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第二十七回  欲望


お待たせしました……。

今回またも火星人のせいで問題が――







 遊郭と言われる場所がある。色街とも言う。

 火星人統治でもっとも大きく変貌した場所である。


 当初、遊郭は火星人相手の商売を考えていたようだ。

 いわゆる外国人と同じように思っていたのであろう。


 しかし、火星人はそういう生き物ではなかった。


 さらに、いわゆるところの性産業は全て国家つまりは火星人の支配下に置かれる。

 端的に言えば、女郎と呼ばれる娼婦たちは全員公務員扱いになってしまった。


「嫌ならやめてもいいよ」


 そんなことをすれば、食べていけなくなる……ということもない。


 日本国民は全員一定の衣食住は保証されるようになったのだ。

 単純に生きるだけならば、わざわざ泥水を飲む必要はなくなったわけである。


 しかし、いきなり解放されたところで前途に困る者は多かった。

 日陰の仕事であっただけに、どうしても過去がついてまわる。


 一般の環境や仕事には馴染めず、結局水商売を選択する者もいた。

 また自由になっても家には戻れない者も。


 そういった女性たちは、新天地を求めて宇宙都市などに向かう者も大勢出てくる。

 ある意味で正解であったかもしれない。


 宇宙都市への移民は、地球よりも優遇されていたからだ。



 そして。



 新たな公娼の募集などは、なされなかった。

 当然数が足りないわけだが、不足分は専用の人造人間が補充される。


 というよりも。


「いちいち管理するなら、全部人造人間にしたほうが効率いいんだよなあ」


 なのであった。



「人間を管理する上で、重要なことは何か?」


 火星人の出した結論は、


「衣食住。そしてセックスを満足させること」


 これだった。


 かくして、日本中に人造人間が相手をする公娼施設が設けられた。

 あるいは、そういった専用設備を整えた円盤が配置されたわけである。


 基本的には、令和のソープランドみたいな形態だった。


 これらが日本中津々浦々まで完備されてしまった――


 専用円盤には、電話一本で送迎してくれる。

 特に人造人間相手の場合は安価、もしくは無料サービスで遊べた。


 そう。


「十八歳以上の男子ならば、毎月四回までは無料で遊べるようにした」


 のである。


 とんでもない大出血サービスのようだが、火星人からすれば労力は無きに等しい。

 通常料金も、普通の収入があれば毎日でも通えるようにされていた。


 ただし、宿泊利用はできない。

 飲食は持ち込みか、施設内で軽食などを購入できた。


 もちろん、これらは統治を円滑するばかりが目的ではない。

 遺伝子情報を広く収集することも同時に行われていた。

 つまり、人造人間に吐き出した『遺伝子』は、血液よろしく保管されるわけだ。


 この新体制は、国民に驚きと喜びを持って迎えられ、継続中。


 ただし。

 古くからの花柳界に馴染んでいた客層からは不満の声が出た。


「風情がない――」


 と。


 ただ花柳界は、売春なしの歌舞音曲の『芸』や『話術』が売りとなり、存続している。

 ノンアルコール飲料のようなものか、それとも。答えはまだない。


 経営者たちは店も権利も強制的に売却させられることに。

 相応の金は支払われたが、内心は忸怩じくじたるものがあったようである。

 それも当然だが。


 さらに。


 もう一つ、人間社会に悪とされながら必要とされるものがあった。


 賭博場である。


 令和どころか、どの時代でも依存症や中毒者を出しながら根絶されることはない。

 いわゆる反社会的勢力の資金源となったりする。


 これも、やはり火星人の管理下となるわけだが……。


 賭博行為は性産業以上に火星人の理解できないものだった。

 そして、セックス以上に扱いが面倒くさくて厄介だと判断。


 全面禁止しても、やろうとするものが出てくる。

 どれだけ取り締まっても、まったく切りがないのだ。


 それこそ、完全な監視社会にでもしなければゼロにはできない。

 小銭を賭けて将棋でひと勝負……そういうことはどこにでもある。


「遺憾ながら多少の目こぼしは必要らしい」


 ある意味で、地球人に火星人が敗北したとも言えるか。


 かくして。


「どうせやるのなら、派手にやってしまいましょう」


 そういう人造人間の提言もあり、賭博場円盤も登場することとなったのである。

 当然未成年の立ち入りは厳重に止められていた。


 サイコロからカード、麻雀やルーレットなど多種多様なゲームが楽しめる施設。


 ただし制限もある。

