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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
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3-35 アジト内行動Ⅵ

う、うーん…………(クリスチャン)

 

 二つ名の進化は非常に数が少ない。

 そもそも、戦いの過程で別の二つ名を獲得する事の方が多いほどである。


 しかし、というか。

 それ故に、というか。

 その上昇率はまさしく桁が違う。

 “二文字”の有するエネルギー量が10とするなら。

 “三文字”の有するエネルギー量は1000を超えるだろう。


 更に、進化は全く別の力を呼び覚ます事もある。


 ヨウ・ユエン(ハクテン)の元々の二つ名は『飛針』であった。

 針を飛ばし、遠距離から暗殺を行うことで獲得した二つ名であり、能力は“針を飛ばす精度と距離に上昇”というだけであった。


 しかし、約1年前。

 長年テティスを守っていたが、突如行方を眩ませた先代より怪物退治の仕事を、受け継いで1年が経とうとしていた頃。


 雷鳴りやまぬ豪雨の夜、彼が雨の中戦っていた時の事である。

 敵は北方より現れる怪物。

 北門に数匹集まっているとの報告を受け、表の職務を全うしようと針を投射しながら、街を囲む城壁から飛び降りた時。

 雷が宙を走り、ヨウに直撃したのだ。

 ヨウはその身をリアルに焦がし、黒煙を体から吹きながら、そのまま地面にぶつかろうとした時であった。

 その瞬間、世界に言葉が響き渡る。


 〈〈ヨウ・ユエンが『『避雷針(ヒライシン)』』を獲得しました〉〉


 その言葉と共に覚醒したヨウは、空中で体勢を立て直すと、その場にいた怪物の頑丈な肌に針を突き刺した。

 だが、それでは終わらず、体から電撃を発し、怪物に刺さった針を狙い撃ったのだ。

 雷に撃たれた怪物は内部から破壊され、煙を上げて倒れて逝った。


 以降、彼は『避雷針(ヒライシン)』の二つ名と共に、体から雷を発する事が出来る様になった。


 ◆


 チリチリ……プスプス……。


 そんな音を立てながらレオンが呆然と立ち尽くす。


「(なんだ??? 今のは???)ゲッホッ……」


 無意識にレオンは口から煙を吐き出した。

 たった今起こったばかりの驚愕に体の反応が付いて行かない。

 それは時に、銃で撃たれた人間が興奮して全く痛くないように振舞って見せる様な、脳内麻薬を大量に出すことによって痛覚が麻痺を起こす様な、現象に似ていた。


 衝撃は伝わった。

 今まで感じた事も無い衝撃だ。

 全身が内部から爆発するような、皮膚が片端から張り裂けるような、衝撃だった。

 しかし、()()()()()


 レオン・ハザードが本当に衝撃を受けたのはそこではない。

 ()()()()()()()()()レオンにはどうでもいい事だ。

 本当に重要なのは、自分に、“傲慢の鎧”を常時装備する自分に、攻撃が通った事。


「ガフッ……」


 内臓にダメージを負ったのか生涯で初めて吐血を行い、そしてそれを口内に留め飲み込んだレオンは、普段は滅多に使わない脳を回転させる。


 今まで疑いもしなかった、自分自身の優位性。

 生まれた時から……では流石に無いが、レオンが記憶している限り、この“傲慢の鎧”を打ち破った攻撃は無い。

 不意に落ちてきた落石とぶつかった時も無傷、自分自身で全速力で木に突っ込んだ時も無傷、母親の愛の鉄拳……これはなぜか透過したが、それ以外は通したことは無かった。


 敵の攻撃が通る。

 つまりそれは、今まで立たなかった領域に立つ事。

 生死を賭けた戦いに足を踏み入れる……否、引きずり込まれた事を意味する。


 それは今まで、空を飛んでいた鳥が羽をもがれた事の如く。

 転落し、失墜し、墜落し、叩き落され。

 長所を、優位性を、アドバンテージを、失った。

 ついに対等?

 否、今までほとんど無かった痛覚という感覚に、耐性を持たないという点を考えれば、むしろレオンは不利とさえ言えるだろう。


 今までの虐殺のような戦闘はピリオドが打たれ、一転窮地に突き落とされたはずのレオンは―――


「ゲホッ……ホッ、ホホ、ホホホホ…ハハ……ハハハ、ハァーハッハッハッハ!!!」


 ―――それでもなお笑っていた。


 ◇


「なぜ笑っていル」


 吹き飛ばされた瓦礫の山から音を立て、立ち上がったヨウが開口一番に問いただす。


「貴様に打ち込んだ攻撃ハ、そこで転がっているうちの商品ヲ、ことごとくダメにした剣士と違イ、間違いなく致命の一撃だったはずダ。なのになぜ笑っていられル」

「あ? なん()生き()んだお(まへ)? ()か、クリス生き()んのか?」


 先ほどの攻撃で麻痺したようで、舌が回らないのか口調がおかしいレオン。

 こうして、一方は不自然に語尾を上げ、一方は舌足らずという、聞き取るのが難しい会話が発生した。


「質問したのはこっちダ、答えろケモノ」

「え? ()って楽しい()ろ?」

「雷に打たれることがカ?」

「うん? (かみなり)って言()のか? さっきのビリビリ? うん楽()いぞ!」

「なゼ?」

「痛()からだ!」

「? マゾなのか?」

「マゾってなんだ?」

「…………」

「……ん?」


 箱庭世界(閉じた世界)でレオンは生まれ育った。

 故にそう言う特殊な性癖の事も知らないのだ。

 ある意味純粋、悪く言え世間知らずである。


「ん? あー、あー、あー」

「いきなりどうしタ。気でも触れ―――」

 ―――ドォォン!


