3-9 まずは泣かせよう
気分がいいな!(アキラ・トコバ)
「ワハハハハ、いやースッキリした」
「ホントですねー。なんだか悩んでいたのが馬鹿らしくなるくらいでしたよ」
「ちなみに何で悩んでたの?」
「あ、あー、それより役場はどんなご飯を支給してくれるんですかね?」
「話のそらし方が下手だなー、って、うわぁ」
カミルと共に役場を駆け抜け、裏の広場にやってきたが思わず声が漏れてしまった。
役場裏の大広場には俺達箱庭組が占拠していると言ってもいいほどに人が詰まっている。
広場といってもサッカーコート2面分ほどの土地である、ここだけ某有名同人販売イベントの如く人だらけだ。まあ、俺は行ったことないから分からんが多分似たような感じだろう。
………しかし困ったな、これじゃあどこに誰がいるか分からん。
サクラたち女性陣には注意喚起を、ベンジャミンたち野郎どもには作戦会議を行いたかったのだが………。
そう思った時、少し先に目立つ男を発見した。
レオンではない、アイツを探す事なら簡単だ。『天眼』で上から見ればいい、あそこまで目立つ髪の色をしてる人間は他に居ない。
今回見つけたのはこういう状況ではレオンより目立つ男である。
すなわち………
「おーい!ダーニエール!!」
「んれ?アキラさーんどうしましたー」
身長195㎝以上、こと身長に置いてはレオンを超える『射線』ダニエル・ハート君である!
彼の身長は箱庭組でも随一の高さである!
ちなみに元一番はレオンに壁のシミにされたブッチャーである!
「ダニエール!ベンジャミン、クリス、後は……一応デニム爺さんとガラも呼んでくれー!」
「ハイハイハーイ!ベンジャミーーン!クリ――ス!爺―!ガラ―!アキラさんが呼んでまーす!こっち来てくださーい!」
俺の頼みを快諾してくれたダニエルはベンジャミンたちに高い位置から呼びかける。
さてアイツらは見つかったかな?
◇
「なんだよ話って」
「そう言うセリフは呼ばれてスグきた人間が言うものだ」
結論を言うと全員はすぐに集まらなかった。
正しくはベンジャミンだけ遅かった。
他のメンバーは集合をかけてから10分以内に集まったのに、こいつは1時間後に来ると言う社長出勤である。
しかも手には食い物持って悠々と歩いてきやがった。つーかその手に持ってる薄い赤黄色をした見たこと無い食い物は何だ。
「ああ、イナナだそうだ、この辺の特産品のフルーツらしいぞ。向こうで配ってたから後で取ってきてやるよ」
「ありがとう!でも今度からはさっさと来てね!」
せめて早く来る努力はして欲しかったところ。
お前だけ何で縁日みたいに両手に食い物抱えてんだよ。
お前を待ってたせいで俺とカミルは晩飯食い損ねたんですけど!
「怒るなよ、俺のやるから」
「当たり前だ!」
そう言ってベンジャミンから食い物を徴収し齧り付く。
んーすっぱあまい味! 冷えてたら多分うまいだろうけど、ベンジャミンが持ってたからか微妙に人肌の温度に近く非常にコメントしづらい味になっている。
後でカミルにもやろう。俺と同じく微妙な気分になるがいい。
「それで? 結局話ってなんだよ」
「ああ、さっき役場の職員を泣かせたんだけど」
「まってください、何でいきなりそんなことを?」
俺の説明にクリスから待ったがかかった。
うーんどう説明したものか………。
とりあえずあの髪半棘がサクラに手を出そうとしてるってところからかな?
いやそれよりも、
「カミル、結局あの黄緑半とはどういう関係なんだよ」
「え、今その話を振るんですか」
「だって今くらいしかタイミング無いじゃん」
「いや、まあ、そうでしょうけど………」
言いよどむカミルだが、正直そう言うのは良いのでさっさと話してほしい。
時間もないので出来れば簡潔に。
「えっとですね、彼…アキラさんが泣かしたアミゴ君とは5歳の時、家の近所の空き地で会ったことが始まりです。それからしばらくは仲が良かったんですけど、アミゴ君はこのテティスの街を代々牛耳る家の一人息子で、そのせいか彼は昔から偉そうで、ガキ大将気質で、人を虐めることが大好きだったんです」
「はーん」
「それを見せられるのが嫌で僕は彼から離れたんですけどそれが気に入らなかったのか今度は僕が虐めの対象になって、子供ながらに酷いことをされました…」
「へーん」
「それから2年くらい虐められ続けたんですが。両親が事故で亡くなったことでおばあちゃんの家に引っ越して彼との交流は途切れました。両親が死んでしまった事は悲しかったですがその一点だけは都合が良かったです」
「フーン」
「それからしばらく僕はアミゴ君と会う事は無かったんですが、新聞社で働き始めてから少しして役場に取材に許可を取りに行ったんですが。その時役場で働いている彼と会ってしまいまして………。現在に至ると言ったところでしょうか」
「ほーん、お前って新聞社で働いてたんだな」
「僕の独白を聞いて感想はそれですか!」
「だってお前の過去なんて興味ねーもん」
「じゃあなぜ言わせたんだ!」
「話が進まないから仕方なくだよ」
カミルの文句をバッサリと切り捨て話を続けよう。
「まあ、そんな感じの馬鹿が絡んできたから迎撃として仕方なく泣かせたんだ。事の顛末は分かったか?」
「何で泣かせるまで行ったかは分かりませんが一応理解はしました」
「それで、後で謝りに行くのについてきて欲しいと言う事かの?」
「いやもう何回か泣かしとこうかと思うから手伝って」
「「どうしてそうなる!!」」
「え?」
俺の言葉に食いつくクリスと爺さん。
そう言えばまだ塵がサクラに手を出そうとしてる事を放してなかったな。
◇
「えーー言いたいことは理解しました。泣かすかどうかはともかく彼女には近づかないように手を回しましょう」
「代々街を牛耳るほどの家なら自分の領地の難民を手籠めにすることくらいなら普通にできるからの」
「うわぁ腐ってんな、さすが貴族。ここまで物語通りだと逆に感心するな」
「いや、アミゴ君は貴族階級にはいませんよ?」
「ん、どういう事?」
「王国で在地貴族はおらんよ。王侯では中央で役人か軍人の上層部を代々継承する家の事を貴族というのじゃ」
「帝国にはいるみたいですけど。あそこも数は3家だけですし、あまり力は強くないですね」
「へー、ガッテン」
「何ですかそれ?」
「特に意味は無い」
へー領地で腐敗した貴族って物語では基本だけどこの世界にはいないのか。
それでも、あのミドリムシ(アミゴ)それなりに権力持ってたのか……。
だから役場であんな格好を………いやそれでもアレは無いだろ、誰か注意しろよ。
が、逆に誰もしないのが家の権力の大きさを表してるのかもな。
うーん面倒なの相手にしたな。
だが泣かせるのは確定。
別にカミルの敵討ちはどうでもいいが、我らのアイドルであるサクラに陸貝類がモーションを掛けようとした時点で有罪だ。
さて、どの手段が良いかな?
短めの投稿で次回に備えるスタイル(嘘)
でも加筆はするかも。
次回は日曜日更新予定。




