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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
3章 北方小事
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3-3 目立つパーティー

マスタード……無いの……残念じゃ。(デニム)

「足が……足が……」

「アキラさん、歩くのもままならない状態にまでしなくても」

「肩貸す身に見なってください」

「なんで俺が怒られてんの!」


理不尽!というかそいつは歩かせろ。一応罰として技掛けたんだから。


「それにしても良くあんなに滑らかに技を掛けれましたね。普通はもうちょっとギクシャクすると思うんですけど」

「昔取った杵柄ってやつかな?」

「何ですかそれ?」

「うーん、“昔やったことを体が覚えてる”ってとこかな?」

「いや諺の意味じゃなくて、滑らかに出来た方の理由を聞いたんですけど」

「ああそうゆう事ね、小学生くらいの時にプロレスにハマった時があったんだよ」


三日で飽きたけど。

詳しく言うならハルマが俺より詳しくなったからだけど。

アイツホントすぐ上達するよな、勉強以外。

ま、そこ辺は別にいいか。


それよりも気になることがある。

俺はチラリと視線を横にずらした、その瞬間一斉に人々が顔をそらした。

続けて逆方向、こちらも同上。

なんか…


「………なんか見られてない?」

「そうですね」


疑問をクリスにぶつけると同意が得られた。

そうなのだ、何というか、なんだか街の人の雰囲気が怖いのだ。

遠めから監視するみたいな、檻の中のライオンを見るみたいな。

言葉で表しづらいのだが、とにかく良い意味ではなく注目されている感じだ。

俺ら何かしたっけ?

そう思ってパーティーを見回すと、


サクラ

美少女、それも頭に“絶世の”とか“傾国の”とか付きそうなレベルである。

この世界の美意識は元の世界と同じなので傍から見てもすごくかわいい。ほんと可愛い。どうしてハルマの遺伝子でここまで可愛くなるか分からないくらい可愛い。

でもこっちでは珍しいらしい黒髪だし、ハルマの娘であることは間違いない模様。

ホント親友の娘じゃなきゃアタックかけてたかもね。半月も二人っきりで一つ屋根の下で過ごしたんだし。


クリス

普通、外人顔、というか生まれは確かアメリカとか言ってたので普通。

悪目立ちするほどの容姿ではない。と思う…。

外人の容姿の良し悪しなんてわかるか!


カミル

普通、暗い赤髪、外人顔、以上。


デニム爺さん

爺さん、白髪、以上。爺の容姿の良し悪しなんてわかるか!


レオン

イケメン?少なくとも顔の形は整ってはいるな。

ワイルド系のイケメンだと思えば分かりやすいだろう。

それより目立つのは髪の色だろうな。金と銀のまだらの髪、以前は腰まである長髪だったが現在は短く切り揃えている。

理由はカミルとの作戦に邪魔だったから。

“緑のフードに髪が入りきらない!”と文句言ったらバッサリ切り落とした。本人も邪魔だった模様で軽くなった頭をブンブン回してた、じゃあ何で伸ばしてたんだよ。


普通、クラスで五番目くらいのイケメン。

クラスは男子15人だったので上の下か中の上くらいじゃない?


総評……目立たないヤツは目立たないが、目立つ奴はとことん目立つ(レオン、サクラ)


うーん、どうしたもんだか。

とりあえずレオンはフードで髪隠すか?

サクラは帽子でも深くかぶったら多少マシだろうな。


「レオンパス」

「うぉ?何でフード?」

「お前の髪とか目立つんだよ。かぶって隠してろ」

「えーこれ草臭い」

「我慢しなさい、手持ちソレしかないし。サクラは被って気触るといけないから帽子でもプレゼントするよ。どっかにないかね帽子屋もとい服飾系」

「え、良いんですか!」

「別にいいよ、それより今俺“かぶってかぶれる”って意図せず言ったけど凄くない?」

「(やった!アキラさんからプレゼント!)」


俺のセリフを聞かずに何故か小さくガッツポーズをしているサクラ。

スルーされて若干寂しいがそれを誤魔化すように通りを見回す。

看板を見回して気づいたがこっちの世界の文字はなぜか読めるんだよな~、というか言葉も通じるし。

今までご都合主義としてスルーしてきたけど、そう言えば何でだろうね?


「物知りそうなデニム爺さん、なんで?」

「いきなりなんじゃ」


俺の質問に不機嫌そうに答えるデニム爺さん。

この人は不機嫌そうじゃない表情してる時の方が少ないので気にしません。


「そう言えば“なぜか言葉が通じるな~”って思ってさ、何で?全部日本語じゃあるまいし」

「鏡でも見て発音練習すれば賢い人間ならわかる、それで分からないなら考えても無駄じゃ。流れに身を任せい」


容赦ない一言。

それ馬鹿は考えても無駄って言ってるよね。あ、言ってたな。

それよりもどういう意味かな?デニム爺さんからの挑戦状として考えよう。

“鏡を見て発音練習”………うん、分からん。後で実際にやった方が速そうだな。



「お、ここ帽子とか売ってそうじゃないか?」


そう言って看板に『服のオオヤキ』と書かれた店を指さす。

それを見てデニム爺さんが動きを止めた。


「おいお主、ここは……」

「すみませ~ん」

「話を聞かんかい!」


何か言ってるデニム爺さんを無視し、ドアを開けて入ると服屋特有の香り?というか雰囲気?が漂っている。

中は思った通り帽子を掛けられたマネキンが置いてあった。

それにしても今まで見た店でもトップクラスに入るくらいの店なんですが………。

高級品店とかじゃないよな………。


「いらっしゃいませ~。何かお探しですカッ」


何か奥から出て来た店員さんが変な語尾で固まった。

なんだ今の?まあいいや。


「この子に似合う帽子を頼める?」

「へ?は、ハイ!お任せください!」


不自然なほど元気な挨拶だが、サービス業は元気が一番なので特に変ではないな、空回ってる感はあるけど。

もしかして新人さん?

