夏祭り
焼きそば、たこ焼き、いか焼き、とうもろこし。
わたがし、サイダー、かき氷、りんご飴。
射的、お面屋、くじ引き、金魚すくい。
屋台の立ち並ぶ知っているはずの道のり。年に一度の非日常。にぎやかな喧騒が夜を埋めつくし、雑踏の波が町を流れる。
ひゅゅゅゅうぅ。
彼方から聴こえるその音に人々は足を止めて同じ方角を仰ぎみる。
夜空に輝く閃光、一瞬の煌めき。一拍遅れで届く音の振動に群衆の鼓動が呼応する。
あれが破壊の芸術。数秒に凝縮された匠の美学。夏祭りを彩るクライマックス。
すべてが散ると日常へと帰る。まるで何事もなかったのかのように。
あの一夜もいまや幻想の一幕。