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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
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3-6 帰還2日目朝

おはよーー!(レオン・ハザード)

「あぁぁぁさぁぁぁ!」

「……うわぁ斬新な挨拶、でも眠いからお休み」

「いや起きてください、会議室占領してるんですから」


 朝っぱらからレオンの前衛的な挨拶(ただの大声)でたたき起こされる。

 昨夜は会議用のテントで寝た。

 俺たちはテントを確保してからすぐに会議を行ったため、野郎を限界まで詰め込んだテントか2月の寒空の下に放り出されるという勝っても負けてもどっちも地獄のジャンケンに参加せずにすんだ。

 会議に参加して良かったです。

 で、昨日の会議で物事は進展したようなしてないような状況だ。


 まずカミル、こいつは野郎どもに混ぜる。タイミングを見て告白するかどうかは決めるがとりあえずは野郎どもと共同生活させることにした。

 隔離しても目立つのと今更一人増えても気付かないだろという考えだ、馬鹿ばっかだし多分大丈夫。

 それに元々東西の村を合併してから1週間ほどしかたってない無いのだ、1000人近い人間を把握できるわけがない、馬鹿ばっかだし。

 結論:馬鹿ばっか


 次、俺たちの状況、神隠しからの1000人以上の人間が帰還したので少なくも大騒ぎは必須。

 カバーストーリーは

『時空の狭間に取り込まれて小さな孤島に飛ばされた』

『そこで全員で共同生活を行っていた』

『無人島生活は食べる物には困らなかった』

『そして最近空間に不安定だが大きな裂け目が出来ていたのでそこを通った』

『通ったらなぜか裂け目は消えた』

『記憶は不安定な時空を超えた影響か乱れて生活の事や場所の事を思い出せない奴らが大半』

『俺達幹部組は二つ名の影響なのか意思の強さなのか不明だが覚えてることは多い』

 ……まあ、ざっくりこんな感じだ。

 このカバーストーリーの利点は二つ。

 一つはこの世界は未開拓のフロンティアだらけであると言う事。

 800年の歴史があるペンドラゴン王国、だがそれだけの歴史がある大国がありながらこの大陸では、南方は蛮族の影響で開拓できず、中央と東方を隔てる大山脈は大きすぎて登頂した者はいない、北方はどういうわけかその領土の全てが百数十m持ち上がり断裂、さらにその上は怪物を生みだす呪われた地で誰も寄り付かない状況。

 800年かけてまともに開拓できたのが中央と西方だけである。

 そんな状況で大陸以外のどこにどんな島が有るかなどすべて把握している奴は間違いなくいない。

 ついでに時空の裂け目によって飛ばされたら五大世界のどこに出てもおかしくないので、別の世界に飛ばされても全く不自然ではないという言い訳も出来る。

 つまり非常に都合がいいのだ。


 しかしこの非常に都合の良い事が信じられるかどうかは分からないので利点二つ目。

『記憶が無いので分かりません作戦!』である。

 この世界で時空を超えると記憶障害が起きることは間々あるらしく、これはどんな強者でも起こりうる、さらに空間が不安定だと記憶の欠如は大きくなる。

 このことで痛い所を突っ込まれたら、『覚えてない』『知らない』『記憶にない』という魔法の言葉を言い張ることが出来るのだ。作戦モデルは政治家。

 記憶を持っていると言う設定の俺達が矢面に立つことで馬鹿どもが口を滑らせるという事故も未然に防げるので一石二鳥!

 現在、馬鹿どもには何か聞かれたら『記憶にございません、その話は担当の者にお願いします』と無感情で言えるように訓練を行っている。

 街の住民が来るまでには終わらないだろうが、元々初期は俺たちだけで凌ぎきる予定なので問題ない。混乱に乗じて準備を整えるのだ!

 結論:ご都合主義全開、しかして筋は通る……はず


 最後、白色美人、これは放置。

 まず気絶から起きてないのでどうしようもできないのだ。

 とりあえず俺たちが保護したがこれからどうするかは彼女が起きてからの話になるだろう。

 ちなみにこの議題は一番早く話が終わったが、一番俺の胃を悪い意味で刺激した。

 ガラは興味なさげだがそれ以外はニヤニヤニタニタしやがって。

 地味な嫌がらせでもしてやろうか……とりあえず食事に何か仕込むか…何が良いかな? 辛味甘味苦味渋味、箱庭で採取した植物は種類豊富で大概の調味料は手元にあるのでやりたい放題だ。

 さらに、今までのカミルの話が本当なら箱庭の性質を使って面白いことが出来るかもしれない。

 成功したら地獄を見せてやる。こうご期待だ。

 結論:うらみはらさでおくべきか~


「あー、明後日だるいよな」

「同意はしますがちゃんとしてください。あの兄さんですらちゃんと起きてるんですよ?」

「アレは子供だろ?子供は早起きだろ?そう言うものだろ?」

「まあ、それも真実の一つでしょうが」

「おい聞こえてんぞ!」


 朝っぱらからリハビリと称して全力スパーリングする元気いっぱいの人間は子供か馬鹿だけだろ、思いっきり偏見だけど。

 そしてどっちにも当てはまるベンジャミンは朝から元気なのは当たり前のことだ。

 それにしてもアイツ今いくつなのかね?


