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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
1章 墜落少年
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1-7 馬車での遠出

ケツがまだヒリヒリするような気がする。(ツバメ・クイート)

俺たちが村を出て1時間ほどたった。

あの村はなぜ森の中に築かれているかは不明だが森自体はかなり深いと聞いていた、しかし割と森の外側に近いところにあったらしい、30分ほどで森をぬけ、現在だだっ広い草原を走っている。

遮るもののほとんどない草原だが目的となる街は見えない。

サクラの説明だと昼前には着くらしいが、特に何もない道をずっと走り続けるのはとても暇だ。というわけで昨日から気になっていることをサクラに質問することにした。

まずはみんな大好き“勇者”から。


「サクラ、昨日名剣の説明してもらった時にちらっと出て来た勇者だけど、2代目とか3代目とか世襲制なの?」

「いいえ、勇者様に血のつながりはありませんよ?ただ『王』から100年間に1度『Brave』のギフトを授かった人だけがそう名乗るだけです」


そう言えば昨日強いギフトは独占されてるって言ってたような。勇者もそんな感じか?


「ほうほう、じゃあ今の勇者は何代目?」

「今代の勇者様は8代目ですが先代の勇者様も生きていらっしゃいますよ」

「えっ!百年に一度なんだろ、じゃあ先代の勇者って今いくつなんだ!?」

「100年間の間に一人選ばれるだけで、別に百年区切りにだれか選ばれるわけじゃないですよ、これは今までもあったことで同じ時代に勇者が二人いることは別に珍しい事じゃないんですよ?」


なるほどね、『100年に一人』だと思っていたがサクラは『100年間に1度』と言ってた、100年間の最後の30年に勇者が現れて、次の100年間の前半30年くらいに次の勇者が現れれば先代の勇者の年齢にもよるけど全然ありえないわけじゃないってことか。納得。


「まあ7代目は120歳を超えるらしいですが」


前言撤回、やっぱ勇者ってスゲーわ



「あっアキラさん見てください!、シカの赤ちゃんです!かわいいですねー!」

「そう言ってるサクラの方が可愛いよ」

「お兄ちゃん前見て」

「はい」


サクラの声に反応したツバメが怒られた

御者台に乗ってるのに後ろを振り返るなよ、周り何もないけど。

サクラの指さした方の窓を見ると元気に走り回る小鹿の姿が7~8匹、色は灰色なところが異世界らしい。


「おー!確かにかわいらし……」

「どうしました?」


俺が言葉を切ったのは衝撃的なものを見たからだ。

簡単に言うとバカでかいシカ、遠いから分からないが昨日見たイノシシ並みかそれ以上。

そんなにでかいシカがいるのに気づかなかった理由は大きすぎてでかい岩と間違えたから。

ていうかあのシカ角が無いんだけどあれで雌なの?いや小鹿に雌がつくの当たり前だろうけど。

しかし俺は学習している、困った時はサクラに聞こう!


「サクラあのシカ何?」

「えっと……何と言われましても、シカです。正確にはイワシカです。お肉はおいしいです」


OK分かった

サクラが戸惑ってるとこ見ると多分こちらでは珍しくないのだろう、5mを超えるシカが。

しかし昨日のイノシシと言いこのシカと言い何でこんなにでかいのかね?


「サクラ、この世界の生き物ってどれもこれも何でこんなでかいの?」

「ええ、あ!そういえばアキラさんの世界の動物はもっと小さいんでしたね!はい、そうです!基本的にはどの生物も最終的にはあのくらいのサイズに成長します」

「でも昨日のイノシシには驚いてたよね」


驚いてたのはツバメだっけ?何でかよく思い出せない


「ええ、あのサイズになるとなかなか捕まらないので、多分一人で打ち取るとなるとうちの村一帯ではお父さんくらいしか倒せないんじゃないですかね?」

「俺も!俺も!できるってサクラ!」

「お兄ちゃんのたわ言は聞き流してください。一回仕留めて帰ってきたけどボロボロで1月も畑に行けなかったんですから」

「いや俺からすれば十分スゲーよ?」

「アキラさんは優しいですね。でもつけあがるんで言わないでください」

「サクラーーーーー!」


可哀そうな奴、まあこういう展開になりそうな予感はしたけど。

そんなことを言っていたら小鹿は見えなくなってしまった、あっ親シカは余裕で見えます

しかしあのサイズがごろごろいるのか………朝のハルマを見ても思ったがやっぱり異次元だな。

ン?そういえば


「村の門がでかいのはそのせい?」


正確には門だけじゃなく周りの塀もだけど。


「はいそうですよ。時々普通のサイズより逸脱して大きな“巨大型”と呼ばれるものが現れるのであのサイズなんです。」


あのサイズから逆算してもっとでかいの?………考えたくないな。なんなら出合いたくもない。

それにしてもあれだけでかいサイズの生物がいるなら竜とかいないかな?

