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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
78/111

3-24 “元”神様と……Ⅲ

ん? 何か聞こえたような? 気のせいか?(レオン・ハザード)

そしてカミルが暴れだして10分の時が過ぎようとしていた……。

一瞬一秒が10倍にも100倍にも感じる時が有ると言う事と、そしてそれはやはり一瞬一秒でしかないという事を、この10分をもって嫌というほど体感したクリスはそろそろ限界を迎えようとしていた。


「(長い! けどまるで止まらない! あとバカ兄が一向に帰ってこない!)」


弱音こそ吐かないが、それでも必死になって交わし続けるクリスは先ほどから攻撃を行っていない。

当たり前だろう、無茶苦茶に暴れまわる相手の行動を予測することが出来るほど彼は武術を修めてはいない、ストリートファイトの経験もない、むしろ拙いながら躱し続ける事が出来たのはこれよりも早いレオンの攻撃を躱した経験が有るからか、それだけでも褒められるべきだ。

しかしクリスがレオンの攻撃を躱したのは数発、今回は少なくとも数百発を超えるだろう。

それだけ長い間躱し続けるなら流石に集中力が切れてくる。

一方的に攻撃され、ギリギリで躱すことしか出来ない状況で、攻撃できるほどの余裕はないのだ。


それでもベンジャミン達から暴れまわるカミルを受け継いでから5分間。

無茶苦茶に振り回される攻撃を一発ももらわなかったのは間違いなく偉業であった。

だからこそ彼を貶す者も馬鹿にする者もいない。


クリスは壁に叩きつけられた。

壁はその一撃をもって崩壊し、ガラガラと音を立て崩れ落ちる。

出来たばかりで脆いのかもしれないが、それでも一つの家の石壁が崩壊した。。

攻撃は単純なタックル、しかし予備動作は無く、ほとんど倒れるようにした後、そのまま足を踏み込んだ。

地面に水平の状態で突っ込んでくる人間ミサイルを躱す状況などこれまでの人生で一度もなかったクリス、そしてこんな状況これからも無いだろうなと考えながら彼は吹き飛ばされた。

一瞬素早く流れる視界に入る前、その視界に入ったのは、首を垂れるように空中で回るカミル、そしてその後ろから迫るアキラの姿だった。



ヤバイヤバイヤバイ!!

クリスがやられた!!


フフフ、ヤツは我が四天王の内でも2番目に強い。


マズい馬鹿なこと考えてる場合じゃないのに、謎の余裕が生まれてくる。

追い詰められると起きる変なテンションだ。

この感情はたぶん深夜テンションが一番近い。そしてこの思考は今一番どうでもいい!


クリスはものすごい奮闘した。コレは間違いない。

カミルは現在駄々をこねる子供を酷くネガティブにした状況だ。

そんな状況でくり出したのは手足を無茶苦茶に振り回す攻撃(?) つまりグルグルパンチ。

だが案外グルグルパンチは結構侮れないのだ。ハルマ曰く、やってる本人も予測できない攻撃なのでその状態で突っ込んで来たら見た目以上に躱し切るのが難しい、らしい。

その攻撃をギリギリではあるが躱し続けたのだ。ホントに頭が下がる。

しかしそんなクリスの奮闘も虚しく未だに来ないレオン、一応呼んだのだが聞こえて無いのかな?

周りの奴等も諦め気味で加勢は期待できそうに無い。

実際空中で反転し仰向きの状態で倒れたカミルに誰も覆いかぶさろうとしない。

どうしようもないぞコレ。

少なくとも止めよう思って実行に移せる者は居ない。

え? 俺? ハハハ、一般ピープルに何を期待してる? クリス、ベンジャミンで無理なら俺は絶対無理だって。心技体の心でどうにかするには立ってるステージが一つか二つ近くないとムリムリ。

うーんしかし凄いなカミル、ベンジャミン達を力ずくで振り切って、ベンジャミン帰ってこないくらい投げ飛ばして、クリスを吹っ飛ばして、あれだけ動けるのに何であんなに悲観的なんだか……。

……………………ん?

何か見落としているような? 気のせいか?

