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第三十三回  推論


私生活でドタバタすることが多く、更新がまた滞るかもしれません。

とりあえず、以前に書いておいたものを投稿です。






 唐突な事故で死んだ後、闇の中で誰かが言った。



 ――どちらに行きたい?



 一つは、剣と魔法の異なる世界。


 もう一つは、遠い過去の世界……ただし、生まれた祖国。

 祖国が日本に侵略され、苦難の歴史を歩む時代。


 ――どちらへ行っても、それなりの土産は与えてやろう。


 それならば。


 彼は異世界ではなく、過去の祖国を選んだ。


 二十一世紀、世界に輝く大国となっている祖国だが、自分の知識と力があれば。


 不幸を塗り替え、より輝かしいものに変えられるはず。

 いや、逆に日本を占領、支配するまでいけるはず。


 彼はそのように考えた。


 ――まあ、せいぜい後悔のないように。


 声はそのように言って、二度と聞こえなくなった。



 そして。



 生まれ変わった先は、間違いなく過去の祖国。

 新しい生家は、街でも名家とされる裕福な家庭だった。 


 恵まれた環境のおかげで、古い時代とは言え不便は少なく――

 まさに乳母日傘の育ち。


 家が商売柄アメリカ人とつながりのあったおかげで、さらに便利だった。


 二度目の人生ゆえのアドバンテージ。

 幼児期から神童と呼ばれ、英語にも堪能となっていく。


 コネから、アメリカへの留学も視野に入ってきた。 

 まさに我が世の春。


 が、そんな時。


 いきなり、日本に異星人が襲来した。

 ニュースを聞いた時、たちの悪い夢か冗談ではないかと思うが。


 火星人は日本を占領後、祖国にいた在留日本人を全て連れ帰り、朝鮮半島などを『解放』。


 最初は驚いたが、案外話の通じそうな相手だ。

 そのように考えてもいたけれど……。


 火星人は日本にとどまったまま、動こうとはしなかった。

 アジアの苦難には、まるで無関心なのである。


 これはおかしい。理性ある進歩した文明人ならば、徳のある我が国に味方するはずなのに。


 そうこうするうち、朝鮮はアメリカの支配下となり、祖国にも欧米の牙がむかれた。


「欧米諸国は、祖国よりも日本を討つべきである」


 そのようにコネを使って主張してみたが、


「何言ってんだ? 火星人を相手に戦争させる気か? アホか?」


 返事は好ましいものではなかった。

 生家は元からコネを使い、儲けを出して、金を積み上げてはいく。


 だが、恩恵から外れて搾取される同胞からは怨嗟の対象となった。


 やがて、満州を奪われ、大陸のあちこちに欧米の支配が広がっていく。

 日に日に、アジア人への蔑視は強くなり、搾取は露骨に。


 この現状にたまりかね、彼は生家を飛び出して、共産党に加わった。


 こうなった以上は、自分がやるしかない。


 決意のもと、瞬く間に戦果を挙げ、党でも認められる存在となった。

 前世知識と、与えられたギフトだろうか。

 一級の指揮官として台頭してしまったのである。


 しかし、それでもなお米軍の兵力は圧倒的だった。


 それ以外にもイギリスをはじめとする欧州の侵略。

 一気に負けることもないが、祖国の勝利は想像できないものだった。


 そも、祖国自体が一つにまとまっていないのである。


 不利な状況で取った手段は、敵を内部に誘い込んでのゲリラ戦。


 効果は確かにあったものの、それはより敵の攻撃を苛烈なものとした。

 史実のベトナム戦争など比較にならない惨劇の数々。


 この時代にあっては、ベトナム戦争時のような市民や学生の反戦運動は期待できない。

 むしろ、適切な害獣駆除とさえ認識しているかもしれなかった。


 白人たちの間では、『有色人種管理論』が常識となりつつある。


 火星人の影響で加速した技術は、どんどん戦火を広げるばかりだ。

 また同胞たちの間でさえ、賞金目当ての密告や裏切りが絶えない。


 民族は富裕層と貧困層で、完全に分断されている。


 共産国であるはずのソ連は、後方から援助こそすれど、援軍を送る様子はなかった。

 一方で、他のアジア諸国は半ば沈黙している。


 そのくせ、自分たちには冷たかった。


 これは日本を支配する火星人が、自分たちを排除しているためだ。

 難民船であっても、領海に入った途端吹き飛ばされる。


 アメリカでは、アウシュビッツのユダヤ人がごとき扱い。

 戦争以前から入国している者も同じだった。

 あくまで伝聞から聞いた話ではあるけど。 


 しかし、絶望的な戦況でも、彼は勝った。