「兄さんは今年で、えーと、箱庭で僕らは7年経ってるから……29ですね」

「ゴフッ」


 驚きで口に含んだ水を吹きかけた。

 アイツそんなに年食ってんの!

 つーかそれだと17で転生して箱庭で2年経った俺の10年上になるんですけど!


「じゃあクリスは?」

「僕は兄さんと4つ違いで25歳……25かぁ……年を取るって予想以上にキツイものがありますね」

「じゃあクリスは俺の6つ上か」

「え?年下だったんですか?」

「みたいだな~、アハハハハ。どうする?敬語でも使おうか?」

「やめてください。今更ですし、デニム爺さんにも使ってないでしょう。それに肉体年齢も精神年齢も僕は18ですから」

「じゃあ俺は17歳ですか」

「実際とそんなに変わらなくていいですね」

「そうかね?お前らも利点はあると思うよ?」

「例えばどんな?」

「成人コーナーにすぐ入れるな、後は寿命最長記録でも狙ったら?」

「微妙すぎる利点ですね。それに後者はどっちにしろ無理でしょう、100年200年普通に生きる人間がいる世界で7年のアドバンテージがどれだけ意味があります?」

「アハハ、そりゃそうだ」

「お、何の話?」


軽口を叩きあっていると珍しいやつが会話に入ってきた。


「レオン、珍しいなお前が話に入って来るなんて」

「ホントですね、僕的には人と会話することが出来た事が驚きなんですけど」

「話くらい出来るぞ?」

「“話しが通じない”って言ってるんですよ」


そういやレオンは元々話を聞かないキャラだったな。


「ワハハ」

「笑って誤魔化さないでください、君が人を殺したことを僕は覚えてますからね」

「イヤイヤすまん。まあ、俺だって話くらい通じるさ。むしろ話をするのは好きだぞ?話した奴がふざけたこと言ったから殺しただけだ」

「そのむかつくから殺すって考えが分からないんですけど?」

「んだよ、お前だってむかついて“ぶっ殺してやる!”って思った事ないのか?」

「それを実行することがおかしいんですよ」

「むぅ」

「まあまあ、どうでもいいだろ昔の話は。それよりレオンは今いくつ?」


一触即発、とまではいわないが雰囲気が悪かったので無理やり話題を変える。

一応気になってはいたのだ、レオンの歳とはいくつなのか?


「いくつ?歳の話か?俺は20だぞ」

「え、意外。もっといってるかと思った」


レオンは意外なことに見た目通りの年齢であった。

いや“見た目通り”で“意外”は言葉としておかしいか?でももう少しいってるのかと思った。

言動は若い…というか子供のソレなので揺り返しで逆に年を取って見えるのだ。

女性が無理して若い言葉を使い逆に痛々しく見え、相対的に年を取って見える状況……つまり永遠の17歳発言と一緒だな。思いっきり私論だけど。


「んー、でも実際はどうか分からんぞ?母ちゃんが死んでから数えだしたから」

「えっと……それは死んでから20年って事?」

「いや、母ちゃんが死んだのは14年前で、その時俺は6つって聞いてたから大体それくらいって事」

「レオン足し算出来たんですね……」

「お前怒るぞ」

「それでも足し算の概念が分かってることがすごいです、ところで掛け算は分かりますか?」

「バカにすんな!足し算の凄いやつだろ!」

「合ってはいるな」


 やはり残念なレオンの知識を再確認していると俺たちが待ち望んだ時が訪れた。


「おーーーい!街の方から人が来てるぞーーー!」

「よっしゃ! 気合い入れますか!」

「嘘はほどほどでお願いしますよ」

「善処する!」

「腹減ったから屋台?ってやつでお土産?ってやつを買ってきてくれ」

「全員で行くんだよ!」


 軽口を叩きあいながら俺は街民を迎えるために一歩踏みだした。








「………ところで僕らは昨日街に行ってますが顔を覚えられてるのでは?」

「あ」

「それに、昨日高級店に堂々と出入りしましたよね」

「あ」

「買い物も即決でしたし、メンツも目立ちましたし」

「あ」

「早速座礁ですかね」

「……ガラ――!すまんお前が出てーー!!」


 俺は街民から遠ざかるため一歩踏み出した。

短めの投稿で次に備える……つもりです。

次回は月曜日更新予定

リアルの時間よ止まってくれ。

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