 その言葉は言い終わる前に打ち切られた。


「よぉし治った! 続きだ!」


 レオンの強襲によって。


 ◇


「ハハハ。ミッションコンプリート……ではないか。それでもこれ等を拾えただけでも満足してもらおう」


 そう言いながら、北方商事の廊下を上機嫌に歩く男が居た。

 男は、肩まである金の髪をなびかせながら颯爽と歩いていく。

 その腰に二本の剣が差されている。

 一本は黒鞘の剣、やたらカタカタ動いている。

 一本は白鞘の剣、こちらは動く気配はない。


「いやあ、頭脳プレイでしたね。ハクテンに変装し、落ちそうな廊下を見極め、最後の攻撃を『流水』で流し、廊下を落とす。落ちた所で(テクスチャ)を剥がし、下にいる本物のハクテンに彼を押し付ける」


 ニコニコと笑いながら、独り言を呟き続ける男。


「それにしても、今見た状況だと北方商事との取引はだめだな。あの様子だと武器はほとんど死んでるし、なんでか薬草は宙に舞ってたし。これは残り二つの仕事に専念した方が良いですね」


 神妙なセリフを言いながらも、未だに顔はにやけている。

 当然だろう、つい先ほどまで目に前に居た、命の危機が去ったのだ。

 むしろ安心して腰砕けにならないあたりが、男の潜ってきた修羅場の数を思わせる。

 それでも、廊下を歩く足取りはかなり早く、この場を一刻も早く立ち去りたいのだと分かった。


 その時後ろで“ドォォン!!”と大きな破壊音が聞こえた。

 戦闘が始まったのだろう。

 男は少しだけ立ち止まり、後ろを振り返り、そして息をついた。

 後ろには彼を追いかけてくる者などいない。それでも振り返ってしまうのはよほど追いかけてくるレオンの印象が残っていたのだろう。


 男は失念していた。

 彼を追いかけてくる者など居なかったのは間違いない。

 しかし周りに人がいない訳では無かったのだ。


 “ガゴンッ”


 前方で何かが抜ける音がした。

 後ろを向いていた男がその音に反応しない訳は無い。

 すぐさま左腕にナイフを握り、戦闘態勢を整え振り返り、音の元を探す。

 ……見ると床の一部が浮き上がっていた。

 いや、浮かび上がるというより、それは開くと言った方が正しいだろう。

 床板の一部が斜めに開いていくが、立て付けが悪いのか、単純に扉が重いのか、その挙動は詰まり詰まりだ。

 そんな様子を男は見ていた。

 理由は特にない。が、しいて上げるなら、イレギュラーの存在を少しでも確認したかったのかもしれない。


 彼の北方商事での仕事は、昨年に発注した武器の買取りを行う事と、秘密裏に運び込まれた“名剣”の回収である。

 そして前者はともかく、後者は夜に忍び込んで盗みだすつもりであった。

 今回は襲撃によって予定が色々こじれたが、それでも臨機応変に対応した結果、最重要であった“名剣”の回収は成功、結果は上々といったところだろう。

 しかし、イレギュラーの存在は見逃せない。

 今回遭遇した金銀の髪をした男は、詳しい能力は不明、名前も不明、目的も不明、と分からない事だらけであった。

 そんな何も分からない不気味な男は、ただ力任せに暴れただけで北方商事をほぼ壊滅に追い込んだのは事実。

 ココで最低でも情報を仕入れて帰らないと、“彼ら”の今後の仕事に何かしらの影響を及ぼすかもしれない。

 そしてココに来て、自分の目のまえに新しいイレギュラーが現れた。

 もちろんこの隠し扉の向こうに目的の相手が居るとは思わないが、それでも自分の知らない情報を知っておきたかった。


 “ゴゴゴ……”


 扉が摩擦で音を立てながら徐々に開く。

 そして、その先に人影が見えた。

 そこには―――


「ぐはぁ! ようやく開いた、重いんだよこの扉! ……ん? あれ、あんた財布落とした兄ちゃn――!」 


 アキラがその言葉を言い終わる前に顔面に蹴りが入った。


 ◇


「うわああ! どうしたボス! いきなり落ちr――!」

「ぎゃああ! くるなぁ! 支えるのは無理だっt――!」


 そんな言葉と共に、重い物が落ちる音が後ろで聞こえた。

 後ろで聞こえたのは、蹴り飛ばしたと同時に男は走り出していたからだ。

 開いた扉を飛び越えて廊下を疾駆する。


 問題発生。

 男がアキラを蹴りこんだ地下室(?)はそこそこ深いようで、ケガはしなくてもすぐに上ってくる事は不可能。

 とにかく、今すぐに逃げ出さなくては。

 顔を見られたことは別に良い、顔を覚えられたいた事も。

 しかし、問題はそこではないのだ。


 彼にアキラは、殺せないのだ。

 それには“今は”と注釈がつくが、現状「顔を覚えられたから殺す」という彼らの常套手段が使えない事は変わらない。

 だから逃げる。一目散に。


 廊下は所々壁に穴が開いていたり、荷物が倒れていたりするが、男はその間を滑らかな金髪を揺らし、そよ風の様にすり抜ける。

 道順は最初に案内されたときに覚えていた。

 そして数分も経たず、道に光が射した。


「(ははは、よし出口だ!)」


 男の顔がほころび、走る速度が少しだけ上がった。

 廊下を抜け、破壊された扉を踏み抜き、





記憶(メモリ)起動【勇気の剣(ブレイブ・ブレイド)過剰発光(オーバーシャイン)】」


 そんな無慈悲な言葉と共に、閃光が彼を包んだ。

全然話が進まない。

4000字って短いね。

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