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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
58/111

3-5 白色美人、馬鹿話、自爆処理

眠。(レオン・ハザード)

「で、彼女は誰ですか?」

「知らん! 会ったこともない!」

「ホントかの~?浮気をする男は基本そう言うしの~」

「爺ぶっ飛ばすぞ!」


 クリス達が来るまでサクラをどうにか躱していると、空から落ちてきた白色美人(名前不明のため仮称)はそのまま俺の腕の中で眠るように気絶、男の俺が面倒みるのもどうかと思うので現在は女性陣に丸投げしている。

 白い肌に白い髪と人間離れしている容姿で、まさしく人形のような美貌を持つ少女はお姉さま方のハートを易々と打ち抜いたらしく甲斐甲斐しくお世話をされている。

 彼女が俺になぜキスをしようとしたかは不明。寝ぼけて誰かと間違えた説に一票

 後、サクラも俺にキスをしようとした理由も不明。こちらは“開けるな危険!”と俺の勘が言っているので触れてません。


 そして俺は男性陣にやっかみ半分興味半分の尋問もどきを受けている。

 解せぬ。


「第一に俺が誰と付き合おうとお前らには関係ないし何なら浮気にもならん! なんせ女性とお付き合いをしたことなんて無いからな! 前世でも現世でも!」

「最後の言葉は言ってて悲しくならんか?」

「うるせえ! 自覚させんな! その場のテンションで言ってんだよ!

 それよりお前らそろそろ離れろ! これからのこと考えなきゃいけないんだぞ!」

「まあ、アキラの言う事も一理ある」

「一理ではない、全く持って正論だ」


 俺の発言にベンジャミンがなぜか一部だけ同意する。

 同意するなら全部同意しろ面倒くさい、話がややこしくなるだろうが。


「だがアキラ、こうは思わないか? 男女関係でグループは崩壊すると。それは俺たちの前世で数多くのバンドやサークルが証明している真理ではないか?」

「ベンジャミンそれがたとえ真理だとしても、それで、その程度の事で俺たちの絆は崩れるのか?」

「アキラ.........」


 ふざけたこと言ったからふざけたことで返すしただけだというのに、なんで目を潤ませてんだよ、気持ち悪い。

 もうどうでもいいから開放してくれ。

 キャンプファイヤーモドキを燃やして空に上がった白煙だけじゃなく、さっきの白球が放った光のせいでもう見つかるのは確定なんだから、早々に話し合う…もとい話を合わせる必要がある。

 とりあえずカバーストーリーを考えて全員に行き渡らせないといけないだろう?


「何でそんな面倒なことをしなきゃいけないんだよ?」

「馬鹿正直に戦争してましたって言うのかお前は? 大量誘拐犯を匿ってますって言うのかお前は? 時間の流れの違う場所に居ましたって言うのかお前は? そんなことしたらお前は馬鹿正直から正直を抜いてただの馬鹿になるぞ? いいのか? 唯一の利点が死ぬぞ?」

「お前は俺を何だと思っているのんだ?」

「バカ野郎…………おいなんだ、やめろ! 正直に答えたのに何で叩くんだよ!」


 叩いてくるベンジャミンに文句を言いながら俺は冷静に考える。

 頭はクールに、だ。

 とりあえず神隠しをくらっていたことにして、その後の事は何も覚えていないとするのが手っ取り早いよな。でも時間軸はどうするかな……5年以上も年取ってことになるし、時空の狭間辺りを漂ったことにしようかな?

 しかし俺はその時大きな間違いを犯したことに気づいていなかった。


 ◇


「あの……大量誘拐犯を匿ってるとはどういうことですか?」


 俺を囲む野郎どもの一人がそう言った。


「え? 俺そんな事言ったっけ?」

「言いました」


 そう言われて俺はデニム爺さんの方を見る。一応ホントかどうかの確認のために。

 そして顔を俯き手で額を押さえるその姿はどう見ても“私は頭が痛いです”のポーズ。

 なるほど。

 あーコレはやっちゃたな。

 口が滑ったと言えばいいのか? ベンジャミンたち作戦上位陣クラスしか知らない情報をうっかりばらしてしまったようだ。

 どうしよ?

 挽回できるかな?


