3-23 “元”神様と……Ⅱ
タイトルは仮タイトルなので、後半出したら変えます。(牧村尚也)
室内でアキラは異常な作戦でひっそりと勝利を収めるとドアを開けて出ようとした。
自ら作り出した状況に終止符を打とうと外に飛び出したのだ、しかし……。
「ああああああああ!」
「押さえろおおお!!!」
外はある意味戦場だった。
現場には周りの壁に体をぶつけ続け暴れまわるカミルとそれを何とか押さえようと飛び掛かる男衆が大声というか叫びながらぶつかり、前者は自傷で、後者は弾き飛ばされたことで、互いの血が飛び散り出来たばかりの石畳を赤く濡らしていた。
ダガンッ!
アキラが呆気に取られていると隣の壁に人が飛んできた。
どういう状況で弾き飛ばされたのか上下逆になり壁に大の字になりながら壁に叩き作られたのだ。
一瞬ブッチャーがフラッシュバックするが流石に壁にシミにはなっていない、……いないがそのまま顔面から地面に落ちた。
よく見れば全身裂傷や擦り傷で所々血だらけ、たった今顔面を負傷したことを差し引いても明らかに戦闘不能だ。
「マジか……」
零れ落ちた言葉は無意識の物だったのだろう。
飄々と笑うアキラには珍しく焦燥や恐怖と言った感情がそこには含まれていた。
「アキラさん、ココからどうするんです? どうやって止めるか作戦を下さい」
「(こっちが知りたいんですけど!?)」
そう言って近づいてきたのは今だ無傷のクリス。
しかしあの戦場に入っていないわけでは無く、その呼吸は乱れており体に血痕が付着している、何度か戦場に入り攻撃を躱していたようだ。
しかしながらアキラもここまでの自体は完全に想定外、心の中で丸投げしたクリスに文句を言う始末だ。
自分で起こして後処理を自分でしないのはどうだろう? という思考から声には出さなかったが。
そうこうしているまた一人弾き飛ばされた。
今度は真上、2階部分まで飛び重力に伴って頭から墜落してくる。
高さ数メートルとは言え頭から石畳に落ちれば致命傷だ。
「マズい!」
「危ない!」
それに気づいたアキラとクリスが動きだすが、二人よりも早く行動したものがいた。
「うおおぉぉ!!」
彼は飛び上がり落ちてくる男の服を掴むと思い切り腕を振るった。
振るわれた先は走り出したアキラたちの方向。
「「え」」
落ちてくる男の影が二人を隠すが彼らは反射的に後ろに飛び下がったが、そのおかげで勢いが殺された。
「ぎゃふ!」
「ウッ!」
声を上げながら男を体で受け止めた二人。
アキラは情けない声を上げたが、飛ばされた男の方は最悪の事態は避けられた。
「オイ! いきなりこうゆう事するのはやめろ! ビックリするだろ!」
「そうだよ、今回はうまく言ったけど僕とアキラさんが共倒れになったらどうするのさ。兄さん!」
「すまん! 緊急事態だ! ゆるせ!」
「ゆるす!」
「ゆるすんかい!」
アキラの軽口にツッコミを入れたのはベンジャミン・リンカーンである。
◆
ベンジャミンは飛び出した勢いで地面に転がり、現在うつ伏せの状態だが見た目よりは元気そうだ。あくまで“見た目より”だが。
立ち上がるとその服はすでに赤くない部分の方が少ないほど血にまみれ、体のあちこちからも出血している。
最初期からカミルを押さえようと飛び掛かり続けた彼は、すでに四度ほど弾き飛ばされ壁に地面に叩きつけられそのたびに立ち上がりカミルに立ち向かった。
現在も軽口に付き合えるのは真っ先に飛びかかったことで『先頭』の二つ名が発動し身体能力が上昇しているだけに過ぎず、もし二つ名がなければ早々にリタイアしていただろう。
素のベンジャミンは多少強いが一般人から大きく逸脱した存在ではないのだ。
しかしそんな彼が二つ名を手に入れたのは理由がある。
「ふぅふぅ………よし! 行くぞ! カミル!」
そう言ってまたも突っ込んでいく。
その足取りはダメ―ジが抜けきっていないのでフラついてこそいるが、その歩みに一切の迷いはなく、すでに傷だらけの体に鞭をうち前に進む。
その心はカミルを助けるという一心で構成されているからの行動だろう。
そんな彼だから二つ名を与えられたのだ。
◆
「ああああああああ!ああああああああ!」
「おーちーつーけー!!」
ベンジャミンが後ろから羽交い絞めで動きを止めようとするが、それでもカミルは止まらない。
ジタバタという擬音ではなく、グワングワンと聞こえる音は完璧に決まった羽交い絞めを数秒で振りほどくほど。
現在カミルを止めようと掴みかかるのはベンジャミンを除き数名、しかしその顔にはあきらめの表情があった。
恐らく後何秒かすればまたベンジャミンは吹き飛ばされるだろう。
そうすれば数秒でもカミルを個人で止める者は居なくなる。
