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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
72/111

3-18 買い物をしたよ!

土土土~♪ 土いじり~♪(ペドロ)

土土土~♪ 土いじり~♪(ベンジャミン)

艶やかな金髪とにこやかな笑顔、少し切れ目で鼻は高い、頬に大きな痣あるがそれを感じさせないほどの美形が喜びの声を上げていた。

凄いな、まるで本から飛び出してきたような完成された美形だ。

ちなみに俺の隣にいるサクラは同じくらい美形だ。

そしてその美形な兄さんが走って近づいてきた。

ちょっと引くほどのイケメンが自分に向かって走ってくる。女子なら発狂しそうな状況だ。

ま、男子だから何も感じないけど。むしろ相対的に不細工に見えるからあまり近づかないでほしいと考える余裕すらある。

この時すごいかったのは道に広がっていた人の波が割れた事である。

顔面戦闘力というか発するオーラ的なものによって広がったのだろう。イケメンってこういう時お得だよね。俺が同じ事やっても絶対こういうことにはならないもん。

そう考えると目の前のイケメンと同じくらい美形であるサクラも同じことできるのかな? できそうだな……。

ん? ツバメ? 知りませんね? 誰ですか?


「いやぁ助かった! 君達が拾ってくれなかったら旅行資金丸ごと落っことすところだったよ!」

「そりゃあ良かった。ところでこれは本当にお兄さんの物?」


にこやかに笑いかけるイケメンに俺は当然の事を問いかける。

まだ落とした本人と決まった訳じゃないからね。


「あぁ、なるほどね。じゃあ中の硬貨を数えてくれるかい? 金貨が24枚と銀貨が3枚だったはずだ」

「了解!」


自信満々に答えるイケメン。

その表情は俺に小袋の持ち主であることを確信させ、中身の金額は俺に満面の笑みを浮かべさせた。

落とし物は一割返しが基本だよね! 好意だったはずだから強制力はないけど! ないけど!



道の端っこにて小袋の硬貨を数え終わった。俺の予想通りイケメンさんの言った通りの金額にぴったり一致。

この小袋は彼の物だと証明された。

それにしても小袋で数百万、下手したら数千万の金額を持ち歩くとは金持ちな兄さんだ。

そしてそれを落っことすとはなんとも間抜けな兄さんだ。

そこから軽く世間話。


「本当にありがとう!」

「良かったですね見つかって」


体を90度に折り曲げ頭を下げるイケメンさんに言葉をかける。


「今度は落とさないようにお願いします」

「いやぁお恥ずかしい、初めての旅行で舞い上がってまして。落とした事にはすぐに気づけたから良かったんですけどね。あと親切な人が拾ってくれたことも良かったです」

「神様にでも感謝しますか?」

「あいにく神様の類は信じていないので。イキガミは少し違うけど」


そう言うと彼は肩をすくめるようなポーズをとった。

凄いな、さっきから何してもさまになる。


「そちらは髪の色からすると転生者さんかな?」

「ハイ、半月前(体感時間の話)に越してきまして。後ろの二人は転生後(こちら)で仲良くなった友達です」

「どうも」

「よろしくお願いします」


そう言ってぺこりと頭を下げる二人。顔はフードで隠れている。


「そうか。ところで、この世界は聞く話によると転生前(むこう)よりも不便だと聞くけど困ったことは無いかな?」

「そこまで早急に困ったことは……。あぁ、しいて言うなら多少資金難ってとこですかね?」

「なら良かった。それなら協力できるからね。これはお礼だ」


そう言って小袋から金貨を5枚渡してきた。

財布の中身の約五分の一。

前の世界換算で大体50万。

わあ、想像以上。


「いや! ダメです! そんな好意に漬け込むような事は!」

「いや! こうでもしないと僕の気が済まないんだ貰ってくれ」

「ですが! こんなに貰うわけには……」

「僕を救うと思って!」

「でも……」

「頼む! 君たちに拾われなかったら僕は全額失っていたんだ! そう考えるとこれくらい!」

「……分かりました。ですが、せめてもう少し金額を減らしてください。そんな金額持ち歩くのは怖いですから」

「そうかい? ならこれくらいで……」


そう言ってイケメンさんは金貨を俺の手のひらから2枚持って行った。

残ったのは3枚。大体30万。

うーん? これ位でいいか。


「じゃあ。これくらいなら……」

「ありがとう!」


そう言って俺の手を握るイケメンさん。

ホントに感動しているように見える。

手を離すとイケメンさんは笑って走っていった。最後にこんな言葉を残して。


「じゃあ僕はこの辺で! この辺スリが多いらしいから気を付けて!」

「(うん、うっかり莫大な金額落っことすアンタが言うか? ……ん?)」


イケメンボイスでブーメランな忠告をしていく彼の発言に、俺は何か引っかかるような感じがした。



「さて、期せずして軍資金が手に入ったな」

「ホントどういう幸運ですか」

「アキラさんって割とどんな世界でも生きてい行けそうですよね」


そんなサクラの発言に何処か納得がいく。

実際、いきなり転生したり、戦争地帯に引き込まれたりしても生還してるからあながち間違いじゃない。ホント運だけは良いんです。ソシャゲのガチャ、無課金でフィニッシュしてるからね。


「さーて、高級雑貨店というある意味矛盾した偽は何処かな~?」

「矛盾ですか?」

「多分、高級に雑ってついてるからだと思いますよ」

「ピーンポーン。サクラ正解」


割と矛盾してるよね? ね?


