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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
64/111

3-11 何の取り留めのない話

うん?やっぱり向こうかな?(ダグラス)

「アキラ、眠いから寝ていい?」

「お前寝ずの番の意味分ってる?」

「ネズミ?」

「…寝ずとはそのままの意味で“寝ることをしない”と言う事だ。“しない”を“ず”と言いかえるのが日本風な」

「グゥ」

「寝んな!」


 深夜12時

 サクラの宿の前の路地の一つにて、俺たちの素晴らしくどうでもいい会話。

 レオンは眠たい眠たいと文句を言うが、こいつが眠ったらここの戦力は0に等しくなるので無理やりでも起こしておく。

 というのも成人男性の戦力を1としたとき、俺の戦力はどれだけ贔屓目に見ても1.2人分くらい、むしろこの世界の人間は基本的に身体能力が高いので下手したらもっと下だろう。

 ではレオンの戦力はというと……測定不能。これは戦力の比較ができるほどの強者がうちには居ないせいだ。

 ベンジャミンは大体30、ガラがそれより上なので40くらい、クリスは『激怒』を使い暴走すれば300は堅いが、そうでないならベンジャミンと同じか少し下。

 クリスが『激怒』を使い理性を保てる短い時間ならレオンの攻撃を躱すことはギリギリ出来るのだが、攻撃に移れるほどじゃないのでこれは戦闘とは言えない。むしろ一方的なリンチに近いだろう。

 そんな理由でレオンの戦力は不明、ランクなら最低でも災害級(ハザード)とのこと。

 ちなみに、カミルは自己申告だが俺より間違いなく弱いとのことで1とした。

 が、箱庭ならば話は違うらしいのである意味こいつもレオンと同じく測定不能ではあるが、仮定なので意味の無い話だ。


 つまりここの戦力は、

 俺:1.2 カミル:1 レオン:最低4桁

 という非常に偏った戦力図なのだ。

 酷い構成だ。パーセントに表すと俺とカミルはもはやその他で括っても0.1%も取れないかもしれない。

 そんなチーム分けである。

 でも仕方なかったんだ、レオンは俺が引き入れたので俺の方で制御しなくてはいけないし、カミルに至ってはむしろ“何でクジ引き当ててんだよ”という気分であるが、この段階でボロを出されると面倒くさいのでウチで引き取ったのだ。