「まさか…」

「本当に………」

「どういうことだ………」


 ザワザワと野郎どもが蠢く。

 最初は小さく、だがだんだんと大きくなっていく声。

 そんな中誰かが気づいた。


「オイ、幹部たちは驚いてないぞ………」

「本当だ、もしかして知っていたのか………」


 うん、マズいね。

 誰かの発言でこの事実を聞いても動じない幹部たち注目が集まる。

 ベンジャミンが“エ、エー、ナンダッテー”とか白々しい事を言ってるがもう遅いだろう。馬鹿はほっとく。

 それよりも流れが悪い。

 知っていて秘密にしていた幹部たちに村人たちが懐疑の視線を向けている。

 このままだと村人と幹部の間に軋轢が生まれるかもしれない。


「あー…お前ら落ち着け」

「落ち着けるわけないでしょう!」


 俺のセリフに大げさに反応する。

 それを皮切りに野郎どもが騒ぎ出した。


「そうだ!どうしてこんな大事な事を黙ってたんだ!」

「アキラはどうしてこのことを俺たちに言わなかったんだ!」

「幹部たちも驚いてない!グルなんだろう!」


 声は大きく、荒野に響く。

 隣で白色美人を介護している女性陣も何事かとこちらを伺っているようだ。

 そして誰かが確信に触れた。


「どういうことですか!大量誘拐犯って!説明を!」

「いやしかし…」


 この瞬間、下手に出てしまった俺をぶん殴りたい。

 これでは群衆はさらに活気づく。

 無理やりでも、虚勢でも、内心悪いと思っていても、堂々とした態度をする必要があった。

 そして俺の予想通り彼らの大きかった声はさらに大きくなる。


 あーもう無理だー、逃げよう、出来るだけ遠くに逃げよう。

 こんな状況で統率とかできるわけがない。

 その後はたぶん、


 こいつらは見つかる。

 ↓

 神隠し事件の被害者だと分かる。

 ↓

 もちろん大事件になる。

 ↓

 当然ハルマの耳にも届く。

 ↓

 俺はハルマに見つかりぶちのめされる。

 Q.E.D.(証明終了)


 俺の脳内でここに居た場合の最悪のシュミレーションがはじき出された。

 最悪だ、逃げるしかない。

 畜生、金貨使うんじゃなかったかな~でも後悔はしてなんだよな~。

 俺の現実逃避をよそに言葉はヒートアップしていく。


「オイどいつだ!」

「そんな奴はぶっ飛ばしてやる!」


 そしてついに誰かが確信に触れた。


「つまり……つまり!俺たちの中に誘拐犯がいるってことか!」

「いやそう言うわけ……ん?」


 今なんて言った?


 ◇


 今コイツなんて言った?

 “俺たちの中に誘拐犯がいる”って言ったのか?

 白球騒動のおかげで有耶無耶になったがカミルは現在レオンと共におり少し離れた所でこちらを見ている。

 ?どういうことだ?なんでそうなる?


 俺の疑問は解消されないがそれでも加速する野郎ども。


「誰だ出てこい!」

「そうだ!出てこい!」

「俺たちはお前を裏切らないぞ!(グスン)」

「一緒に戦争を乗り越えた仲だろうが!(グスッ)」

「そうだそうだ!(グスッグスッ)」


 感情をこめすぎて涙目になっている奴まで出てくる始末。

 ………あーそうか、こいつらは自分たちが誘拐された側だと思っていないのか。

 そもそも神隠し事件という名前は当たり前だが事件の後、つまり誘拐(箱庭ガチャ)された後に付いた名前だ。

 それで誘拐されたこいつらはその名前を知るわけがない。

 事件が表面化してからガチャられた奴もいるだろうが、そう言う奴は実は少数派だ。

 神隠し事件なんて名前を付けられたビビったカミルが活動を縮小したせいだろう、(事実俺とサクラの後には誰も箱庭に落ちて来ることは無かった)ヤツの言う通りなら多少狂っていたはず、それでも自己保身に走るとはなんとも小物臭い男である。


 で、こいつらは俺のさっきの発言を聞いて“自分たちの中に誘拐犯がいてアキラたち幹部勢が庇っている”と解釈したようだ。

 そして“そいつ(誘拐犯)はアキラ達は信用しても俺たちの事を信用していない”と勝手に妄想を広げているのだ。


 なんと言うか……。

 なんと言うのか………。


 俺は自分でした推理に戸惑いデニム爺さんに視線を送る、すると同じタイミングで爺さんもこちらを見ていた。

 爺さんは笑うような哀れむような表情をしている。多分俺も同じ表情をしているとも思う。

 爺と以心伝心など勘弁願うが今回は仕方ない。

 俺たちは互いにうなずく。


 うん、こいつら脳内お花畑!


