3-1 初っ端から説明回
痛そ…(クリスチャン・リンカーン)
「死ねぇぇぇぇ!!」
「ぎゃあああああ!!死ぬぅぅ!!」
「あははは!ははあは!あははは!!!」
粛清の掛け声と断末魔の叫びと爆笑の木霊する室内は有り体に言ってしまえばカオスである。
現在、元神カミルはアキラに一つの技を掛けられていた。
その技は人間を殺すことのできる一つの技から派生した技
その技は背中から忍び寄り足を抱え、組み、極める、残酷な技
その技は極まった形状からとある昆虫の名前を関する
その技の名は“スコーピオンデスブロック”
またの名を……
「サソリ固めじゃーーー!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!」
「あははは!!なんだそれ!あはは…あは……ヒュー…ヒュー………」
「ああ!アキラさんレオンが呼吸困難に!」
「知るかーーー!」
………時は数十分前にさかのぼる。
◆
「申し訳ありません!ごめんなさい!すみませんでした!」
カミルは土下座を行いながら思いつく限りの謝罪の言葉をならべる。
顔を上げないのは周りからの視線が怖すぎるからだろう。
「謝罪はもういいからキビキビ吐けや、何でこんなことになってる?」
「そうですよ!2年ってどういうことですか!」
「サクラさんたち何かまだマシでしょう……僕たちは5年以上行方不明になってるはずですよ……」
「ワシなんて普通に死んだと思われとるじゃろうな」
「腹減った、何か食い物無い?」
一名全く関係の無いことを言っているがまあいいだろう。
それよりも今はカミルだ、現時点で俺が考えうる最悪はハルマに見つかり殺されること。
わずか2日間で分かるほどにハルマはサクラを溺愛していた、そして出会った次の日にその娘が行方不明になった、俺と一緒に。
そのことを考えるに俺は次にハルマと顔を合わせた瞬間に問答無用にブチ殺されても仕方がない。いや、仕方なくないけど。
しかし何が怖いってその光景が何の違和感もなく想像できることなんだよな。俺の想像力仕事しすぎです。
土下座をしながらとにかく平謝りを続けるカミルを見ながら思うことは少ない。
というか一つしかない。
「説明はよ」
「ハイ、えーと、何と言いましょうか……、まず僕の二つ名からですかね……」
そう言ってカミルは語りだした。
◇
「まず僕の二つ名は『縮小世界』と言います。
能力は色々とありますが一番の能力は『世界の管理者』です。
この能力は皆さんが先ほどまでいた世界で絶対的な力を持つ能力で、戦いで見せたように地面を隆起させるだけでなく、雨を降らせたり風を吹かせたりと言った気候を操ることもできるので正直あの世界では大抵の奴には負ける気がしません。」
「でも負けたよな」
「アレは相手が規格外すぎます。というかレオンに勝てる存在の方が僕は想像できません。
“世界最強”級の化け物でもどうにかできるのでは?」
何か気になる単語が出たな。
ですが今は勇気のスルー。命には代えられない。
俺は一刻も早くハルマの納得しうる説明を知る必要があるのだ!
あの物陰からハルマが出てくるんじゃないかと思うと気が気でない!
「そんな事はどうでもいいから早く続き」
「えぇ自分で聞いといてそれですか………僕の二つ目の能力は『空間掌握』です。これで箱庭に出したり入れたり出来ます。
問題は僕が入ろうと思ったら箱庭を模した特別な模型を使う必要があるので、他人に使う事を考えると自分自身への自由度は低くなります。帰りも入った所からしか出れないですし。」
そんな語彙力の無い説明の途中でデニム爺さんが手を上げた。
「えっと質問ですか?」
「そうじゃ、どうやってワシらを引き込んだか詳細を聞いてもよいか?」
「おお!確かに木になる!」
どうやって選ぶのかがわかれば、もしかしたらハルマを呼ぶことが出来るかもしれない。
そうすれば俺の心臓にも優しい!
が、世の中そんなに甘くない。
「あー、えーと、ぶっちゃけランダムです」
「はあ?」
「あの勘違いしないでくださいね?箱庭ならともかく僕がこっちで出来る事なんて微々たるものですよ。それこそエネルギー量がやたらと多い一般人程度です」
「じゃあ俺たちが選ばれたのは...」
「選ばれたからって良いものじゃなかったでしょう?そもそも僕は選んでないです。こう、『来い!』的な感じで読んだら五大世界から誰かしら来ます」
「ガチャかよ」
「ガチャってなんですか?」
「簡単に言うなら害悪機関だ。これのせいで多くの人間が涙を流した」
「……確かに戦争させていた僕の行為と近いですね」
適当に言った言葉に何しんみりしてんだコイツ?
「後は何ができる?」
「箱庭の中限定で時間の流れを弄れます」
「やっと出したなこのやろう!!」
俺は怒声と共にカミルの胸倉をつかみ前後に揺らす。
こいつの能力のせいで俺は少女誘拐どころか昨日会ったばっかの少女と駆け落ちしたことになってるかもしれないんだぞ!
「あの説明したいんで揺らすのやぁめぇてぇぇ!」
「フン!」ゴンッ!
「痛い!」
揺らすの止めるついでに頭突き一発。世の中は暴力で回ってる。
ついでに胸倉からは手を離さない、理由は特にない。
「さあ吐け、お前の罪を吐け、罪状を吐き出せ」
「ハイ………時間管理は『世界の管理者』に内包する能力なんですが、元の世界……五大世界の速度と比べてですが百分の一、十分の一、一倍、十倍、百倍、から選んで時間の速度を決めることが出来ます」
「それで、何でこんなことになってる?」
「今までの速度が十分の一倍速で設定していたのが原因かと…」
「つまり俺たちは元の世界から取り残されていた、と?」
「ハイ……」
簡単な話、俺たちが1日過ごす間にこちらの世界では10日過ぎていたと言う事か
何その精神と時の部屋みたいな能力
ん?でもおかしくない?