 もうちょっとバランス考えて武闘派のメンバー引き込んでも良かったかな……、そう思う今日この頃。


「ヘクショ」

「なんだその中途半端なくしゃみは」

「昔からこんな感じなんですよ……それより2月の寒空の中、外套一枚羽織るだけで見回りって頭おかしくないですか?」

「“見回り”じゃなくて“見張り”な。歩き回ってないし。まあ、確かに寒いけど、俺はこの寒さの中石畳の上で眠ろうとするやつの方がおかしいと思うよ」

「眠い……」

「火でも焚くか」

「街中の路地でそんなことしたら怒られますよ」

「明日はもっと怒られることするんだから気にするな」

「気にしますよ……って、え? 何をするつもりですか?」

「あの髪型変(アミゴ)はいじめっ子なんだろ? だったらそれ相応の刑をね」

「まあ、いじめられてた側としては血とかドバドバ出ない限りは応援しますよ」

「心配すんなよ、殺したりはしないからさ」

「……うん、殺したりはって時点でいい予感がしない」

「グゥゥ」

「寝るなーー!レオーン!お前に寝られると困んだよー!」


 くだらない会話と共に夜は更けていく。


 ◇


 カミルとの会話も飽きてきたころ。

 それらは突然強襲した。


「うぇぇぇい!元気してる!」

「おう!そっちはどうだおっさん!」

「おっさんじゃねくてお兄さんでしょがーー!」

「そりゃそうだ! 申し訳ないお兄さん!」

「わからばよろしよろしーー!」


 路地で火を焚いていると酔っ払いのおっさんが大量に集まってきた。

 明かりに集まるとは……アレの様だ。近づきすぎるなよ?燃えるのは諺だけでいい。


「うわぁ……どうしますか?」

「どうもしないよ? 適当に話を返しとけよ」

「グウウウ」

「レオンが寝ました」

「もういいや、起こすの面倒だし」


 俺は基本的に酒飲みは嫌いじゃない。

 というのも酒を飲んでいると人間気が大きくなって簡単に小遣いをくれるのだ。

 昔親戚に焚かりまくったものだ。


「お兄さんあんまり飲みすぎるなよ?」

「馬鹿やろー!これが飲まずにやってられるか!」

「何かあったのか?」

「現場監督がへんどうなんだよ!」

「ほうほう、どこが面倒なんだ?」

「全部だよ全部!口はくさい、鼻も臭い、耳も臭い!」

「そうかそうか大変だったなー」

「おう!兄ちゃんいっほに飲もう!」

「俺は女子から以外はノーサンキュー」

「そりゃそうだ!あははははは!」


 焚き火に集まるおっさんたちの大半は日雇い労働者らしく、やれ現場がキツイだの、やれ上司が臭いだの、言いたい放題だ。

 それを聞いてるだけでもなかなか楽しい。

 ちなみに一番面白かったのは上司が禿げでそのくせ仕事をさぼったらものすごく怒るという全く禿げ関係ない話だった。このおっさんは言葉が上手いのか話は無茶苦茶だがなかなか引き込まれる話し方をした。

 結局、酒のみのおっさんたちは日が上り空が明るくなってきてから解散した。

 レオンはずっと寝てた。

 カミルはずっとおっさんの話しを律義に聞いていた。



 ◇


「さーてさてさて、皆さん元気そうで何より何より」

「昨日の見張りで風邪ひきかけたヤツがいるんですが」

「名誉の負傷だ、あとで褒美として金一封を贈呈する」

「おお!」

「まあ、今は無いんだけどね」

「おお…」

「アキラさん話を始めてください」

「ヘイヘイ」


 箱庭から帰還3日目

 俺は見張りから帰るとテントを数個組み合わせた大型テントに野郎どもを招集した。

 招集内容は今後の事について。


「あーこれからの事についてだが、ぶっちゃけ決まってることは少ない。現状俺たちは取得無しの浮浪者だ」

「ええー」

「というわけでこれからの目的のため隊を二つに分ける。一つはこのテティスの街でどうにか稼ぎ口を見つけるグループ、もう一つは王都アーサーに向かうグループだ」

「しつもーん」

「はいどうぞ、名も知らぬ誰か」

「デイビットです。王都に向かうグループは何をしに行くんだ?」

「えーと昨日聞いた話では王都で尋問というか質問というか、まあ“神隠し”関連の事を聞かれる。その代わり情報料として金一封もらえるらしい。この金一封はかなりお金額になるのでもらいに行こうってワケ。分かったかなデイビッド君」

「デイビットです」


 昨日聞いた話だと新聞記者とか雑誌記者とかも取材をしに来る可能性は大いにあるらしいが、それらよりも早く情報を掴みたいから、というのが王都への召集理由だったりする。

 次に誰かが声を上げた。


「じゃあ誰が行くんだよ?」

「確かに王都って遠いよな」

「そうなのか?」

「そうだよ、ここからなら1週間はかかるはずだ」

「徒歩?」

「馬鹿! 馬車だよ!」


 ザワザワと小さい声がテントに続く。

 ひそひそ話を切るように手を数度打って視線を俺に向けさせる。


「いいか、王都行きのメンバーはこれから選抜する。ちなみに確定してるのはベンジャミンとガラな」

「え! 俺聞いてない! つーか尋問とか耐えられる気がしない!」

「……」

「心配するな、王都に馬車で行って帰ってくるだけだ。尋問される事以外はのんびりしとけ」

「でも王都に行く途中は肉食獣とか出るんじゃ……」

「そのためのベンジャミンだろ? 尋問だけなら行くのはガラと少しのメンバーだけで良い」

「あーボディーガード役ね。うん、それなら気が楽だ」

「(兄さん言外に喋るなって言われたこと気づいてるのかな?)」

「女子からも選抜してるはずだから某有名映画みたいにラブロマンスでもやればいいさ。ちなみに馬車は一台予定です!」

「「「「うおおおおおおお!!」」」」


 その言葉を聞いて会場のボルテージは一気にMAXまで駆け上がった。

 うんうん、テンションが上がったようで何より何より。でも同意が無きゃ手を出すのは厳禁だぞ!