 ◇


「そもそも考えてみればバカが統率できる集団など絞られる。下が有能で勝手に動くか、バカと波長の合う馬鹿で全員同じ方向を向いてるか、くらいだろう」

「うるせぇ!誰が馬鹿だ!」


 全く遠慮のない発言をするのは元西村村長ガラである。

 対抗するように吠えるベンジャミンだが、誰も助け船を出さない所を見ると彼のポジションが分かるだろう。


 先ほどの騒動から数十分。

 箱庭から持ってきたテントを立ててその中で会議と称して休憩する俺達。

 メンバーは俺、ベンジャミン、ガラ、クリス、デニム爺さん、後端っこで地面に正座してるカミル。


 レオンは一応会議に誘ったが「ヤ!」の一言共に先に寝た。午後7時に寝るとか小学生か。


 サクラは女性陣主体の白色美人を看病……もとい愛でる会の方に行った。

 眠っているのか気絶しているのか不明な彼女はいつ起きるか分からないので、サクラが付いて起きた時に素早く事情聴取できるようにとのこと。

 事情聴取くらい誰でもできるが男性陣と女性陣のテントはそれなりに離れたところにあるので、采配としては間違ってないだろう。

 彼女たちの体調が著しく悪くなった時くらいしか俺たちはそちらに近づけないのだ。(逆はなぜか許される)


 それにしてもまさか何の躊躇もなくテントの大部分を持っていく女性陣には驚いた。

 おかげで野郎どもはジャンケンで負けたヤツは外で寝ることになった。

 しかしジャンケンで勝ったとしてもテントはぎゅうぎゅう詰め&雑魚寝なので、開放感のある外の方がマシかもしれないのは内緒である。まあ、今2月だから風邪ひくかもしれんけど。

 俺達がいるテントは女性陣から“会議に必要だから”とどうにか勝ち取った戦利品である。

 椅子と机は持ち込みである。


「しかし今回はどうにか言葉で煙に巻いたから良かったが、本格的にカミルはどうするか決めなきゃいけないな」

「ああ、ホント凄かったな、見る見るうちにあいつらを騙す嘘を思いつくんだもの」

「僕的にはそれを躊躇も戸惑いも無く堂々と言い放つ点が恐ろしかったですね」

「ワシはこいつがこの言葉廻しだけで食っていけると今回確信したよ」

「よ、名人芸」「伝統芸能」「詐欺師」

「お前ら後でシッペ5回な」


 酷い言われようだが別に変なことは言ってない。

 カバーストーリーを思いつき、それをすぐさま口に出しただけだ。

 とりあえず「病気の妹が~」「死んでしまった幼馴染との約束が~」みたいなお涙ちょうだいなラストで占めると、野郎どもは泣きながら居もしない自分たちの中の誘拐犯に謝っていた。

 いっそ微笑ましく思えるほどの馬鹿さである。

 そして一大ストーリー『誘拐犯の夢と嘘~彼はなぜ罪を犯さなければいけなかったのか~』が終わった後、俺はテント内で廻しに廻した舌と脳みそを休めているわけである。


 それでもこれは自分で作った山を越えたに過ぎず、後処理とか丸々残っているのである。

 メンド。


「明日くらいかな、街の人間が来るのは」

「早ければ今夜かもの」

「とっとと話を合わして無理のないストーリーを考えないといけませんね」

「良し!まずは俺の意見だが!」

「あーベンジャミンは最後な」

「え?なんで?」

「子守歌にするから。ほらつまんない話って聞いてると眠くなるだろ……って叩くな!叩くな!」


 こうして夜は更けていくのであった。

水曜日は投稿できずに申し訳ありませんでした。

次回は日曜日の予定。

そして来週で週4更新をやめれるといいな。(区切り的な意味で)

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