第8話 どうもこんにちは君は行商人です
おはようございます。
今日は映画「シン・ゴジラ」の公開日ですね。
僕は家でシンゴジ鑑賞でもしようと思っております。
皆様は何をしてお過ごしになられるのでしょうか?
何はともあれ、楽しい一日を過ごしてくださいませ。
「ここは?」
ガバッ!と勢いよく体を起こして俺が発した言葉である。
見知らぬ天井(本当)が最初に見えた時は焦った。
いや、今も訳分からんくて焦ってるんだけどね?
どうすべかととりあえずベッドから降りようとしたとき、ちょうど部屋の扉が開いた。
「お!起きましたか!お茶、ここ置いておきますね」
そこから出てきたのは、さっき出会ったあの行商人青年。
相も変わらず不甲斐ない顔立ちだが、お茶を運んできてくれたようだ。
ってか、この世界にもあるんだねお茶。
「ありがとう...
ここは?」
何となくタメ口になってしまったけど、寝起きだから勘弁して欲しい。
「ここですか?ここは僕の家ですよ」
あれ?俺たしか馬を追いかけて走ってたような...。
また暴走を始めた馬と追いかけっこをしていたような...。
「なんでここに...?」
「あぁ、説明しますね。あの後、馬を追いかけていたんですが...。
たまたま、その本当にたまたま、急に反転した馬に貴女がぶつかって気絶してしまったんです。そのベッド、長らく使ってなかったんですが...その、寝心地とか、悪くなかったですか?」
「寝心地?」
俺はいままで寝ていたベッドに手をかざし、ゆっくりと動かす。
手にふわふわとした気持ちいい感触が当たってくる。
「全然良かったですよ!むしろこのベッドで毎晩を過ごせたらどれほどいいことか...」
「あの、宿屋って決まってないんですよね?」
「はい...。恥ずかしながら、無一文でもありまして...」
「!」
青年が、『無一文』という言葉に反応したかのように体をピクっと動かした。
なんだろう?やっぱり商人だからお金に反応するのか?
「無一文なんですか?」
「ええ、まあ...」
やっぱり無一文に反応してきた。
もしや、『無一文はでてけー!』とか言われてベッド貸した代金とか請求されて.........
あわわ...
そうなったら最悪パターンだ。
それだけは避けたい...けど...
「すいません!無一文なのでベッドをお借りした分の代金を支払えないんです......ごめんなさい...」
「あ、いや、そんなことは全然いいんですよ。それより、うちで働きませんか?」
「え?」
え?
心の中と声で、2回驚いてしまった。
うちで、働きませんか...だって?
「えっとですね、ご存知だと思いますが、僕は行商人です。
することは、商品を買ってくれそうな人達のいる街や都市に出向いて、直接その街の人達に商品を売っていく、というものです。ざっくりですが」
ふんふん。
俺が読んでる異世界系ラノベとほぼ同義か、それ以上な感じだ。
いいじゃんラノベ。勉強になったぜ。
だが、そんなことは...
「いいんですか?」
心で思ったことを、さくっとに聞いてみる。
「もちろんです!あなたがそれでも良ければ、ですが...」
「それはいいんですけど、俺、程よくなったら、経済的に潤ったら出ていくかもしれませんよ?」
「構いません!今まで、自分一人で受け持ってきたんです。確かに二人になれば効率は上がりますが、それでも一人で頑張ってきたんですから、二人から一人に戻ってもまだ頑張れるはずです.........って、いま『俺』っておっしゃいました?」
「い、言いましたけど...何か?」
「あなた、女性ですよね...?」
「え?」
「え?」
「えっ?」
.........
えぇぇぇぇええぇぇぇぇえ!!!???
──すぅ、はぁ。
はい。落ち着きましょう。
分かってましたもん。俺女になるフラグ立ってましたもん。
やっぱり直接言われると少し驚くけど、あらかじめ用意しておいた驚いた時のセリフも言えたし(脳内で)、別にいいんじゃない?
ま、女になってもそこまで不便しないと思うし。
「えっと、俺の容姿ってどんな感じなんです?」
「は...はい、うーんと、一言で言うと.........『超絶美少女』......ですかね?」
「は?」
いま、なんと?
超絶...え、なに?どうおっしゃいました?
いまの言葉が信じられなくて、俺は近くにあった鏡で自分の姿を見てみる。
そこにあったのは、スラリと細く美しく伸びる体躯と、綺麗に澄んだ黄金の双眸、そして艶やかに、しなやかに伸びる碧の髪の毛、そして驚くほど整った顔立ち...。
なんだこれ。
一言で言うと、2次元。
これは3次元の産物ではない。
「あのさ、ここって2次元だよね?」
動揺のあまり突然タメ口になってしまった。
でも多分この人なら無視して会話してくれるはず。
「ニジゲンがなんだか分かりませんけど、多分違いますよ」
「え?これ3次元なの?」
「...?恐らく」
「はぁ.......................」
「そんなため息つかなくても...。多分、その容姿を見ただけで醜い男どもが虜になりますね」
醜い男とか言うなよ...。
俺も一応「元」男なんだぞ?
お前も男なんだし...ん?
「醜い男共...って、おま...君は、その、大丈夫なの?」
「僕ですか?僕は妻がいるので」
「その妻はなんでここにいないの?」
「...あまり言いたくないですね」
「そっか......」
なんだろう?
もしかして死んでしまった...とか?
いやいや、流石にそれはないでしょ。
...でも、意外とありそうだし、本人も言いたくないって言ってるし...。
詮索するのはやめておこう。
うむ。
俺の見た目にも慣れたし、いっちょ朝ごはんでも食べますかね。
「朝ごはんって......ある?」
女子っぽい口調を意識しながら、タメ口で聞く。
「用意してあります。今日からあなたはうちの従業員ですからね!」
別にOK出してない気がするけど...
ま、いっか。
元々働く気だったし、多分色んなところ出向いたら国を救うチャンスになるかもしれないし。
あと、3食食えるならそれでいい。
ってことで、俺(私)の、ゼロから始める行商人(助手)生活が始まった。