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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第四章 娯楽だって大事

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イルカちゃん

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

円香は仕事が速い。


先週試作を頼んだところだというのに、もう出来たという。

私は仕事が終わると、取る物も取り敢えず駆け付けた。


「いらっしゃい、待ってたわよ。」


格納庫の片隅にそれはあった。

小型とはいえ、地球を走るマイクロバスぐらいの大きさはある。


「小型のクジラちゃんだから、さしずめイルカちゃんってところね。」

「うん、そう思えば、この大きさでも可愛いわね。それにしてもこんなに早くありがとう。いくらかかったの?」

「こんなところね。」

「オッケー.....ちょっとまってね.....よし、入金っと。」

「はい、確かに。まいどあり♪」


端末を操作し、今回の試作の材料費を支払う。

ざっと、3か月分のお給料ぐらいだった。

いや、婚約指輪かよっ(古いネタだねぇ)!


決して安くは無かったが、今後のことを考えれば大したことは無い。

制作費は先日の大ジョッキで、お礼は今からの大ジョッキだ。


「この大きさなら、ギリ二人は乗れるわね。今度一緒にどう?」

「いいわね。大きさはご注文の通りよ。使い方を教えるわね。とは言っても、ほぼオートだから難しいものでは無いわ。」



..............................................



次の休日、私はさっそく試運転を行うことにした。


まずは格納庫の窓の近く、日の良く当たるところにイルカちゃんを置いて、表面に取り付けられたソーラーパネルでたっぷりと充電をする。

ちなみに、慣習的に「充電」とは言うけれど、電気をバッテリーに蓄電するわけじゃないから。

ソーラーパネルで発電された電気は、エネルギーとしてロス無く「石」に蓄えられるのよ。


この蓄えられたエネルギーを運動エネルギーとして使えば、推進力になる。

無論、電気エネルギーとして使うことも可能。


使われている「石」の大きさは、老眼持ちならば(私を含む....ほっといてよね)悲鳴をあげる程に小さい。

だって、砂一粒程の石があれば、巨大なクジラすら動かせるのよ。

通常の内燃機関エンジンやバッテリーとは比べ物にならないほど、超々小型化と効率化が実現しているの。



..............................................



蛇足だけれど、今回のように、「石」をパーソナルに使うことができるのは、月基地を始めとして宇宙で勤務する者の特権。

地球ではまだ、自動車も鉄道もモーターとバッテリーで動いているの。


宇宙開拓に関して「石」の使用が優先される理由は二つ。


第一に、常に命の危険と隣り合わせであるという事。

いつでも新鮮な水と空気が供給できるからね。


第二に、今回、私が頼んだこのイルカちゃんのように、「石」の新規用途開発が期待されているから。

必要は発明の母ってことかしらね。


けれどもね、新しい物を生み出す時には、いつだって心の余裕が必要不可欠。

あ、言ってなかったかしら?

このイルカちゃんは、私の楽しみのための秘密兵器。

宇宙開拓では、こういうの公私混同とは言わないの。


娯楽だって、大事なお仕事のうちなのよ。



..............................................



ある程度の充電ができたら、主電源を入れて、物資を積み込む。


鼻歌交じりに台車でガラガラっと運び込むのは、お酒と食料。

イルカちゃんの中には少し大きめの冷蔵庫が設置されている。

ここへ、お酒と食料を入れていく。

特にビールは、キンキンに冷やしておかないとね。


その後はホースをつないで、イルカちゃんに備え付けのタンクに水を入れる。

これは飲料可能な上水をたっぷりとね。

タンクが満タンになったところで水を止め、イルカちゃんの中に入る。


うん、もう皆さんお分かりですね。

中にあるのは、大きくて立派な浴槽。

湯沸かしのスイッチをON!

タンクから供給された水が暖められ、浴槽へお湯が満たされてゆく。



うふ。

うふふ。

うふふふふふふふふふっ。



時は満ちた。

正式名称「バスドルフィン」の処女航海が始まるわ♪


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