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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
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3-17 買い物に行こう!

土土土~♪ 土いじり~♪(ペドロ)

なんだその歌?(ベンジャミン)

石の塔から降りるとすでに日が傾きつつあり、今日も1日が終わろうとしている事を実感した。

先ほど石造りの塔から見下ろした街は、やたらと順調に工事が進んでいる。

それにしてもココまで早いとは……ペドロ主体なので早いだろうとは思っていたが、いい意味で誤算である。


「じゃあ、こっちは野郎どもに任せて俺たちは外に行くぞ!」

「どこに行くつもりで?」

「買い物」

「は?」


そう答えるとクリスは豆鉄砲をくらった鳩みたいな顔をした。

鳩の顔なんてまじまじと見た事ないけどな!



俺はクリスとサクラを連れて街にくり出した。

人通りは今のところまばらだが、顔バレしてるメンバーなので全員フードをかぶっている。


「良し! 夕日の綺麗な夕方!」

「そうですね……」

「なんかごめんなさい……」

「いえ、いいんです……」

「どうしたサクラ? 昨日行けなかった買い物だぞ?」

「ええ、ハイ、そうですね……(アキラさんと二人じゃない……)」

「えっと、何で僕は呼ばれたんですか?(絶対デートのつもりだったよサクラさん……)」


微妙な空気を醸し出すサクラとクリスの二人に少しだけ首を傾げるが、まあいいとしよう。

えっと? 一昨日来たんだっけ?

夕日に照らされる通りの店の多くは前に来た時と同じく閉店はしていないようだ

あれ? でもこの前来た服屋は閉まってるな?


「どうしたんだ?」

「どうしました?」

「いや、前来た服屋が閉まっててさ」

「え、ココ『服屋オオタケ』じゃ……」

「うん? そう言う名前なのか? まあいいや、それでここ閉まってんだよ。前はこの時間開いてたよな?」

「アキラさん、一昨日ここに来たのは時間なら2時間くらい前ですよ?」

「あれ? そうだっけ?」

「そうですよ?」


うーむ、記憶があいまいだな。

あれかな? 使った金貨について自己防衛本能で記憶でも飛ばしたか? 高かったみたいだし。ちなみにあの時買った帽子はサクラが嬉しそうに持って帰った。似合っていたので悔いは無いと思うんだけどな……。


「それより、なんで休んでるんだろうな?」

「話を逸らしましたね」

「おう、馬鹿がバレるとカッコ悪いからな! ん? 張り紙がしてあるな」


其処には高級そうなドアには似合わない白い紙が貼られており『臨時休業』の四文字が書かれていた。

逆に理由は特に書かれていない。

普通『盆だから~』とか、『親戚が危篤で~』とか書かないか?


「また買い物するんですか?」

「まっさかー!」


もう金貨は無いのだ。高級店で買い物など出来るか。



「それで何を探してるんですか?」

「そうですね、作業を中断してまで買い物する理由とは?」

「作業?」

「あ、サクラは知らなくてもいい事です」

「?」


今回の作戦はカミル因縁を解消するための物でもあるが、そもそもの発端はサクラをあの変態髪型(アミゴ)から守るためだったので内緒にしている。

特に意味は無いけど、非公認ファンクラブの活動は地下じゃないとね。


「買いたいものがあるんだよ、売ってるかどうか分からないから賭けみたいなものだけど」

「買いたいものですか?」

「そ、あったら便利な物。売っててもあり得なくは無いもの」

「……それって転生前の世界の物ですか?」

「え?!」

「え! ど、どうしました?!」

「いや、大正解……。よくわかったな……」


サクラがまさかの正解をたたき出した。

ヒントはそれなりに出したが良く当てたものだ。


「じゃあ、何を買うんですか?」

「買ってからのお楽しみじゃダメ?」

「金額が分からないのでダメです」

「手分けして探すことも出来ませんしね(あわよくばアキラさんと二人きりに!)」

「手分けはするつもりはないけどね」

「え?!」

「だって別れたらクリスを連れてきた意味がなくなるじゃないか」

「あ、僕護衛で連れてこられたんですか」

「何を今更」


サクラはあの(アミゴ)に狙われているのだ。護衛は必要不可欠だろう?

