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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第五章 海の底へ

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潜水艦

お読みいただき有難うございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

青い海に浮上した潜水艦が、その白く輝く巨大な船体をまるで豪華客船の様に港に横付けしていた。


最新型の万能潜水艦である。

その名を「ディープシーイール」号という。


深海鰻と名付けられたそれは、直径10メートル、全長50メートルの長い円筒のような形状をしており、兎にも角にも強度が必要な潜水艦には似つかわしくない特徴が二つあった。


一つ目は、その窓の多さである。


マリアナ海溝の最深部では、1センチ×1センチの面積に1トン以上の水圧がかかる。

その水圧に耐えるためには、可能な限り覗き窓は少ない方が良い。

異なる材質の接触部分は、必ず強度が低下するからだ。

ところがこの深海鰻には、太陽光を受けてきらきらと光る程に、多くの窓が付いていた。


二つ目は、あちこちにみられる分割線の多さである。


つまりはあちこちにハッチがあるわけで、見る者の不安をより一層煽る。

これまた水圧のことなど、まるで考えて無いかのようである。

ハッチの中にはどんなギミックがあるのか?

それは、追い追い明らかになってゆくのだろう。


......多分。


一般の観光客達の不安げな沈黙をよそに、科学者達のテンションはやたらと高い。

彼ら彼女らには、この機体に対する絶対の信頼感があるのだ。


基本設計  : Dr.ユイ

製造責任者 : Dr.円香


狭い世界とはいえ、今や時の人となったこの二人のネームバリューには、それだけの説得力があった。


.............................................


いよいよ、深海に潜る日がやってきました。


抽選に当たった時は嬉しかったですけど、やっぱりちょっと怖いですね。

私を含めた一般の観光客はみんな、ものすごく大人しいです。

顔に「不安」の二文字が張り付いています。

素人とはいえ、こんなマニアックなツアーに申し込むんですから、水圧に関して多少の知識はありますからね。

本当に大丈夫なんでしょうか、あの潜水艦......


逆に科学者さん達は、大はしゃぎです。

まるで遠足当日の小学生みたい。


「遂にこの日が!」

「うんうん。昨日は楽しみで寝られなかったよ!」

「待っててよ~あたしのマリー♡」

「マリーって誰よ?」

「これこれ。マリアナスネイルフィッシュちゃんに決まってるじゃない!」

「成程、っていうか、あなた!何なのよそのぬいぐるみは.....」


すごく、テンションが高い.....

大丈夫、かなぁ?

いろんな意味で.....


おや、何か不思議な気配を感じるぞ。

私達と同じ、一般参加枠に一組の男女がやって来ました。


......誰なんだろう?

あの人達?


.............................................


「だから私の言った通りじゃないですか。みんなが見てますよ、所長。」


ぼそぼそと喋るのは初老の男性。

落ち着いた佇まいで、まるで世間一般が想像する「大学教授」のようだ。

少なくとも、大人気(おとなげ)無くはしゃぐ科学者連中よりは、年長者としての貫禄があった。


対して所長と呼ばれた女性の方。

皆が注目するのは、ひとえにこの女性が原因だった。


白を基調とした、一昔前のセレブの様ないで立ち。

つばの広い帽子に高いハイヒール。

極めつけは大きな丸いサングラスとマスクで、顔を隠している。

だが無論のこと、完全に悪目立ちする結果にしかなっていなかった。


「うーむ、やはりわしの持つ業界人としてのオーラは、こんなマスクでは隠し切れんか。有名人はつらいのう......」

「そっちの業界では所長、そんなに有名でも無いでしょうに......」

「何か言ったか?」

「いいえ。ただ少々、本音が漏れました。」


.............................................


係員が現れて、集まった人々に呼びかける。


「皆様、お待たせいたしました。それでは今から受付を始めさせていただきます。チケットをご用意して、二列にお並びください。」


はしゃぐ人々、不安げな人々、そして約一名の怪しげな人が、手続きを済ませ、順番に乗り込んでゆく。


出航の時は来た。


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