 巧みに兵士を指揮し、鼓舞して、悪辣な米帝を討ち続ける。


 犠牲はあっても、決定的ではなかった。


 凡俗な農民たちを兵士に変えて、敵の隙を突いて攻撃し、逃げる時は逃げる。

 自然と、党内での名は上がり続けた。


 だが、しかし。


 どれだけ戦っても、終わりは見えない。

 他の軍閥や勢力と同盟を結んでも、抗いきれなかった。


 気づけば、国土は荒れて、死体ばかりが増える。

 時間を経るごとに、ゲリラ戦も効果が弱まり出す。


 もはや、敵は民間人もゲリラも軍人も区別しなくなってきたのだ。


「良い中国人は死んだ中国人だけ――」


「元々数が多すぎる」


「下手に働かせても、白人の仕事が減るだけだ」


 例外なのは、満洲の内部くらいだろう。

 そこでは、富裕層が白人のおこぼれに預かりながら、贅沢をしている。


 まさに、地獄のようだった。 


 戦っても戦っても、終わりは見えない。

 アメリカは、もはや後退のネジをはずしているのだった。


(核があれば……)


 何度もそう夢想するが、現状ではあくまで夢想にしかすぎなかった。


 そして。


 仮に核兵器が存在して、使用できるとして。

 彼は、自分たちにそれが向けられる可能性を、思考には入れていなかった。



 ――。



 ソ連某所。


「では、実験は成功なのだね?」


「はい、あくまで地下で爆発させただけですが……威力は間違いありません」


「仮に地上で使用した場合、一都市を一瞬で壊滅させるでしょう」


「まさしく、プロメテウスの火だな。まさに科学の火だ」


「これで対アメリカ、ヨーロッパへの目途がついた。諸君らの働きに感謝する」


「ありがとうございます」


「……これで、アメリカのみならず、火星人への対抗兵器も完成したわけだ」


「やはり、火星人とは対決せざるえないのですか……?」


「向こうが、こちらの理念を理解してくれなければ、残念なことになるだろうね」


「はっ……」


「安心したまえ。あくまでも、同じテーブルにつくためのものだ。こちらにも相応の力があることを示さねば、交渉にもならないからな。そのためにも……」


「はい。速やかに、長距離誘導弾にしてみせます!」


「頼んだよ、人類の未来はこれにかかっている」



 ――。



 アメリカ某所。


「フジニウム……?」


「仮に、そう名付けたそうです。ジャパンでもっとも高い山だとか」


「で、その山の名前を冠する物質が存在すると……?」


「火星人が日本に固執する理由……。様々な推理がなされていますが、日本でしか採取不可能な未知の資源が存在するのでは、と……」


「しかし、それならば日本の土地は必要でも、日本人は不要なはずではないかね?」


「おそらくは……ですが――」


「目くらましか」


「はい。そうまでして、我々地球人の目を誤魔化したいのではないでしょうか」


「と、なれば、それはもしや」


「はい。火星人に対抗できるものになるかもしれません」


「白人国家を排除したのは、それを知られることを恐れているから、では」


「……事実なら大発見だよ!!」


「しかしながら、問題は……」


「いかにして、その情報を得るか、だな」


「現在、あらゆる手段を使って、日本の情報を探っていますが、工作員の潜入はいまだ……」


「頭が痛いな……」


「ですが、まだ試験段階ながら、可能性はゼロでありません」


「何かあるのだね?」


「人工衛星です」


「衛星? それはまさか、月のようなものを人間の手で?」


「あそこまで巨大ではありませんが……。宇宙から地球を観察が可能です」


「なるほど。それで日本を監視するのだな」


「将来的には、それに誘導弾を装備することも可能かもしれません」


「わかった。速やかに完成を急いでくれ、予算の心配はいらない」



 ――。







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― 新着の感想 ―
[良い点] えー、そんな変に面白そうな前振りで放置されるなんてー!
[一言] 中国の転生者は順調に英雄化してますね・・・勝ち負けは兎も角。なまじ前世知識があるだけに勝ち馬に乗ろうとしたんだろうけど勝ち負け以前に生存闘争だな。 ソ連は原子の火を手に入れてアメリカは人工の…
2021/08/10 23:21 退会済み
管理
[一言] ソ連の連中、核兵器を開発して日本に存在する火星人を武力行使で交渉の窓口を強制的に切り開いてしまおうとか考えておりますが、どう考えても無謀すぎですな。 ソ連の連中、平等とか食料を民衆に分け与え…
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