第7話 転移直後の陰キャにこれは...
6話の更新で、一気にアクセスが伸びました。
ちら、と解析を見てみましたらいきなり数が増えていて、「何があったんだ一体!?」と驚いてしまいました。
ブクマも増え、大変潤っております。
今後とも、よろしくお願いします。
ん......。
瞼に受ける光の量が変わったのを感じる。
増えた減ったと言うより、光の種類が変わった、と言った方が近いだろうか。
先程まではLEDで照らされたような、真っ白な光が瞼を透かしていたのだが、今は白ではなくオレンジ、と言った感じの色合いになっている。
これは何よりも、世界が変わったことを示しているはずだろう。
光が空間から放たれるものではなく、太陽から放たれるものになったのだ。
それはつまり、俺が転移したことを示しているに他ならない。
ワクワクとドキドキの期待を込めて、ゆっくりと、しっかりと瞼を上げていく。
うっすらとした、緑と白がぼんやり見える世界から、ゆっくりとそれは広がり、鮮明になっていく。
くっきりとした色鮮やかな世界で、俺が思ったことは────
「どこの田舎だよ、これ」
──という、どこか抜けたような言葉であった。
ラノベ主人公とかなら、もっとまともなことを言えるのかもしれないが......。
俺はその辺の道端に転がっているようなありふれた人間だから、そんなことなぞ言えるわけあるか。
なので、俺の感想に期待した君は間違いなく馬鹿だ。
って、だれに言ってるかわからんけども。
まあ、そんじょそこらのみんななら多分俺と同じことを言うはずだ。
自分が佇んでいる、砂利の畦道。
そして、その左右に広がる広大な畑。
これを田舎と呼ばずしてなんと呼ぶのか。
まあ、それはいいのだ。
俺は、何となく畦道の向こうに目を向けてみる。
「あれは......街、だよな」
うっすらと、人工的な建造物が目視できた。
うーん。
どうすべきだろうか?
行くか...、逆に進むか、それとも...。
いや、違うな。
やるべきことは決まっている。
街に向かうのだ。
このままココに突っ立っていても何も始まらないし、まして国を救うなんて到底無理だろう。
人との交流もまだだし、幸いにも一本道が続いている。
これは恐らく、あのチャラ創造神の思惑じゃなかろうか。
『まずはあの街にいけ』、と言う命令では無いだろうか。
俺はそう考えて、歩行を開始した。
いや別に、チャラ神の意向に従おうとか、別にそういうことじゃないよ?
ただ他に選択肢がないだけだからね?
──だが、その直後後ろから、微かになにかが聞こえてきた。
「......?」
振り向いて、確認できるか見てみる。
そこには、前方と同じように真っ直ぐに続く1本の畦道。
だが、違うのは街の代わりにものすごい勢いで迫ってきている馬車─────って、えぇ!?
「ちょ、ちょ、それはないって!」
俺はとりあえず、前方に向き直して逃げようとして───、出来なかった。
馬車に、人が乗っていることに気がついたのだ。
「#&@/”/¥@”…¥~~~!!!」
ちょっと、何言ってるかはわからない。
これが異世界言語って、やつだろうか?
ならば何とかAIやらが翻訳してくれるはずなんだが.........
《自立自動翻訳起動》
ん?
今なんかもんのすごく漢字ばっかな発言が聞こえなかった?
なるほどこれがAIね。
いや声が機械的すぎてやばい。
これで本当に翻訳できるのか?
そこが疑問だが...。
どう考えても初音〇クちゃんとかGU〇Iちゃんとかしか脳内に浮かんでこない...。
《翻訳設定をライム語から日本語に変更します》
うん?
ライム語?
それってこの国の言語だろうか?
それにしてもライムて...
どこぞの柑橘類しか出てこんぞ。
《世界言語取得中.........》
ちょ、そろそろ早くして。
もう、あと30秒もしたら俺馬に轢かれて死ぬから......
って、30秒なら案外時間ない?
《世界言語取得中.........》
わっ!あと20秒切ったよ!
もう翻訳いいや!
どうせ、あいつ多分『助けて』とか『止めて』とか言ってるんだろうから...
こうなりゃ、どうにかするしかあるまい。
......だが、どうやって?
俺は周りを見渡す。
馬には人参と言うが......
ん?あの畑、人参っぽいの育ててるな......
「...よし、行くぞ!」
俺は、行動を開始する。
まず、俺は全力で道を駆け下り人参畑へ。
そしてその勢いのまま数本をむしり取り、さっき居た畦道に全力で戻る......っ!!
「ハァ、ハァ、ハァ......」
まともに運動をしたことのない陰キャにいきなり何やらせんだよ...
っと、思考している暇はない!
既にもう馬は俺目掛け進んできている。
ここで、俺は両手で掴んでいた人参を前方に勢いよくスローイン!
綺麗な放物線を描きながら、無数の人参が宙を舞う。
そして、肝心の馬はと言うと......
人参、ガッツリ好物だったみたい。
空を舞っている人参全てを目にも止まらぬ速さで口にくわえ、勢いよく俺の目の前で静止したのだった。
ったく、驚かせやがって......
「おい、そこの人。大丈夫だったか?」
俺は、翻訳が完了していないことも忘れて話しかける。
とりあえず安否確認は大事だからな。
すると、行商人のような格好をした好青年は俺を見て────
「ありがとう、死ぬかと思いました」
そう言って、俺に手を差し出してきた。
「どういたしまして」と俺が言って差し出してきた手を握り返したのと、
《世界言語翻訳完了しました》
という遅すぎる位の連絡が俺の耳に届いたのは、ほぼ同時だった。