医局カースト
整形外科:「田原さん、神様だれかコンサル出来る?」
田原:「えーと、貴島先生以外はいらっしゃいますけど」
整形外科:「吉良先生か杉尾先生にお願いしたいんだけど」
田原:「杉尾先生に声かけてみますね」
「杉尾先生、今お時間大丈夫ですか?整形からコンサルなんですけど」
杉尾:「んー、はい行きますね」
整形外科:「あっ、先生すいません。症例は40代女性の鍵内さん。両下肢の痺れで受診した患者なんですけど、整形的にはX線で腰は大丈夫だし、糖尿もないですし、よく解らないんですよ」
杉尾:「んー、んー解りました。後はこちらで拝見しますね。」
「んー、はじめまして鍵内さん、診察させてもらいますね」
「この針でチクチクしていきますので、感覚がおかしい所を教えて下さい」
鍵内:「あっ、両足の先だけが痺れてると思ってたんですけど、針でチクチクされるとお臍よりちょっと上ぐらいから、感覚が鈍いです。」「あっ、その辺からです。」
整形外科:「まさか」
杉尾:「んー、んーそうですね。これは脊髄障害ですね。骨に異常はないようですが。おそらく多発性硬化症や視神経脊髄炎なんでしょう。ウチで精査しますね。」
整形外科:「いやーすいません。お願いします。」
田原:「杉尾先生!針一本で診断しちゃいましたね!!!なんか感動しました!」
杉尾:「んー、しっかり診察しないと、難しい症例は診断つけづらいよね。最近は検査優先で診察がおろそかになることが多いけどね。」
田原:「すごいです!なんでこんな診察が出来るんですか?」
杉尾:「なんで?んー、んー、、、なんでって、それは神経内科医だからね笑」
私の職場であるA病院神経内科には4人の医師が所属しており、
部長の吉良先生、副部長の貴島先生、杉尾先生、高木先生がいらっしゃいます。
部長の吉良先生は小柄な白髪のお爺ちゃん先生、診療能力は高いけどお年なので体力に難があり、長時間労働はちょっと遠慮がち。副部長の貴島先生はイケメンちょい悪親父。仕事に興味がなく如何にして仕事をしないかを常に研究されている。杉尾先生は外科でいう所のゴッドハンド、このドクターに診断できないものはない、と言える程の輝きを放つ、中肉中背で若干の人見知り。高木先生は仕事をしない事にかけては貴島先生と互角以上で競える実力を持ち、診療能力に関しては病院内で一、二の低さを競える、類まれなる小太り医師。
スクールカーストという言葉がありますが、臨床の現場では医局カーストが存在します。偉い偉くないという言い方は違いますが、力関係の強弱があります。
まず神経を扱う科は、脳外科、整形外科、神経内科があります。神経系で困った事があれば、まずは神経内科から受診しましょう。三科の中で神経内科医の診断スキルは群を抜いています。しかしながら、手術は行いませんので、手術が必要な場合は神経内科から脳外科や整形外科に紹介となります。実際に神経系で診断がつかない症例に関して、脳外科や整形外科から神経内科にコンサルトが入るのは日常です。では医局カースト的にはどうなっているかというと、神経内科はこの三科の間ではぞんざいに扱われる事が多いです。これは最終的に手術を依頼する立場という所が大きいのかもしれませんし、貴島先生や高木先生のように如何に仕事をしないかを研究されている先生方がいらっしゃるからなのかもしれません。実際、吉良先生や杉尾先生に対しては各科が敬意をもって接しているのが解ります。
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