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ハカセのゲーム

「助手君の言うのも正しい。まぁ倉庫を出てから説明しよう」


「はい、ハカセ」


倉庫は薄暗いから廊下に出ると明るさに目が眩んだ。


慣れるまで瞬きをしているとハカセには怪訝な顔で見られた。


「説明というほどではない。簡単な話だ。エッペンドルフ社のサンプルチューブを略して、エッペンチューブだ」


「何でも略したらいいというものでは無いですよ、ハカセ」


「略したのは私ではないぞ。私の師匠の師匠のそれまた師匠くらいから使われている、らしい。諸説あるが」


「ならサンプルチューブでいいんじゃないですか?」


「むかしむかしはエッペンドルフ社しか無かったからだ。とにかくエッペンチューブと言えば通じるから仕方ないだろう」


エッペンというのは、蓋と本体一体型だと思っていたが、まさか会社名だったとは予想外だった。


「あとピペットマンというのも同様だな」


「うん?うちにあるのはフィンピペットとニチペットですよ」


「ギルソン社のピペットマンだ。フィンピペットはサーモフィッシャー社だ。ニチペットはニチリョー社だ」


「どうして他の会社のも統一した名前になってるんですか?」


「君は荷物を送ることを何という?」


「宅急便です」


「だがそれはヤマト運輸の商標登録だ。他は宅配便という。だが全国的には宅急便で通じてしまう。そういう感じだ」


ハカセの説明は分かるような分からないような説明で、とにかく通称名というのがあるというのは何となく分かった。


研究というのは奥が深い。


「はい、ハカセ」


「何だ?助手君」


「さっき倉庫を整理したらこんなものが出てきました」


「うん、私の五代前の先輩がゼミ旅行で持って行ったものだな」


「へぇー」


「夜通しやって魘されるものが多く出たから禁止された」


「へぇー」


ホラーゲームの定番である『バイオハザード』だ。


映画を見たこともあるし、原作も読んだことがある。


でもゲームはしたことがない。


禁止と言われるとしたくなるのが人というものだ。


「ハカセ」


「どうした?」


「これやってみたいです」


「確かテレビ台のしたにゲーム機があったはずだ」


「どうして研究室にゲーム機があるんですか?」


「DVDプレーヤーが壊れたときに仕方なく代用したまま困らないからそのままだ」


ゲーム機って無駄に高機能だったりするからな。


今はブルーレイが見れたりする。


しかも立体機能がついてたりする。


立体とか専用の眼鏡が必要だったのに今やスイッチひとつでできてしまう。


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