表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/50

第三十八回  反攻


もはや足抜けできません……。





 ゾンビの開発によって、欧米は有色人種の『画期的管理方法』を得た。

 少なくとも、そのように思っていたわけである。


 しかしながら。


 当然、やられるほうはたまったものではない。

 特に中国では、反欧米から、反白人国家へと変わり始めていた。


 同胞……下手をすれば、家族、親兄弟をゾンビに変えられた怒りと憎しみ。

 そうなると、もはや戦場でも投降という選択は消えるしかなかった。

 ある意味で死ぬ以上の恥辱を受けることになるからだ。


 さらには。


 アジア各地で欧米に対する抵抗運動がわき上がり始める。

 心にすら自由もない道具にされるのだから、ごく自然な流れであろう。


 シャム王国は、しきりに日本……火星人へのアプローチが強くなっていた。

 台湾も、日本からの兵器購入を続けている。


 建前上の中立地帯たる植民地でも、日本人への接近を試みる動きが続発した。

 そして、我関せずだった日本国内でも。

 海外からもたらされるゾンビの情報に、世論は動揺した。


 このままで、いいのか――と。


「アジア同胞のため、立ち上がるべきではないか!?」


「鬼畜米英より、アジア解放を!!」


 と、まあ……。

 極端な意見が飛び交うが、そのへんは主流派にはなれなかった。


 以前より火星人が念入りに収集して、まとめた調査レポート。

 これに、中国や朝鮮系の思考や歴史・文化的な思想が人口に膾炙していたからだ。


「仮に手を貸しても、連中はそれを当然と思い、かえって増長するだろう」


「あいつらは恩を仇で返す。信用ならん!」


「いつまでも中華思想で噴き上がってる奴らには、良い薬だ」


 所詮、現状の日本にとって東亜は近くの他人……いや害獣でしかなかった。


 また、アメリカの黒人暴動における、アジア人の被害も情報として入っている。

 そうなると、黒人への同情も薄いわけだ。


「結局黒人連中もアジア人を見下してるんじゃないか」


 と、いうわけだ。


 こういうものが下地にあるため、アジア解放とかそんなものは、


「夢想的理想主義者のお遊び」


 と揶揄される始末。


 亡命や移民など、数少ない欧米系やアフリカ系も反応は薄かった。

 これは火星人によって、彼らがひと塊にさせなかったせいもある。


 言葉の問題などは、『突貫教育』によってクリアさせ――

 後は火星人の他、ドローンや人造人間などが念入りにサポートをした。


 当然多少のいざこざは起きるものの、おおよそは日本社会に適応していく。

 そも、周りが日本人しかいないので、嫌でも周りとまじわるしかない。


 日本人にも言えることだが、やはり同じ人種や民族が複数いると……。

 『同類』とばかり集まるようになる。

 それは本能的なものもあるので、しょうがない。

 だからといってほっておくことを、火星人はしなかったのである。


 分断されている、という意見もあった。

 ある意味、それは事実。


 しかし、


「いや、あくまで自分たちは〇〇人として生きたい」 


 と、自分たちの宗教や文化、価値観を貫きたい場合は、帰化はできない。

 宗教や思想は勝手だが、それを拡大して自己利益を広げれば確実にアウト。

 そういう意味では、なかなかに狭き門ではあった。



 さて、そして。


 アメリカが『血の粛清』とゾンビ化によって、国内の『秩序回復』を行う中――


 中国大陸では、毎日のように血の雨が降っていた。

 ソ連の支援を受けているとはいえ、開き直ったアメリカの攻撃は激しい。


 一時は、黒人たちの暴動は、戦線の崩壊を予測されたのだが……。


 ゾンビ兵の侵攻はとどまるところを知らない。 

 手足がもげようが、這って進み、武器がなくても噛みついてくる。

 ゾンビに喉を食いちぎられて死ぬケースも多発した。


 その行為は、もはや征服ではなく殲滅。


 武器や食料がいくらあっても、中国人兵士の疲労は蓄積するばかり。


 あくまでも徹底抗戦を構える中国軍ではあったが――


 その実態は、奥地へ奥地へ逃げていくばかりである。

 ゾンビに追い詰められ、あるいは誤認、仲間割れからの同士討ちも起こった。


 ついには籠城して、そこで現実逃避の宴会を繰り広げるという醜聞さえ起こる。


 その中で、追い詰められた挙句に親子が民間人や毒での集団自殺まで発生。

 あるいは森や岩穴に逃げ込んだものを空爆、また火炎放射器での『処理』。


 その狂気的な物量は、さすが大国アメリカと言うべきか。


 こんな状況でもなお、中国軍が戦い続けられたのは、ソ連の支援に加えて――

 大陸の広大さあってのことである。


 だが、逃げても逃げても先はなかった。


 周りを見ればゾンビだらけ。上を見れば爆弾の雨。

 勝利どころか、講和の目途さえ立たないのだから、救いようがない。