ベンジャミンの鼓舞で掴みかかるが数十人がかりでやっと十数秒拮抗できる程度、そんな力を見せられ掴みかかるつもりだった者も怖気づいてしまう。
相手は箱庭を作り出した張本人、恨みは無いが助ける義理も無い、何より彼自身が望んで行う自傷行為。
彼らはすでに諦め始めていた。
“ムリムリ止まらないよ” “頑張っても無駄” “助けても意味が無い”
誰かが言葉にした。
そしてその言葉は、気持ちは、一瞬で伝染した。
周りの雰囲気が一気にマイナスに振られる。空気が沈んでいく。空間が諦めていく。
そんな中カミルの周りだけが悪い意味で賑やかだった。
「重ね重ねどうしますアキラさん!?」
「あークリス、ベンジャミンと一緒にがんばったらどれくらい止められる?」
「どうでしょうね、押さえるなら……30秒くらい?」
「短い!」
「戦力が足りなすぎるんですよ!」
そう叫ぶクリスはどこかヤケクソ気味で、いつもよりテンションが高い。
しかしあきらめた人の群れは彼らを遠巻きに眺めるだけで一向に近づいて来ない。
その様子を見てアキラは舌打ちをするが責めることは無い、彼もあの戦場に近づくことは出来ないのだから責める資格など無いのだ。
「クソッ! じゃあクリスGO!」
「え? 何か作戦は?」
「そんな都合のいい物ポンポン出るか!」
「えー……」
「がっかりしてないでGO! ベンジャミン死ぬぞ!」
「ああああああ!」
「おああああ!!」
アキラの言葉に合わせたように振り回されるベンジャミン。
空中でハンマー投げの様に回っている。
「ワンパターンな叫び声め!」
「ツッコミどころが違う! じゃあアキラさんは何を?」
「俺はレオンを呼ぶ」
そう言ってアキラはポケットの手を伸ばし、そこからある物を取り出した。
「それは?」
「秘密兵器未満…かな? 運の要素も絡むし。それよりあのままだとベンジャミンホントに死ぬぞ?」
「死ぬううう!!」
「本人もそう言ってるし」
ベンジャミン状況は相変わらずであるが、回る速度が徐々に上がっているようだ。
このままだと遠心力で血が外側に集まり貧血を起こす可能性はある。それを差し引いてもパッと手を離されそのままの速度で壁にぶつかれば交通事故と変わらない衝撃を受けるだろう。
ベンジャミンの救出は即座に行う必要がある。
「じゃあ行ってきます! レオン呼んでくださいね!」
「おう頑張れ! 頑張れくらいしか言えないけど!」
そう言ってクリスはカミルに突っ込む。
ベンジャミンを頭の上で回している彼がそのまま振り下ろせば交通事故だ、だからクリスは滑った。
スライディングキック……というカニバサミである。
幸い出来たばかりの石畳で凹凸も少ない、走った勢いは殺されず一直線に大きく広げられたカミルの足を強襲した。
「良し!」
「がっ!」
「ぎゃあああ!!」
三者三様の声を上げながら別れる三人。
一人はスライディングから片手を起点に反転し立ち上がり
一人は倒れる勢いを殺すため地面に両手を突いてそのまま前転飛びつまりハンドスプリング
一人は前者が両手を突いていることから分かるがそのまま飛んで行った。
「ああああああああ!」
彼が幸運なのは飛んで行った方向に高い建物が無かった事だろう。そのまま屋根を超えて隣の通りに落ちていく。
「……まあいいや! 行くぞカミル!」
「……うわああああ!」
それを見届けて何事もなかったかのように対面する残った二人。
あえて考えないようにしているのか、それとも本当にどうでもいいのかは分からないが彼らはそのまま激突した。
正しくは暴れるカミルにクリスが突っ込んだだけだが状況は一緒である。
無茶苦茶に腕を振り回し勢いよくタックルを繰り返すカミルが攻撃している対象がクリスはカミル自身かの違いである。
この時点でクリスはカミルを押さえこむ事を断念、自分よりも強いはずのベンジャミンと大勢の戦力が止めようと掴みかかり吹き飛ばされている事から自身には傷を負わせず捕らえる事は困難と判断したからであり、すでに躊躇なく叩きのめす気で戦闘に入っている。
その覚悟の差か、単純にとった行動の差か、ベンジャミンと違いカミルに捕まることもなく攻撃を避けつつジャブを何度も打ち込んでいた。
狙っているのは人体急所の一つ、みぞおち。
行動不能にするなら相手を呼吸困難に陥れようとの考えである。
だが……
「倒れない! むしろ早くなってる!」
「ああああああああ!」
「本当にワンパターンな叫びだな!」
止まらないのはカミルが痛みを許容しているからか、むしろ痛みをさらに貰いより破滅に近づこうと躍起になっているのかもしれない。
その奇行はより激しさを増していく。
もうちょっと書き足そうかな・・・?
月曜日の更新はお休みします




