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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
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3-19 ”元”神様と問いかけ

土~土~土~♪(男性陣一同)

アキラたちが肩を落としながら帰路についている頃。

石の塔の頂点から工事をボーっと見守るカミル。

彼の仕事はすでにほぼ終わっており、残った仕事はこの工事が終わってからでしか出来ないものと、作戦当日のものだけである。

つまり彼は現在手持ち無沙汰である。


自らの仕事が終わった彼はやることもなくただただ無為に時間を過ごしていた。

いや、正しくは仕事など探せばいくらでも見つかるだろう。

現在行われている工事など石畳を作るために石がいくらあっても足りないはずである。

綺麗に切りそろえる作業や地面に並べる作業は職人にしか出来なくても石を運ぶ仕事位なら手伝うことは出来るだろう。

実際、道に並べる石は切り出すので大きくなければいけない。一輪車など無いので持ち運びには肩に担いだ木に網を掛けた、いわゆる“もっこ”と言われる道具で運んでいる。

重労働である石運びは全体的に体力のある異世界人でも何度も往復するのは大変で、焼け石に水だとしても人が一人増える事はありがたいはずだ。

しかしカミルに工事現場に交じる気はない。

正しくはそんな勇気が無い。


「(近寄ったら殺されるとかは無いにしても、虐められることは間違いなくありそうだよね…)」


カミルはチキンである。

箱庭で“神”として君臨していた時の振る舞いはどこに行ったのか、現在は非常に肝の小さい事を考えていた。

それは当然の事だろう。

彼は数日前(現実時間だと2年ほど前だが)までは間違いなくこの世界の“神”であった。

その戦力は比肩する者など無く、人を攫い戦争を起こし、戦争が停滞すると片方を煽って戦火に再び火をともした。ただ快楽のためだけに人の生死を利用した。

好き放題行った。

非道を行った。

悪を行った。


しかしアキラ主導での革命が起き、レオン・ハザードが動き、カミルは(半分自爆だったが)敗北した。

非道を行える時は過ぎ、多くの歴史が証明しているように革命の後は過去の統治者の血によって戦いは終結する……………はずだった。

が、カミルはなんの因果か生き残った。


「(仲間の死体を利用して替え玉作戦ってどうなんだろ……それで助かった僕としては良いんだけど……モラルとか……。)」


本来ならカミルはあの時首を飛ばされて死んでいる。

実際あのテントで会議された内容にそういう案もあった。

しかし、革命の主導者であるアキラがカミルの能力を惜しんだことにより瀬戸際で生き残ったのだ。

行われたのは替え玉作戦。

用意したのは


戦争で死んだ者の中でも比較的綺麗な死体:一つ

ミドレラ草モドキ:大量

墨:野球ボール半分ほど

袋:一つ


である。


まず死体の髪を墨で黒く染めた。

墨の原料は松脂が取れた木、松に似た性質を持つ木は燃やしても松に近く本来の墨と同じような煤が取れた。今回はこの煤をそのまま髪に塗ったので正しくは墨ではないが。

この作業はカミルの顔をほとんどの村人が知らない事を使ったトリックのようなもので、実際半年の間ほとんどこの世界に降りず、降りたとしても人目を避けていたカミルの顔を知っているのは最初期に集めたメンバーと交渉のために話したレオンのみ。

派手だったレオンとの戦闘も村人は村に引っ込んで見ていないのである。

それを逆手に取り、今回はカミル本来の髪色(赤色)と替え玉の髪色を大きく離すことで二人の間のつながりを想像しづらくしたのだ。

正直髪の色は赤以外何でもよかったのだが、『黒が楽そうだな』というアキラの意見が尊重された。

絵具思い出せば分かるように色は混ぜ続ければ大体黒になるのである。


続いてミドレラ草モドキの汁を絞った。

天然血糊の完成。

以上。


後は死体の顔に被せる布に血糊を仕込み、死体の首を飛ばし転がる袋に血糊が染み出るのを見せればよい。

死体の顔を隠せて一石二鳥。


替え玉の死体はカミルのパフォーマンスで変な動きをしながら時空の狭間に消えていったので、処理も完璧でありバレる可能性も皆無。

まさに完璧な替え玉作戦であったと言えるだろう。

まあ、2日目でバラしたのだが……。


『じゃあ、何であんなに丁寧に準備したんだ! もっと適当で良かったじゃん!』とアキラは言ったが、カミルとしてはいつ自分の正体が露見するか分からず、終始ビクついている日々など出来れば早めに終わらせたかったので無理を通したのだ。