「じゃあ何で150日じゃない?俺とサクラが過ごしたのは2週間と1日だけだぞ?」
15日×10倍=150日
後ろに0を付けるだけ、小学2年生でもわかる計算だ。
「あー、そこが話を複雑化させている理由でして。僕気絶していたでしょう?7日ほど」
「ああ」
「その前に何があったか覚えてらっしゃいますでしょうか?」
「レオンと喧嘩」
「アレを喧嘩という感性がすごいですね」
「お黙り」
「ハーイ」
「えっと、気絶する前に僕に何か起きませんでしたか?」
「わかんねぇよ、クリスなんかあった?」
自慢じゃないが俺は相手の戦力を量るということは一切出来ない。
厳密には違うらしいけど、戦闘物ではお約束の相手の気を探り戦闘力を推し量るという奴だ。
でも考えてみてくれ、気で探るとかどこのZ戦士だよって話、出来る方がおかしいと思います。
「なんか一気に強くなってたかな?」
「ああ、そういや“体がついていかず自爆”みたいなことしてたな」
「僕の力は箱庭の環境を操るだけではないんです。
地面を動かしたり雨を降らしたりするのは出来ますが実際に使用すると荒っぽくなりがちで、結局は近づいて殴る方が早いんですよ」
「それすら出来てませんでしたよ」
「ええ、まさしくその通りなんです。レオンと正面から殴り合いなんて怖い真似したのは一時のテンションでしょうね。そして最後の手段を使って勝とうとしました」
「それがあのパワーアップだと?」
「アレの仕組みは簡単なんですよ。
時間の流れを一段階遅く、つまり十分の一倍を百分の一倍にしただけ。
僕自身は体の動きについていけませんでしたが、一時的にエネルギー量を10倍にすることが出来ます」
「なんで?」
「箱庭の中では体の反応は元の世界に引っ張られることがあるんですよ。簡単な話、箱庭の設定を百分の一にすれば箱庭の一日はこちらの百日分になります。
結果的に一日で使用できるエネルギーの量は収束されて百倍になります」
説明はなるほどと言える。
肉体は元の世界に引っ張られるのか。
コイツが元々それなりに強かったのは最初から10倍補正をかかってたからか?
「ほー、なるほどそういや……今はまあいいか、続けろ」
「何ですか?気になるんですけど」
「別に大したことじゃない、そういやベンジャミンのケガの治りがやたら早かったなって思っただけ」
「ああ、そう言えば数年のケガが数日で治ってましたね」
膝を打たれて数年は歩けなくなったベンジャミンはわずか数日で歩けるまでに回復していた。あの時は何かの特殊能力かと思ったが…
「実際はそもそも普通に数年経ってただけでしたってオチか」
「さすが兄さん、がっかりしますね」
弟の反応は厳しいね。
ちょいちょい目の敵みたいに叩くけど何か確執でもあんの?と疑いたくなる。
サクラのツバメに対する態度も塩対応だったし、弟妹ってこんなもんなのかな?
そしてここに一つの謎が解けた。
コイツはその百分の一倍の状態で箱庭を動かしたのだ。
アイツがなんか強くなったのは確か9日目の正午=8日と12時間、この時点で元の世界から85日経過と計算する。
それからこいつが目を覚ましたのは15日の正午までずっと百分の一倍で動かしたとすると、
最初の12時間で50日
気絶し続けた5日で500日
目を覚ました正午までの12時間で50日
15日目の残りの12時間で5日
う~~~~~んだいたい605日かな?
そして最初の85日を足して690日
約一年と10ヶ月
俺が落ちたのは998年の4月で現在は1000年の2月なので計算は通る。
通るからと言ってハルマの怒りが収まるかどうかは別だと思うけど。
実際、半月同じ屋根の下で二人きりで過ごしたわけだし。
それと面倒な計算をしてると怒りが収まってきた、10数えるといいんだっけ?多分そんな感じ。
どうせ終わったことだ、こいつに文句言っても時間が巻き戻るわけでもあるまいし、やめやめ疲れるし怒るのやめ~た。
そう思って俺は掴んでいた胸倉を離す。
いきなり離したせいかカミルは尻もちをついた。
「で、お前は何なの?」
「凡人です」
俺の質問にきっぱりした口調で答えるカミル。
でもそういう意味じゃない。
「そうじゃなくてだな……。お前は何が出来るのってことだ?」
「?」
「お前それ使えばもっと楽に生きれるだろ?」
そう言って俺は部屋を見回す、2年放置したせいか多少ガタが来ていると思われるがそれを差し引いてもあまり良い家ではない。
だがコイツの能力はある意味、未開地への特急便だ。
自然物を食いつぶすだけでもかなりの利益が出るし、気候を操れるならその温暖な環境を維持して年中快晴にすれば、金持ちを招待して慰安地にでも改修出来る。
まあレオンがいて出来なかったんだろうけど。
それでもこいつの口調だと気候くらいなら楽勝そうだし、やってやれないことは無いだろう。
濡れ手に粟の大儲けだ、なぜしない?
「それは、その、約束がありまして………」
「?」
もじもじと両指を突き合わせるカミル。
約束?
もうちょっと行く予定でしたが長さ的に分割
次回は金曜日更新予定
計算は曜日まで合わせていますので、アキラが何年から来たか当ててみてね!分かったらすごい!
(転生前と転生後の世界はアキラの死んだ4月1日0:00を同期させています)




