出逢い2
その日、リイネはいつも通りにギルドで依頼を受け拠点のある王都から西へ二日ほど歩いたカルミラ山へオークの群れを討伐に来ていた。
オーク単体であれば、まだ中堅ともいえるⅮランクの冒険者たちでも倒せるだろうが群れになると途端に難易度が跳ね上がる。その為Aランク以上の冒険者向けにに依頼が張り出された。リイネはソロだが、Aランク冒険者としてそれなりに名も通っている。いつも通りの簡単な依頼のはずだった。
異変に気が付いたのはオークの群れ6体を難なく倒し、少し休憩しようと大木を背に結界の魔術を張り座り込んだ時である。
少し離れた街道から届いてきた何かが争う音と血の匂い。
リイネはすぐさま立ち上がり走り出した。
手を出すまでもなければそれでいい。
しかし、手に余る状況であれば手助けするだけだ。
たどり着いた時に見たものは思わず息をのむ光景だった。
目の前には馬車であったであろう木片が散らばり、オーク3匹が御者であろう中年男性の四肢を振り回して地面に打ち付けて悦に入っている。
周りには護衛だったであろう冒険者らしき男たちが倒れていた。
すぐさま腰のベルトから投げナイフを取り御者の足を持っているオークに投げつけた。
そのまま流れるような動作で剣を抜き驚いている手前にいたオークを袈裟切りにし、返す刀でもう一体の胴を下から切り上げた。残る一体が殴り掛かってくるのをひらりとかわし、心臓へ向けて剣を突き刺した。
息絶えたオークに見向きもせずリイネは生存者がいるか淡々と確認していく。
残念ながら護衛も御者も息をしていなかった。
遺体をこのままにしておけば魔物をさらに呼ぶことになるため、道の端に土魔法で穴をあけ遺体から身元が分かりそうなものだけ抜き取り横たえると、丁寧に土をかぶせる。
オークの死体はマジックバッグに放り込んでいく。
この世界の命は、軽い。
命を守るためには金を払って実力のあるものを雇うか、自分自身が強くなるしかないのだ。
死んだとしても、それは自己責任になる。金と力。これがなければ生きてはいけないのだ。
リイネはそんなことを考えながら馬車の残骸へと向かった。
馬車の周りには荷物が散らばっている。
粉々になったものは放置し、何か使えるものがないか探す。このような場合、見つけた者が所有権を得るのである。
ふと、甘い匂いがした。
心が震える。高揚する気持ちを抑えて匂いのもとを探す。
匂いは街道の横にある倒木のうろの中から漂っていた。
走り出したい衝動を抑えて静かにナイフを持って近づく。どんどんと強くなる匂いを感じながらそっとのぞき込むとそこには、
必死に声を抑え泣く子供の姿があった。