第2話 落ちてきたのは隕石でした
題名、「神剣使いの行商人(仮題)」となっております。
正式な題名を募集しております。
まだ始めの部分なのでなんとも言えませんが、今後の展開につれて題名を考えていただけたら、と思っております。
是非ともよろしくお願いします。
おんぶにだっこでやらせて下さいませ。
「おう、大声出してどうしたんだよ」
そう答えるのは、聞こえないはずの直樹の声。
家の目の前に立って、隕石に押しつぶされたのであろう親友のことを思うと......涙が出てくる。
「あのさぁ」
また幻聴が聞こえた。
とうとう俺の耳は可笑しくなってしまったらしい。
直樹はもう死んでいるのだ。
この世に、直樹は......もう。
そんな彼の声が聞こえるなど、有り得るはずがない。
俺は、直樹の霊に囚われているとでも言うのか?
「...聞いてる?俺の話」
「さっきからなんだよ......せっかく直樹の死を悼んでたってのによ......!」
振り向くと、そこには直樹の姿があった。
「勝手に殺してんじゃねぇよ!俺はここに生きてるっての!」
「......え?」
「え?」
「え?」
.........え?
俺は余りのことに信じられず、直樹の体をぺたぺたと触り回す。
頬から髪の毛の1本に至るまで、虱潰しに、だ。あ、ちゃんと男の象徴部分とかは触ってないよ。
ちゃんと触れる。
妹にも見えているみたいだし、俺にだけ見える幽霊とか、そういうものではないようだ。
顔も、声も、頭を掻く時の癖も、間違いなく直樹だ。
フラグ回収してたからてっきりあの隕石に呑み込まれたのかと思ってたけど......いらぬ心配だったな。
「──おう、おかえり」
「急に態度変えんな、無断脳内殺人犯」
「悪かったよ...!お前ん家がここまで崩壊してたらお前も死んだって思うだろ!?」
「いや思わねえよ普通。あー、あいつだけでも生きててくれればいいけどな......ってみんな思うから」
「へーそうなんだへー」
「お前聞いてないだろ絶対」
そんな他愛もないやりとりを続ける。
話も落ち着いてきたところで、妹が俺に話しかけてくる。
「今、おかーさんから電話来た。これから帰るって」
「おうけい。じゃ、ちょっと隕石触ってから帰るか」
「もうさすがに冷めてるだろうから、触っても大丈夫だと思うけど......あれだぞ?地球外生命体とかいるかもしれないから、気をつけろよ?」
急に非現実的な発言やめろよ。
地球外生命体なんて、いる訳ないし。
幽霊とかも信じてないし。
ほ、ほんとだぞ?
信じてなんかないぞ?
「はいはい、いねーよ地球外生命体なんて」
心の軽度の動揺を悟らせないように、なるべく冷めた口調で答える。
「お兄ちゃん、案外いるかもしれないからガチめで気をつけてね」
「お前は触りには行かないのな!」
妹は首をわざとらしく縦に振って「もちのろん」と2重肯定。
お前が行きたいって言ったからきたのによお...
そこまでかよ...
なんか、俺が死ぬフラグ立ってないか?
よーし、絶対戻ってくるからな、覚悟してろよお前ら(フラグ)。
フラグは回収しないと言っておきながらしっかりと新たなフラグを立てて謎の雰囲気に包まれながら隕石に近付いていく。
うん。
結構でかい。
煙もくもくでてる。
こう見ると壮観だなー·········
ま、怖気付いてても仕方ない。
行くっきゃないか。
覚悟を決めて、俺は隕石の所にダッシュ。
ここは、元直樹の家。
綺麗に潰れていて特に目立ったものは無いが、所々に家の家具とかが壊れて散乱している。
お、このパソコンまだ使えるじゃん。直樹にあげよ。
そうこうしているうちに、俺は隕石の目の前に。
無意識のうちに、俺の右手が隕石に吸い込まれるように上がっていく。
真っ直ぐに伸びた俺の腕は、生きているとは思えない機械的な動きで隕石に近付く。
俺の右手が隕石に向かってしっかりと伸ばされると、左手も同様に伸ばされていく。
両方の腕がしっかりと前──隕石の方向に伸ばされる。
『あぁ、我が真祖なる神よ』
──声が聞こえる。
俺はその声に、ゆっくりと耳を傾ける。
その声は、初めて聞く、性別の判別のできない声だったと思う。
しかし、何故だろうか。
その声は、どこかで聞いたことのあるような体に溶け込む落ち着いたものだった。
『我らが神より問う。神は神聖にして侵すべからず、頂上にして抗うべからず。これ人もまた同じにして、同義なり。はて、其方は何の為に。何を故にここに至るか』
その声は、俺に優しく問いかけてくる。
聞こえるセリフは厨二病めいた堅苦しい質問だが、それを伝えてくる声色は優しく、包み込んでくるような穏やかな声だ。
『我、神の力を借り其方に問う。その力、何の為に。何が故に、その力を行使するものか』
言ってることは朧気にしかわからないけど、要するに
「おまえは、なんでここに来た。その力はなんのために使う?」
ってことだと思う。
俺に力なんてあるだろうか。
いや、ない。
だが......
俺は、聞こえてくる声に耳を傾ける。
『──其方、何者にして何を信ず』
俺は──────
俺は、篠山葉月だ。
紗苗の兄で、直樹の友達。
俺は、自分を信じる。
自分と、俺を信じてくれている周りの人達を。
だから、俺は怖くない。
いや、怖いという感情は確かに俺の中にある。
でも、それでもみんなに信じてもらえる。
だから、いくら怖かろうと、それが強大だろうと、俺は前に進むことが出来る。
信じるって、そういうものだと思うから。
『其方、器に相応しき屍なり。今生で憶えしもの、忘れることなき器となりし誓を立てよ。さすれば、我らが神が其方に祝福を────』
ん?
ちょいまち。
いま、屍って仰りました?
屍ってことは、俺死んでんの?
ちょいまちちょいまち。
だって、俺のまわりには瓦礫が散乱してて、俺の真ん前にはドデカイ隕石がある。
後ろには妹と直樹が見えるし、鼓動の音だって微かに耳に届く。
俺が、死んでいる?
冗談も程々にしてほしい。
馬鹿な事言ってないで、早く家に帰らなきゃ。
早、く............
「ッ!お兄ちゃん!!!」
...あ、ぁ。
妹の、こえ...が───。
──────────。
「──やっぱり、選ばれたか。
流石は、神の寵愛に溺れる男」