3-4 親方!空から.........
な、なんで白球が!(ベンジャミン・リンカーン)
(魂力使用開始)
(魂術回路構築開始……成功)
(空間掌握開始……成功)
(境界開放開始……成功)
(境界安定化開始……成功)
(現界開始)
(■■展開……失敗)
(疑似■■展開……成功)
(生命維持能力起動確認)
(生体魂術■重回路構築開始……成功)
(生体魂力過剰供給開始……失敗)
(魂力枯渇)
(予備魂力使用開始)
(魂術回路再接続……失敗)
(魂術回路再接続……失敗)
(魂術回路再接続……成功)
(境界再安定化……失敗)
(境界再安定化……失敗)
(境界再安定化……失敗)
(限界制限突破)
(術者生存機能開始)
(境界閉鎖……失敗)
(境界強制封鎖……失敗)
(空間掌握機能再起動……成功)
(境界強制封鎖……成功)
(■■■現界確認)
(■■■獲得失敗)
(第二境界突破実験……失敗)
◇
空に上がる白煙を追いかけ視線を上にあげた。
空の色は茜色に染まり視界の端では夕闇が迫っていた、はずだ。
だが、今俺の目に前には『白』が広がっている。
強い光は視界を覆いつくし俺達を照らしだす。
夕闇は一瞬のうちに退き世界は『白』に包まれた。
そして………
「な、なんだ!」
光が晴れた後の天高くには、一つの白い球が浮かんでいた。
それは半透明で美しく光り輝いていて、俺がその美しさに見とれていると誰かが叫んだ。
「落ちる!そこから離れろ!」
その声は全くと言っていいほど余裕が無くて、そして俺と数人を残して全員が動き出した。
キャンプファイヤーのように組まれた焚き火を中心に、一斉に離れるように、誰も振り返らず、光から離れるように、夕闇に向かうように、走り出した。
俺はそれを視界の端っこで捕らえていたのだが動けなかった、動かなかったの方が近いのかもしれない。
空に浮かぶその球があまりにも綺麗で、もっと見ていたくて、動かなかったのだ。
そしてその時は来た。
俺にとっては数十秒にも一瞬にも思えたその時は来た。
白い球は墜落した。
俺たちのど真ん中に。
ゴギンッ!
何かが、誰かが、潰れる音がした。
◇
「ヌオオオオオオォォォ!!」
野太い声が荒野に響いた。
誰かが白い球の下で踏ん張っている。
そう、そいつは白い球の下で踏ん張っていたのだ。
四つん這いになりながら、白い球を背中に乗せ、それでも踏ん張っていたのだ。
「おい!なんだこれ!なんだこれ!」
その声には聞き覚えがあった。
というかあんな高さから一瞬で落ちてくる物の下にいて踏ん張れる奴なんて一人しかいない。
そう!我らが最高戦力!
黄金の獅子!
白銀の災害!
金と銀その二つを内包する者!
その名は!
「「「「「「レオン!!」」」」」」
アイツ超がんばってる!
◇
地面が地響きでも上げそうなくらい踏ん張っているレオン。
その背には直径2mくらいの白い球。
………なんと言うかシュールである。
「デーンデンムーシムシカタツームリお前の名前はそろそろ統一せい」
「何の話ですか?」
「アイツら名前が多いんだよ、マイマイ、ツブリ、デデムシ、後は普通にナメクジとも言うな」
「エスカルゴですか?」
「まあ、大体あってるかな?」
背中に白い球体背負ったレオンを見て思い出したのは若き日の記憶。
雨の日にやたら見かけた陸貝類。
お前の目玉はどこにある、でお馴染みのヤツだ。
トウヤに聞いたところ目はやはりあの触覚の先の丸くなっているところであっているようだ。アレを目玉と呼ぶかどうかは知らない。
「どうでもいいからそろそろ助けろ!腕がキツイ!」
「ヘイヘイ」
サクラに無駄知識垂れ流しているとレオンが吠えた。
ヘイヘイ助けますよ助けますよ。
さてどうしたものか?
この球体単純に重いのか妙な圧力でもかかっているのかは不明だが、レオンの四つん這いになった手と足の下の地面にヒビが入っている。
パワーバカの具現化みたいなレオンが抜け出せない所を見ると凄まじい力がかかっている模様。
こういう場合どうするのが正解かな?教えてサクラ!
………しかし帰ってきた答えは予想外だった。
「分かりません」
「え?」
「だから分かりませんよ!白球が落ちてきて生きているだけじゃなくそのまま地面に付けずに耐えることの方がおかしいですもん!」
「で、でも、歴史は長いんだから一人くらい居なかったの?」
「居ませんよ!まず落ちたら潰されて死にますから!」
何それ怖い。
隕石かよ、もしくは落雷かよ。
サクラの口調が示すようにレオンはとんでもない事をやっているようだ。
どうしよう?