 釘を刺して王都組の話を終わる。

 次はテティス組の話だ。


「テティス組は金策を模索する。以上」

「早すぎませんか?」

「これ以上何を言えと?」


 王都組は目標が決まっているのでまだ分かりやすいが、こちらは全くの無計画だ。

 どうやって1000人ほどの人間を賄うほどの金を用意するかなど分かるわけないだろう。

 錬金術師じゃあるまいし金はポンポン沸いてこないのだから。『錬金術師』と言う二つ名はありそうだけど。

 とりあえず役場では日雇い労働を進められた。

 実は現在テティスは街の門の外にもう一つ壁を立てる計画があるらしく、木材石材運び手作り手、足りていないらしい。

 じゃあうちの奴らを行かせましょう、少なくとも手が多すぎて困ることは無いだろうし。

 “北部から来る怪物はどうすんのと”疑問に思ったが、その怪物はここ数年なぜか出現していないらしい。

 800年経って全滅したか、どこか別の場所に住処を移したかは謎。

 居ないなら居ないうちに領土を広げてしまおうと考える貪欲さが人間臭いものだ。


 というわけでテティス組は日雇い労働でその日暮らしである。

 日本人としてはもう少し安定性が欲しいものだが、こいつらは別に気にしてない。

 こちらの世界では別に珍しい事ではないらしい。


「じゃあ王都行きの選抜は明日。出発は3日後な。昨日見たくクジで決めるから心の準備はしとけよ」

「おお!」


 キツイ日雇い労働と、ラブロマンス付き(努力次第)王都出張、どっちがいいか聞くのは野暮だろう。

 明日の自分の運の良さを祈ってろ。


 ◇


 今後の話が終わった。俺としてはここからが本番である。


「……ところで話を変えよう。お前たちはサクラを知ってるか」

「?」

「知ってるぜ」

「当たり前だろ?」

「俺たちのアイドルだ」

「村総合でもトップを独走する天使だ」

「美少女という概念の具現化だ」

「心のオアシス」

「命の清涼剤」


 男衆から口々につぶやかれる言葉はどれもこれも重い。

 サクラに聞かせたら感情の分からないもの凄い顔しそうだ。多分それでもかわいいんだろうけど。

 でも話の核はそこじゃない。


「OKお前たちの気もちは良く分かった。そこで聞きたい、彼女に手を出す輩は許せるか?」

「許せない」

「絶対に許さない」

「殺す」

「確実に殺す」

「生きて返さない」

「むしろ生き返らしてもう一度殺す」


 質問の答えにものすごい怨念を感じる。

 どいつもこいつもいい感じに殺意を秘めている。

 ところで、どうしてその殺意を俺に向けるの?

 まあ、これなら大丈夫か。


「そうだ、お前たちの言う通り我らがアイドルに手を出そうとしている者には天誅を下さなければならない」

「おう」

「そして今回そのような輩が現れた!」

「!」

「しかも気味の悪い恰好をした勘違いイケメンだ!」

「!!」

「しかも金持ちだ!」

「!!!」


 俺の言葉に反応する野郎ども。

 会場は異様な雰囲気を醸し出し始めた。

 俺はさらに扇動する。


「どうだお前たち! 俺たちのアイドルを守りたくはないか!」

「おう!」

「ぶっちゃけイケメンはむかつかないか!」

「おう!!」

「正直金持ちってだけで腹立つだろ!」

「おう!!!」

「良し! 俺たちで俺たちのアイドルを守るぞ!!!」

「おおおおお!!!」


 会場の空気は一体となった!

 覚悟しろ! キモ髪型空気()読めない格好変態カ()ラーナメクジ喋り屑!()


「やっぱりするんですね……」

「心配するな、軽い地獄を見てもらうだけだよ」

「軽くても地獄は地獄ですよ」


 会場を鼻息荒く出ていく野郎どもの後姿を見送りながら、クリスはつぶやいた。

話の内容がまとまらないままフィニッシュ

このタイミングで週4終わるのは心苦しいのですが……。

次回は金曜日更新予定。

水曜日どうするかな……。

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