 今まではアメリカに押し付けていた欧州も、ドイツの参加で本気になっている。


 黒人暴動によって一時生産が止まりかけていたアメリカの工場も、復活。

 使い捨てできるゾンビの『成果』だった。


 だが、そうなると問題も数多く出てくるのだが――

 その一つが、白人の雇用問題。


 経営者にとっては、使い捨て可能で給料もいらないゾンビは理想の従業員。

 こと、工場や肉体労働の現場では顕著。


 景気は良くなっても失業率は上がってしまうというわけで。


 これに対して、アメリカ政府は中国の『開拓』を広く喧伝した。


「広大な土地と資源を持つ中国で、一旗揚げよう!」


 本国の中で行き詰った人間が、大挙して中国へと向かっていく。

 欧州でも似たような動きとなっていた。


 かつて原住民からアメリカという土地を奪ったように。

 今度は、中国……ということであろう。


 これには、中国人だけなく、ソ連も焦った。

 放置すれば、いずれ自分たちの支配下になる土地が全て持っていかれてしまう。

 やがて、ソ連は北の大地に封じられたままに危険性も。


「もはや新型爆弾の使用しかないのでは?」


「いや、あれは火星人に対抗するための材料だ。まだ使えない」


「確かに。中途半端なことをすれば、向こうの介入を招く恐れが……」


「少なくとも、研究中の重水素化リチウムを使用した進化版の完成を……」


「しかし! このまま中国大陸を放置はできん!」


「その通り。タイゲリウムの確保は、絶対だ!」


「最低でも、できるだけ時間を稼ぐ必要がある」


「だが、現地での戦意低下はなんとかしがたく……」


「――どうあれ、『多少の無理』はしてでも足止めをしてもらわねば」



 そして。


 中国共産党への支援物資に、ある薬物が大量に送られ始めた。


 効能は疲労を軽減させ、鬱を回復させる――と、説明書にはある。

 これの効果は絶大で、共産戦士たちはたちまちに戦意を再燃させた。


 そのうちに。


 命令のまま、欧米の連合軍に自爆に近い反攻を始めたのである。

 そこで死ぬのは消耗品のゾンビ兵だから、欧米側は当初気にもとめなかった。 


 だが、繰り返される恐れを知らぬ反攻に戦線はまたも低迷し始める。


 中には、女子供まで爆弾を抱えて突っ込んでくるケースも。

 もはや両陣営とも、戦死者ばかりを増やす大いなる消耗戦に。


 これに対して、アメリカを中心に、ナチス・ドイツが協力し合って――

 ゾンビの量産を、さらに増やしたのだった。


「チンクもニガーも、残らずここで使い切ってしまえ」


 その動きに、満洲では、


「いくらなんでも、これはまずい……」


 こう判断した敏感な富裕層が、国外に逃げ出す動きが始まった。


 表面上は特例扱いにあっても、所詮は自分たちも中国人である。

 いつ牙がむけられるか、わかったものではない。


 北へ南へ、それぞれバラバラに散り出していく。



 さて。その一方で。


 同胞や他のアジア人を捕まえ、『収容所』に売り渡す中国商人は健在。

 というよりも、どこにでも見られた。


 朝鮮半島、インドと……あらゆる国で。

 階層が下の人間は、高く売れる商品となってしまったのである。


 これに対し、あちこちで地下に潜っての抵抗運動が行われた。


 ソ連は自由と平等の美名をあげ、水面下で援助するが。

 その裏では、自分たちは自分たちで、ゾンビ処理の独自研究を行っていた。

 無論、スパイに情報を探らせ続けながら。


 こんな中、ドイツは満洲に乗り込んだことで、勢いを増していた。


 総統は叫ぶ。


「今回の中国戦線の後ろにいるのは、共産主義国家である! 最終的な解決はアジア人の背後に潜むソ連を叩かねばなしえない!!」


 と。


 実際、それは正解でもある。


 同時にこの泥沼戦線を一番歓迎しているのは、ナチスかもしれない。

 白人対有色人種の構図は、ナチスの理想に当てはまってもいた。



 そして、日本……いや、火星人は――







一応次回分の書き溜めありますので、来週も更新できるかと(まだ修正前)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゾンビ兵VS麻薬兵というZ級映画な状況に・・・ イギリス辺りは早速インドゾンビとかアフリカゾンビ作りそうだな
2021/11/02 20:21 退会済み
管理
[一言] 中国は相変わらずの地獄の底なし沼。 中国の富裕層さえ逃げ出す始末、大量破壊兵器を使ってもこの戦争は終わる所か、さらに悪化するかもしれませんね。 戦場は史実の硫黄島や沖縄の戦いのようにあちこ…
[一言] この時代の中国で有名な富裕層というと蒋介石の妻、宋三姉妹の一人宗美鈴が有名ですが宗美鈴がアメリカで対日有害ロビー活動したのが日米開戦の遠因ですよね。 日本が中国利権を狙ってアメリカを攻撃する…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