 まずは入場制限で毎月入場できる日数が決まっていた。


 さらに投入する金も、限度額があるのだ。

 高額を賭けられるものもあったが、それに参加するには許可証が必要となる。


 審査を受けて通った者だけが参加できる、いわばVIP用。

 そこでは少人数の高額所得者が社交を兼ねて遊んでいるのだった。


 ただ。


 いわゆる富裕層もかなり変動が見られる。

 既得権益を失って没落した名家の話など珍しいものではない。 

 最近では火星人統治下で成功してのし上がった財界人などが目立った。


 彼らは、『火星成金』などと呼ばれている。

 といっても、儲ければ相応の税がついてくるわけなのだが。



 さて。


 アジア主義者の暴発した事件などに隠れがちながら。

 社会に問題が起きていないわけではない。


 その一つが、『悪書追放運動』なるものだった。


 史実においても、昭和三十年において漫画などへのバッシングが起こっているが。


 世には児童向けの娯楽・学習漫画の勃興がきっかけとなって、漫画ブームが起こった。

 学習漫画は大人にも波及していき、戦国や幕末を舞台にした歴史ものも人気となる。


 その派生として、映画を漫画へと落とし込んだ娯楽作品も登場。

 ベースは令和の未来知識を参考としており、青年層に受けたのが劇画。


 この劇画は人間ドラマを描き、様々なジャンルに及んだ。

 劇画は当初から完全な分業スタイルに近く、その製作過程は映画に近い。


 実際、映画畑の人間もこれに多く関わっていた。

 映画業界も火星人のもたらした技術が用いられ、盛り上がっていたが――

 製作には時間もかかれば、金もかかる。上映する場所も必要だ。


 テレビジョンが導入されると同時に、放送用の映画も作成されていったけれど。

 製作に時間とコストがかかるのは同じこと。


 その中で、自分の撮りたい・描きたい作品を作るのはなかなか難しいわけで。

 当然冷や飯を食う者も出てくる。


 アイデアや才能があっても機会に恵まれない人間も。

 そういった人間が創作のぶつけどころとして、劇画に引き込まれた。


 劇画も本であるから、ページ数の制限はある。

 しかし、乱暴に言えば絵なわけだから、セットも衣装も役者もカメラも要らない。

 かなり自由に表現ができる強みがあった。


 さらに漫画は手軽に読めて、自由に読める。

 最初はゆっくりだが、時間がたつごとに社会に浸透していった。


 他にも、小説を劇画化したものも普通に登場してくる。

 日本の古典から新作と原作となるものはたくさんあった。


 また外国の文学作品など、読みにくかったり、わかりにくいものを漫画化することで理解を平易にしてとっつきやすくしたものも売れた。


 色んなジャンルが種類豊富にあるということ。


 そうすると当然のように、人間の本能としてポルノ作品も出てくる。

 売春が火星人の完全管理に置かれ、文字通り万人に解放されても。


 そこはそこ。というわけで。


 ポルノ劇画は安定した人気となっていた。

 しかし、こういったものに拒否反応を示す人間が一定数いるわけである。


 火星人には何度も、


「悪書を規制するように」


 という意見書が突きつけられていた。


 それらは全て無視されていたが、それでもおさまらなかったのか――


 民間の婦人会などが自ら行動を起こした。


「青少年の健全な育成のため」


 と称して、自主的? な取り締まりを開始したのである。

 街の書店に悪書を置くなとねじ込み、出版社には抗議文を送り込んだ。


 しかしながら。


 実際問題、そういったものを未成年が入手したりするルートはどうだったか。


 読み捨てられた雑誌などが拾われる。


 これもないではないが、大抵掃除用ドローンにすぐ処分されるのでほぼない。

 多くは親兄弟の買ってきたものを盗み読むというパターン。


 そうなると、社会というか家庭内の問題であろうか。

 火星人としては、嘘や誇張が多くあり、現実とは違うとしっかり教育させている。


 なので、別に問題はなかろうという認識だった。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。博打の下りが特に面白いと感じました。 [気になる点] 競馬はどうなったのでしょう。個人的に馬が好きなので。出来ればスポーツの一種として残ってほしいです。 [一言] 性産業の…
[良い点] 毎回面白いので楽しみです。
[一言] 婦人団体ですかぁ… 昔から思っていたのですが、青少年には悪影響と喚き立てる癖に、不倫系や普通なら頭おかしいけどイケメンだからセーフ系のドラマに関しては何も言わないどころか、言おうとする気配…
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