー源であった。


「きれいなものですね、所長。」

「うむ、しかしのう、懸濁状態になっているとはいえ、これらは元々死体であったり、ウンコであったりしたものじゃろう?そう考えるとのう......」

「ロマンもへったくれもないですね。」


.............................................


暗黒の世界をライトが照らし、潜水艦は潜ってゆく。


また、歓声が上がった。

皆の視線の先には、7、8メートルはあろうかという巨大なクラゲ。

ゆっくりと、少し不気味にたゆたっている。


「スティギオメデューサ・ギガンティック!!激レアだぞっ!!」


2メートル程の巨大なかさから、ひらひらとした長い4本の腕をなびかせている。

なにせ目撃例が100回を少し越えるほどしかなく、未だその生態が謎につつまれているのだ。

隣の部屋からも弾けるような怒号が漏れているところをみると、科学者達も興奮しきって色々とデータを取ろうとしているようだ。


「やっぱりこっちで良かったですね、所長。」

「そうじゃろう。あんな喧騒に巻き込まれてみろ、じっくり楽しむことなど出来んぞ。」

「で、新曲の発想は思い付かれましたか?」

「まだじゃ。インスピレーションが湧いてこんわい。」


.............................................


潜航途中で、少し開けた場所に出た。


サーチライトでぐるりを照らし、生物をさがす。

沢山の足を持つ、長さ10センチ程度の透明な生物が数匹、海底の泥を食べながらゆっくりと動いていた。


「あれは、何だろう?」

「センジュナマコだな。」

「別名がシーピッグ。」

「海豚なら、イルカじゃないのか?」

「何か可愛いわよね。」


ぷっくりしていて、なんとも可愛い見た目だ。

表面はスベスベしていて、口の回りには先端に指の様な突起を持つ触手が、いくつも生えている。

この触手で海底の泥を食べ、有機物などの養分を取り込んでいるらしい。


個人的には、好きなデザインだ。


「所長、今度の新曲に、あれなんか如何(いかが)です?」

「ふむ、悪くないのう。」


見ると、彼女は小さなメモ帳に、例の丸っこい字で何やらびっしりと書き込んでいる。


『丸い体に詰め込んだ 溢れんばかりの君への想い』

『口の回りの無数の触手が ファーストキッスを狙ってる』

『僕の管足十四本は 君への想いで動くんだ』

『マリンスノーの降りしきる 冷たく暗い海の底 僕の心は熱いまま』


等々、なかなかに恥ずかしい文章(歌詞?)が並んでいた。


「覗き見するでない。」

「失礼しました。」


.............................................



潜水艦「ディープシーイール」号は、さらに深く潜り続ける。


途中何度も様々な深海生物に遭遇して、観光客達の好奇心を満たし、科学者達の焦りにも似たデータ収集欲を満たしていく。


いつしか、水深7000メートルに到達しようとしていた。


「いないなあ.....」

「いないわね.....」


潜水艦の幾つかのハッチは開かれており、そこから出てきたアームの先端には、深海生物を呼び寄せるための餌の魚肉がセットされている。

だが、皆の期待するその魚は、まだ姿を現わしてはいなかった。



上層から微かに届く船のスクリュー音。

クジラの鳴き声。

計器がそういった音を記録していく。



今回は無理だろうか?

皆が待ちくたびれ、そんな思いが頭をよぎった時、暗い闇を照らすサーチライトに、それが浮かびあがった。


ぬめりとした白い体に大きな口。

退化した小さな黒い目は、その顔に愛嬌を与えている。


誰かが叫んだ。


「来たぞっ!マリアナスネイルフィッシュだっ!」


気に入って頂けましたら、ブクマ登録、ご評価、ご感想など頂けますと、大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