「レオンお前何か凄いことやってるみたいだぞ」
「おおぉぉ!任せろぉ!だから早く!」
「そこでどうだろう?お前その球背負って生きるというのは?」
「ふざけんなぁぁ!」
「チッ」
なんだよ。大道芸の一つくらい出来るようになれよ。
しかしレオンの余裕のない口調は確かにきつそうである。
助けるか。
雑に。
「レオンそのままもう少しキープ」
「早く!」
「取り出したるは落っこちてた長めのロープ、この端っこを輪っかにしまして」
「早くしろ!」
「レオンの突っ張る左腕に通し、先ほど作った輪っかに反対側のロープを通します」
「は・や・く!」
「で、引っ張る」
ズル
「あっ」
ギュルルルルルル!!
ドンッッ!!
…
……
………そこからは一瞬過ぎて俺には理解できなかったので憶測で話す。
多分レオン突っ張った腕を外側にズラされて体を左前に倒したんだ。
しかしあの白い球はそのまま下に向おうとする。
それでレオンは押し出されて勢いのまま右後方に弾かれる。
その時白い球の勢いを受けて空中で縦に数回転。(多分これがギュルル音)
そして地面に叩きつけられて“ドンッッ!!”
あ、白い球は逆に全く音を立てずに地面に降りました。
多分そこまで的外れではないと思うけど、実際どう?
「知るか!」
地面に頭から突っ込んだレオンは俺の憶測にそう言った。
◇
「さてさてさて、これはどうしたものか」
地面に首だけで立っているレオンはともかく、俺の目のまえの白球――サクラは白球と言っていたので統一します――はその存在を薄くし始めていた。
元々半透明で中に何か入っているのは確認できたのだが、ここに来て姿形がはっきりしてきた。
「多分人間だよな?」
それは人型の黒い影。
白球の中でうずくまるような形で眠っている。
大きさ的に少なくとも子供ではないと思う。
そしてそれを確認した瞬間、ふわりと白球は消え、ぐらりと体を開くように地面に倒れた。
だから、とっさに手が出てしまったのは仕方が無いのだと主張したい。
相手を確認するヒマなど無かったと主張したい。
手を前に出し、倒れるその体を支えた、その時それが柔らかいことに気づいた。
人間は第二次成長期を過ぎると体に差が出始める。
男性の体は堅く、そして女性の体は、
「柔らかい………」
手を差し込んだのは膝の裏と背中側
つまり、お姫様抱っこ
そして腕の中にいるのは空から降ってきた少女
これは
「“親方!空から女の子が!”現象?」
「何馬鹿な事言ってるんですか!」
馬鹿なこと言ってると後ろからド突かれた。
◇
予想以上に重い一撃はサクラが放ったものである。
「女の子の体に易々と触れるのは感心しません!」
「あ、ハイ」
確かに、女の子の体を不躾に触ったのは悪いと思うけど何でそこまで怒るのさ。
そう思って視線を腕の中の少女に移す。
美人だ。
思わず見とれる美しさだ。
サクラが薄幸美人なら、こちらは白色美人だろうか?
全体的に白いのだ。
肌の色はともかく、その髪も、眉も、唇も、異様に白い。
体つきはしっかりとしているが体は不安になるほど白い。
“アルビノ”という奴だろうか?
その特殊な容姿のため断定はできないが、おそらく俺よりも歳は下、サクラよりは上かな?
そんな事を思っているとその白色美人が目を開けた。
目を開けキョロキョロと周りを見渡す白色美人。
その視線が俺に止まった。
「あ、えーとどうも。いきなりで悪いけど君名前は?」
第一印象は大切です!
まずは自己紹介から!
そう思っての発言だが予想の斜め上の事が起きた。
「やっと会えた.........」
「ハイ?」
白色美人は俺に顔を近づけるといきなり唇を………
チュッ
奪いに来た。
「あーー!」
「アッブね!」
寸でのところで顔をそらしたが、そのせいで頬にキスを貰った。
そうすると白色美人はなぜか“残念”とつぶやいた。
え?
何で俺こんな美人にキス貰ってんの?
しかし予想外はさらに続く!
「ずるいですよ!私も!」
「ハイ?」
今度は後ろから見ていたサクラがなぜか俺の唇を奪いに来た。
「アブ!」
今度は体を引いて躱す。
「何で躱すんですか!」
「いや落ち着け!何でそんな対抗心燃やすの!」
俺とサクラの攻防はクリス達が止めに来るまで続いた。
某映画のセリフですね、タイトル。
次回は水曜日更新....と言いたいですが期待しないでください。
リアルが迫ってきてるのです。