よく見ろ。何がおかしい。

傷だらけでカミルを見る野郎ども、気絶した状態で倒れたまま動かない数人、壊れた壁、吹き飛ばされたクリス、踏み込まれた石畳、帰ってこないベンジャミン……はいいや、立ち上がろうとするカミル、その手は酷く血にまみれて……。



なんだ、そう言う事か。


疑問が解けた俺はスッキリとした顔でカミルに近づいて行った。



「おい! 危ないぞ! 近づくな!」


俺の後ろから誰かが言った。

どうやら心配してくれる程度には俺はあいつ等と親しくなれたらしい。

しかしその心配を無下にして俺は歩みを進める。

カミルはジリジリと起き上がろうとしているが、まだ倒れたままだ。


「あぁああぁ」


カミルが近づく俺に何か言っているが無視。

倒れたままこちらを見るカミルの目を見返すように屈んだ俺は、その手に持ったものをカミルの顔面に叩きつけた。


ペシャ


音はそれだけ、“ペシャリ”でも“ペシャッ”でもない。

勢いのない音は俺がただ、零さないようにそれを顔にぶつけた証明。

少しの静寂。

カミルの顔に手を置いたままの状態で俺は待った。

効果は劇的だった。


「ぎゃあああああああああああ!!!! 目がああああああああ!!!!」

「ハッハッハ! ざまあみろ!」


久しぶりに人間らしい反応をしたカミルに俺は笑い飛ばした。


「ああああああああ! 目がああああああ! 舌がああああ! 肌がああああ!」

「ハハハハハ!! ハハハハハ!! ハハハハハ!!」


その場を立ち上がったり、座ったり、転がったり、飛んだり、跳ねたり、頭を激しく上下させたり、と忙しなく動き続けるカミルを俺は笑って見ている。

見事成功!

いやぁうまくいって良かったです!

俺がカミルに押し当てたのはこの前アミゴ(語彙死んでる)に使った調味料。

前回は投げた飛沫がぶつかっただけだが、あれだけの楽しい悲鳴を聞かせてくれたタダの調味料だ。

今回は掌一杯を塗り込むように押し当てた、効果は見ての通り。

先ほど以上に元気になった。

この暴れぶりはアレを思い出すな、えーとなんだっけ? 何か外国の小説。アレに出て来た“ペインキラー”なるものを思い出す。

俺が懐かしき故郷に思いをはせているとカミルが痛みの余りどこかに走って行った。

向かった先の道はまだ完成していないので地面に足跡が残る。

追いかけるのは容易なのでひとまず放置するとしよう。


「何があったんだ?」

「何が起こったんだ?」


呆然とこちらを見る馬鹿どもに俺は笑いながら言った。


「手洗わせて!」


染み出る汗と涙をどうにか押さえ込もうとしての言葉だった。



持ってただけの俺の手のひらが尋常じゃないくらいビリビリするその威力。

実際に体験して知ったがこれは調味料じゃない、毒物もしくは液体の形をした兵器だ。

全く誰がこんなもの発見したのか、手を水瓶に付けながら思う今日この頃。


「で、何が起こったんです」


ダメージから素早く回復したクリスが俺に問いただす。

他の面々も立ち上がり、水瓶に手を突っ込んだ俺を取り囲み威圧する。

この構図はどう見ても虐めなんですがそこについては突っ込まないことにする。


「お前らが体感した通りの事だ」


俺は気づいたことを語る。

と言っても、大したことじゃないんだけど。


「カミルは正気を失ったわけじゃ無かった、ただ単に暴れてただけだよ」


全員が驚いた顔をした。

どうやら気づいた者ゼロ。

まあそうだろうね、俺も途中まで分かんなかったし。


「その根拠は?」

「単純な話、お前等誰も死んでないじゃん」


そうなのだ、こいつ等、ケガもしくは気絶くらいはしているが誰も死んでないのだ。

カミルの現在の腕力は人間一人をブンブン振り回すことが出来るほどのものだ、ならばその力を十全に発揮すれば人間なんてグシャッとできそうじゃないか?

そもそもあいつはブッチャーを壁のシミにしたレオンと正面から打ち合えるほどの力を持っているのだ。

ブッチャーよりも明らかに軽くて脆いこいつ等を壁に叩きつけて壁のシミにしていない時点で少しおかしい。

あんまり強くすると死ぬって知ってるから手加減したってとこだろ。


「じゃああの叫びは演技ですか?」

「どうだろ? 叫んで暴れてストレス発散しただけかもよ? 最後の以外」

「迷惑な……」

「ワハハそう言うな、おかげでカミルの心情が知れた、じゃあ行こうか?」


そう言って立ちあがる。

他にも色々根拠はあるけど実体験に勝るものなし、困惑はしているが納得はしてもらえたようだ。


「どこへ?」

「追いかけるんだよ、あの優しくなった“元”神様を!」


そう言って俺は勢いよく手のひらを握った。

……超痛い! 調子に乗って馬鹿な事やるんじゃなかった!

次回カミル編決着予定!

しかし予定は未定。

ホントに長いな。

次回は日曜日更新の予定です。

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