「(あれから少し時間が経ったけど、それでも僕を刺しに来る人はいない……)」


カミルはビクつく日々を終わらせ、ある意味晴れやかな気分で石の塔から下を見下ろしている。

ココには柵もない。

抵抗するつもりはない自分など突き落とせば普通は死ぬだろう。

単純に刺されるかもしれないし、後ろから鈍器で殴殺もあり得る。

彼はいつ殺されてもいいと心の準備をしていた。


彼の根底にあるのは『殺されるのはかまわないが虐められるのは勘弁したい』という考えで、昨日のテントでの懇願は紛れもない事実であり、子供の頃からのトラウマになっている虐めだけはイヤと言うだけで、殺される事はいくらでも許容するつもりなのだ。


自らの行った非道から考えればいくらでも殺される理由はある。

逆に殺されない理由の方が見つかりづらいだろう。

虐められ悲観的にしか世界を見れなくなった彼はそう結論を付けていた。


だから、だからこれから起きることは彼にとって非常に意外な事であった。



「こんなところで何をやっておる」

「あなたはたしか……デニムさんでしたよね」


“その通りじゃ”そう言うとデニム爺はカミルの隣に座った。


「僕なんかに構っていると虐められますよ?」

「ワシを虐めるヤツがおると思うか?」

「思いません」


カミルは自分で言って「(それは無いな)」とすぐさま判断した。

相手が悪すぎる。

アキラでさえ正面から争うのを避ける才人だ、虐めなど軽々と躱して見せるだろう。

しかしどうにか彼には離れてもらわなければ、そう考えるカミル口を開こうとして、


「ワシを遠ざけたいならもっとましな言い訳を考えい」

「うっ……」


そのカミルの心を読んだように放たれた言葉は彼の動きを詰まらせた。

少なくとも考えていた半端な意見では反論の余地もなく論破されそうな予感がしたのだ。

詰まったカミルに追い打ちをかけるようにデニム爺は言葉をつづけた。


「カミル。おぬしの考え方は非常に悲観的じゃな」

「あ、はい、そうですね、他の人よりもマイナス思考だとは思います」

「大部分とは違うことが辛いか?」

「え!? えっと……」

「他人の意見が気になるか?」

「あの……」

「今、おぬしは何を考えている?」

「あの……」


デニム爺が何を言いたいのか分からないカミルは言葉を返すことが出来ない。

それを知っているデニム爺も言葉を次々と繋げる。


「人の命は重いか?」

「あ、当たり前です!」

「人を殺した者は断罪されるべきか?」

「当然です!」

「ならばおぬしはなぜに死にたがる」

「は?」

「おぬしは誰も殺してなどおらん、それでなぜ無理やり罪を背負おうとする」

「ぼ、ぼくは……」

「能力の暴走、若さゆえの誤り、そう言ってしまえば貴様を罪に問える者などおらん。なぜ楽な道を行かん」

「それでも……」

「今一度問おう。なぜおぬしは死にたがる」

「僕は人を殺しました!」


カミルは叫んだ。

『この人の言葉は何か自分とは決定的に違う』そう感じたから。


「それがおかしい、お主は誰も殺してなどおらん」

「直接的でなくても、僕は死の一因を作った!」

「そんな事いちいち断罪していたらキリがないぞ。木に登って死ぬといけないから木を片っ端から切り倒すみたいなものじゃ」

「僕は戦争を起こした!」

「最後にそれを望んだのはワシらじゃ」

「何だそれ!」

「決めるのはワシらじゃった、と言う事じゃ。おぬしに集められたあの場でおぬしに反抗すれば良かったんじゃからな」

「そんなの結果論だ!」

「その通りIFの話じゃ。そして結果ワシらは戦争を受け入れた」

「何なんださっきから!」

「おぬしの考え方の補強をしてやろうと思ってな」

「そんなの……僕が間違ってるみたいじゃないか!」

「間違っているみたいじゃない、間違っているのじゃ」

「何で!」

「お主の考え方は悲観的すぎる、だから見えなくなっておる」

「何が!」

「それは自分で気づいた方が良いと思うぞ? ワシは補強するために来ただけじゃし」

「何、が……」

「降りてみれば、人と交わればきっと分かるわい」


デニム爺さんは立ち上がりそのまま振り向くこともなく石の塔から出ていった。


「何が……」


取り残されたカミルの問いに答える者はいなかった。

カミルはいつの間にか泣いていた。

長くなったので分割

シリアスを書こうとするとどうして臭くなる。つまり苦手。

次回は日曜日更新予定

話が進まないな~? なんでかな~?

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