午前10時46分13秒
体中が痛い…。
体の至る所が、脈打つ度に血を吹き出す。
俺を完全に殺したと判断し、部屋の中を漁る40代前半の男。血のついた軍手を僕に投げ捨てて、今は新しい軍手を付け、棚という棚を開けていく。
声が出ない。息も苦しい。助けを呼ばないと…。
必死に脳に命令するも、体は全く反応しようとしない。それどころか、段々と体が冷たくなっていく。
あぁ…死ぬのか、こんなところで。
俺は親友のかずまが遊びに来るって言うから、ずっと待ってて、来たと思ったら泥棒だった。
ドアを開けた瞬間、腹を包丁のようなもので刺され、後ろに倒れた。
追い打ちをかけるように、喉に一刺し。
胸にも深く突き刺してきた。
なんでこんなことになるんだ…。
来月のサッカーの全国大会に向けて、必死に努力してきたのに…。
なんだか、眠くなってきた…。
もしかしたら、夢かもな…。
起きたら、もうかずまが来てるかも…。
少しだけ…また寝るか…。
「すいませーん、宅配便のお届けにあがりましたー」
玄関を指でコンコンとノックする音が、段々と大きくなっていくのに気づき、目が覚めた。
自宅の電子時計は、午前10時45分。
「…やべっ、寝てたのか」
自分が横になっていたソファのシーツはシワだらけになっていた。
「すいませーん」
まだ戸をノックしている。
「はーい、今でまーす」
玄関へ裸足で向かう。廊下の扉を開けると、生暖かい空気が全身を包んだ。
最近、少し暑くなってきたので、さっきまでエアコンをつけていたリビングが余計に涼しく感じた。
声がなんとなくかずまに似ているから、もしかしていたずらか?めんどくせーやつだなー。
鍵を開け、ドアノブを回し、ドアを開けた。
そこに立っていたのは、夢の中にいた男だった。