ところでなぜサクラはあんなに声を上げたのだろうか?

疑問を解消する前に声を上げたサクラは落ち着いたのか話を続けた。


「まあ、いいでしょう……結局買いたいものとは何ですか?」

「買いたいものってのは望遠鏡、遠見筒、双眼鏡、とにかく物理的に遠くが見えるようになるアイテムだ」

「じゃあ、高級な雑貨店でしょうか? 転生前の世界の物は高いですから」

「う、マジか。金貨要るかな?」

「場合によっては」


まいったな、さっきも言ったが手持ちは無いぞ。



高級な雑貨店を目指し通りを歩く俺達。

しかし、さっきと違って人が多くなってきたな。


「きっと仕事が終わったのでは? ちょうどこれ位の時間でしょうから」


そう言った質問をぶつけると響くように答えてくれるサクラ。

ホントに頼もしい存在だ。

先ほどの答えを当てた事とか考えると、基本赤点、危なくなったら赤点回避、と情けない頭をしていたハルマの娘とは思えない聡明さである。


そう考えている間にも通りに人はドンドン増え続ける。

全体的に疲れた表情をしているので、サクラの考えは正解だろう。

広めの通りが若干進みづらくなるほど人が増えた頃、


チャリンッ


と、何かが落ちた音がした。

目を向けると人の足の隙間から見えたのは皮の小袋、紐で口を結んだ巾着の小さいバージョンみたいなものが落ちていた。

誰かの落とし物か?


「どうしました?」

「アキラさん?」


そちらに向かうと後ろから二人がクエスチョンマークを付けながら追いかけてきた。

聞こえなかったのか?


「これ、落とし物だよな?」

「あ、巾着ですね」

「コレが落ちた音が良く聞こえましたね」

「それより中身がどうなのかじゃないか?」


そう言いつつ巾着の紐を緩めると、中から小金色の光が漏れだした。


「え? 金貨?」

「ですね……」


巾着の中にはぎっしりと金貨が詰まっていた。

なるほどこれが落ちたから綺麗な音が聞こえたわけか! 納得!


「クリス金貨って元の世界換算でどのくらいの価値?」

「えーっと……地域差がありますが、大体10万から100万くらいだった気がしますね」

「高いな」

「ええ、それをポンと払ったのがあなたです」


うん、さすがに金額聞いたら反省します。


「何で私に聞いてくれないんですか?」


そう言って話に割り込んできたのはサクラである。若干頬を膨らませ可愛らしい。

でも、サクラは転生後(こっち)の世界生まれだから転生前(あっち)の世界の事を聞かれても困るだろう?


「ところでどうする? ネコババするにしたってこんな金額絶対トラブルの元だぞ」

「こういう場合は交番でしょうね」

「交番ってどこ?」


そう聞くと同時に通りに声が響いた。ビックリするくらいイケメンボイスである。


「ああ!! あった!! 君たちが拾ってくれたのか!!」


響いたイケボの方を向くと、これまたイケメンが立っていた。

中肉中背だがレオンほどでは無いがなかなか背が高い、少なくとも俺よりは高い。

髪の色は艶やかな金髪、髪の下ではイケメンな顔が人の良さそうな笑みを浮かべている。

うわぁ、引くほどイケメンだぁ。



アキラが引くほどのイケメンに遭遇している時。通りに面した路地の陰に佇むようにアキラを見張る者が居た。

その者は驚くことにただ立っているだけにも関わらず、誰にも気づかれることなくそこに佇んでいた。

気配を消し、景色に溶け込み、意識から消える。

隠遁術と呼ばれる技術ではあるが、ココまで『完璧』にこなす者は少ないだろう。


「目標確認。なかなか厄介なのに目を付けられるな。さて“奴”はどう動く?」


ほくそ笑むのか、警戒するのか、その言葉から感じ取ることは出来ない。

しかし、これだけの技術を持つ者が、その手に持った剣で狙いを外すとは思えない。

彼は一体何者なのだろうか?

一体誰なんだ! ヒントは『  』

次回は月曜日更新予定!

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