サクラに聞いてみたところ……


「いますよ。」

「やった!なあなあやっぱり竜なんだから人か拭くのかな?サイズは100mは超えたりする?竜を倒したらドラゴンスレイヤーとかになっちゃうのかな?」

「ええと、いきなりどうしましたアキラさん?」


どうもこうもない!くそう!昨日ハルマにでも聞いとけばよかった。超能力のせいで失念してたよ、そうだよここは異世界!竜だっていてもいいじゃないか!


「あのアキラさん馬車の中で立ち上がるのはやめてください……」

「あっ、すまん」


興奮のあまり俺はいつの間にか立ち上がっていたようだ

座りなおして聞き直す、図らずも韻を踏んでしまった。


「それで竜ってどんな感じなの、強い?強い?」

「アキラさんテンションがおかしいですよ?まあさっきアキラさんが言った内容と大差はありません。ですがドラゴンスレイヤーなんてありません。これは断言できます」

「なんで?」

「竜に手を出したら竜の群れが丸ごとおそってきますよ?竜はとても身内を大事にする生物なので1匹相手にするのは群れ丸ごと相手にすることが同じと言われてるんです。1匹でも街を軽々壊滅させる生物が1000匹以上襲ってきたらこの国は壊滅します。だから竜には誰も……さっき話に出た勇者でも手が出せないんです」

「へー」

「分かってます?」

「分かってます!」


こちらの世界でもやはり竜はデストロイヤー的な役割は持っているらしい。

でも1回くらいあってみたいね。怖いけど。



ガタンッ!


「オワッ!」

「キャ!」


走っていた馬車がいきなり大きく揺れ“ギギギ”と音を立てて停止した。


「お兄ちゃん運転荒いよ!」

「すまん車輪に何か引っかかったみたいだ!そっから見てくれ!ドォウドォウ春菊!ドォウドォウ!」


そういうとツバメは手綱を引いて春菊をなだめる。

窓から確認すると確かに車輪に縄のようなものが引っかかり絡まっていた。

サクラと俺は馬車を降りて車輪に近づくと、同じようにツバメも御者台から降りてきた。

縄は泥にまみれツバメが気づかなかったのは無理もない。


「あーあーしっかり絡まって」

「どうしましょうか?」

「俺にまかせーなさーい」


ここは俺の腕の見せ所だな、知恵の輪は得意なんだ。

そう思って近づくと、肩をツバメにつかまれる


「何やろうとしてる?」

「えっ、縄をほどこうかと」

「阿呆、ナイフで切った方が早いわ」


あっはい、正論ですね。

その後、ツバメがブチブチと縄を切っている間恥ずかしい思いをしたよ。

……5分後、縄の絡まった車輪は車輪と切り取られた縄に分解された。

切り取られた縄を見てツバメが首をひねる、


「なんでこんなものが転がってるんだ?」

「なんだろこれ?見たことあるような?」

「これは馬の手綱ですね、アキラさんも春菊に取り付けるところを見たはずですよ」


なるほど、確かに朝見た覚えがあるな。そして俺はツバメの問いに納得した。

周りに何もない場所で馬に取り付ける道具が転がっているのはおかしい。

ちなみに周りには馬どころか人っ子一人いない、馬車を止める盗賊の罠の線は薄いだろう。


「もしかして神隠しかもしれませんね?」

「は?神隠し?」


いきなり何を言い出すんだ?


「そういうのが最近あるんだよ、荷物だけ残して人が消えてるとか、馬が歩いてるのは見つかったけど肝心の馬の乗り手は見つからなかったとか」

「5年位前から時々起きていたらしいですが、一気に有名になったのは重装備の騎士団が装備だけ残して消えちゃった件ですね。結局痕跡一つ見つからず集団脱走と言う事になってギフト剥奪の刑になってしまったそうです」


コワッ!

元の世界でもテレビで時々あったなそれ、子供がいきなり行方不明になったとか。しかしこうして別次元の世界を見てしまうと次元の裂け目的なとこに落ちたんじゃないかと疑ってしまうな。

もっとも真相は闇の中だけど。もしくは別次元の彼方かな?


「どうにせよこんなもんに時間取られるのも癪だ、とっとと行こうぜ」


結局ツバメの一言で会話は打ち切られ、手綱も草原に放り投げられた。不法投棄という単語が頭に浮かぶがそもそも革で出来ているので放っておけば自然に帰るのだろう。結局俺はその手綱のことはそれっきり忘れてしまった。

ちなみに馬車は手綱が絡まったせいか先ほどより揺れが酷くなった。別に乗り物には酔わない体質だからいいけどさ……



それから少し酷くなった揺れの中サクラに質問していると、突然揺れが収まった。そして


「ついたぞー!」


と、外のツバメから声がかかる。

窓の外を見ると見事なレンガ壁と門、下を見ると石畳、これに乗ったせいで揺れが減ったのか。

前には順番待ちをしているのか何台かの馬車が停まっていた。


「アキラさん、荷物を降ろす準備をしましょう。検問があるんです」

「了解!」


さあ異世界に来て初めての街探索開始だ、張り切っていこう!




馬車はアトラクションで一度だけ乗ったことがありますが、話に登場するよりは快適でした。

1章は毎日更新します。感想をいただけると嬉しいです。

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