「ところで今回は隕石に当たるみたいな確率の幸運で金貨が手に入りましたけど、元々どうやって買い物するつもりだったんですか?」

「ん? 何か手持ちの物売り払おうと思ってた。スマホとか高く売れそうだろ?」


俺はポケットから取り出したスマートフォンを見せる。

高校に入った時に買ってもらった物なので最新機種では無いがまだまだ使える。

もっとも電気の普及していない世界ではすぐに充電が切れると思うけど。

今までは省エネモードと電源を極力入れないで騙し騙しきたがついに10パーセント。

もう少しで動かなくなるとこまで来ているので景気よく売り払おうと思っていたのだが今回は見送りとなった。

死に方がいきなりだった俺がこの世界に持ち込んだのはこのスマホと着ていた制服だけで、服は春間の家に干して置いてきたので手元にあるのはこれだけなのだ。

どこかホッとしているのは元の世界とのつながりを残せて一安心といったところかな。


「アキラさん着きましたよ」


もう戻れない世界への感傷に浸っていると、サクラが声をかけてきた。

顔を上げると目の前には高級そうな外見をした店が建っていた。

看板には『質屋』の文字。

雑貨店じゃないじゃん!


「こういう場所の方が安く売ってるんですよ」

「あ、そうなんだ……。よし行くか!」


心を読んだようなサクラの発言に少し動揺。

それを隠すようにドアに手をかけ勢いよく押した。あ、思ったより重い!

入った店内は小綺麗で商品も見やすく配置されており、カウンター奥には金髪の店主が座っている。

この店主の外見は金髪の胡散臭い人を思い浮かべてくれたら大体合っていると思う。


「いらっしゃいませ~」

「うわぁ……」

「どうされましたぁ?」

「いや……」


想像以上に想像通りの口調だったんで……とは言えんよな。


「あの、双眼鏡を探してまして。望遠鏡とかでもいいんですけど」

「ああ! ならばピッタリの物がありますよ!」


そう言って奥に入っていった店主は手に黒い双眼鏡を持って出て来た。


「コレはバードウオッチングを行っている時に亡くなった方が持ち込んだ者でして。倍率も自由に変更出来て、頑丈、さらに夜間にはライトを点けることが出来たそうです。もっとも最後の機能は電池が切れてもう使えませんが」

「へー。いいね、おいくら?」

「ハイ、金貨3枚となっております」

「おお!ぴったムゥッ!」


余計なこと言おうとしたクリスの口を押える。


「どうされました?」

「ああ、気にせんでください。サクラちょっと待を繋いで」

「ハーイ」

「クリスはちょっとこい」


そう言って店の端に移動する俺と俺に引っ張られるクリス。

口を押えた手を外すと“ぷはぁ”と息を吐いた。


「何するんですか!」

「(馬鹿! 出せると向こうが知ったら値切れないじゃないか!)」

「ええぇ……」


呆れたように先ほどとは違う息を吐くクリス。

なんだよ! 双眼鏡に30万だぞ! 流石にぼったくりだろ!


「そうでもないですよ? 元の世界の品物は高いですから。特にアレはかなり美品だと思いますし」

「(だからって高すぎるわ!)」

「お客様? お話は終わりましたか?」

「うおう! いつの間に!」


いきなり後ろから話しかけられた俺の心臓は驚いて飛び上がる。

ビックリした!

サクラは何を……と思って見るとなんと! 向こうにも同じ顔が!


「双子だったんですか……」

「はい、双子のレフトとライトで街では通っております。そしてお客様をがご入店されたときカウンターにいたのは私でございます」

「そ、そうすか……」


今だ暴れる鼓動を落ち着かせるように手を胸に置く。

胡散臭い顔が二つあると二倍胡散臭い。

するとレフトかライトかは不明だが聞いてきた。


「ところでお客様。こちらの商品、ご購入検討していただけますか?」

「あ、ああ。うんそうだね。もうちょっと安くならない?」


ちぐはぐな答えではあるが言ってやったぞ!


「では! 金貨1枚と言う事で!」

「へ?」



「「ご購入ありがとうございましたー!」」


ステレオな挨拶を背に聞きながら帰り道。

一つ分かったのは胡散臭い顔は並ぶと加法ではなく乗法なるようだ。

見てて倍の倍キツイ。


「それにしてもやられたな」

「あの人たち最初から金貨一枚で売るつもりでしたね」

「もう詐欺では?」


あの店はまさに電光石火。

双子トリックに驚いていると、考える間もなく購入が決まっていた。


別に安くなったから良いんだけどさ!

いいように弄ばれた感がハンパないな!


「でも買えたから良かったでしょう?」

「金貨一枚で高級双眼鏡は良いのか悪いのか?」

「さあ? 双眼鏡何てそうそう買いませんから分かりません」


何処か敗北感漂う帰宅でした。

アキラ初の敗北?

次回は金曜日更新予定。

話が進まね~。


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