しかし俺の予想とは反してテキパキと帽子を持ってくる店員さん。

いくつか帽子を試した後サクラは一つの帽子を選んだ。

広い帽子なので顔も隠れやすいだろう。


「これが良いです!」

「良し、じゃあこれで」

「ありがとうございます!金貨五枚になります!」


その瞬間空気が凍り付いた気がした。


「じゃあこれで」

「「「「「「へ?」」」」」」


気がしただけだったようだ。俺が金貨を払うと固まった世界は瞬く間に動き出す。


「ア、アキラさん?どこからそんなお金出したんですか?」

「お主そんなにポンッと出す金額ではないぞ?」

「別にいいって、元々降ってわいたような金だし」


実際手間賃としてもらっただけなのだ。

『怪腕』のグローブ 奴を仕留めた時に手に入った金貨を数枚くすねていただけの事。

この先どうなるか分からない以上予防線として張っていたのだが…もうそこまで心配する必要もないので吐き出しましょう。

美少女が輝くために手間賃を惜しむほど馬鹿じゃない。

アイドルゲームでも課金する人がいるだろ?それに似てる。


そんなこんなで店員さんに金貨を握らせて俺たちは店を出る。

サクラの帽子姿は非常に似合っていて眼福!眼福!良い買い物したね!

皆の態度を見るに多分高かったんだろうけど!

気にしない気にしない!

人生生きやすくするために気にしない!



「はあぁぁ驚いたなぁ、まさかあんな有名人が来るなんて」


アキラたちが去った『服屋オオヤキ』にて

店員のオオヤキ・マサタキは詰まっていた息を吐きだした。

『服屋オオヤキ』は昔この地に転生した初代が建てた店であり、その裁縫の技術やセンスの良さなどが評価されて現在は王都にすら支店を持つ高級品店である。

ここはその本店、本当に金持ちなマダムやジェントルもしくは成金の人間が足しげく通う場所である。

マダムたちは喜びながらそのデザインに目を張り、成金はその値段に目を張る、そんな場所である。

その店に来店したのは現在王国で最も注目されているであろう人物。

彼なら確かに来店してもおかしくはない。


「だからって来るなよぉ……」


頭をカウンターにぶつけるように抱えるその姿は“とにかく疲れた”という印象を持たせた。

彼の心労は現在進行形で加速している。

店内から相手が消えてもそうなのだ、まだ店内にいるときなどこの比ではないくらいに心と胃が痛かった。

どうにか帰ってもらえたが、対応に不自然な点は無かったか?渡した商品に不備は無かったか?と疑問が浮かんでは消えない、残り続ける。

実際無いと信じたい。

少なくとも商品には。

もし怒りを買うのが対応した自分だけならともかく、店までその範囲に入るのは避けたい。

これでも創業から100年近く経つ老舗なのだ、自分の代で終わらせるなど勘弁である。


「今日はもう休業しよう……」


つぶやいた店員は表の営業中の看板を下げる決心をした。

少なくとも今日は他の客に笑顔を振りまける自身は無かった。

一日分の笑顔を使いつくした気分だったから。

そしてそんな彼を責める人間もいないだろう。



「お、見えた見えたあいつら何やってんだ?」

「焚き火?ですかね?」


火が傾きつつある夕暮れ。

俺たちはカミルを連れて村人の元に戻ってきた。

アイツらはどこで見つけたのか枝か何かで焚き火をしているようだ。

だが、


「目立つなって言わなかったっけ?」

「さあ?」


いきなり1000人単位で人間が現れたら不自然だから目立つなって言った気がするんだけどな?

まあ言っても2月である。

これから寒くなるだろうから確かに間違ってはいないが、もうちょっと工夫をして欲しかった。

具体的には火を焚かない、もしくは最小限にする、などである。

なのにこいつら半分宴会してんじゃないかってくらい騒いでいる。

別にいいけど!いいけど!


「オラァッ!お前ら宴会すんなら俺らを待てよ!」

「怒るポイントそこですか!」


そう言いながら俺は宴会場に突進する。

だってハブられるのは嫌だろ?

俺に続くように全員が走り出した。

俺はいち早く突進した先でベンジャミンを見つける。

とりあえず文句だ。


「お前止めろよ!宴会止めろよ!」

「いやぁ帰って来たんだと思うと嬉しくて、ほら半年も居たんだし、誰ともなく、な!」

「この野郎……」


そんな良い笑顔で言われると困るんだが……。

主に時間経過的なことで、半年じゃなくて5年経過してましたってどう言うタイミングで切り出そう?

後カミル、こいつの処遇はマジでどうする?

この宴会をぶち壊したくないな………。


「せめて焚き火は消せ、明かりだけならもうちょっと待ってくれよ。ほら煙でバレるだろ?」

「バレたら不味いのか?」

「そりゃマズいだろ、行方不明者大量発見とか絶対面倒だぞ!ほら消せすぐ消せ」

「分かった分かった」


そう言って離れるベンジャミン。

ホントに分かってんだろうな?

そう重い空を見上げると煙は天高く上がっていた。


「(もう誤魔化すのは無理かもしれん)」


そう思った時、空が、俺の真上が、白く光った。


「は?」

次回のタイトルは有名なあのセリフ。

次回は月曜日更新予定。

さてどうする?どのタイミングで週4更新止める?

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