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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
52/111

2-EX6 新世界歴1000年 1月15日 王国の事情

ペンドラゴン王国

王城最奥部円卓の間

建国当初から間違いなく存在しながらほとんどの者が確認出来ていない場所

行く方法は限定され、いくつかの隠し通路を通る必要があり、その場所は代々秘匿され厳重に隠されている。

さらに初代国王アーサーが持ち込んだある特殊なアイテムの効果でその場所から出ると、その場所への行き方だけを忘れてしまう。

故に行き方を本当の意味で知るのは当代の国王のみ。

その存在を明確に知っている者はさらに限定され


当代の国王、

王国騎士団長、

王国兵士団長、

勇者とそのパーティーから3名だけ、

そして国王の権限で腹心を一人、

数にして8名


厳重に厳重に厳重に守られたその場所は、黄金に輝くとも贅を尽くしたとも噂されるが実際は大したことは無い

質素な部屋に一つの円卓、ただそれだけ


しかしこの円卓から王国は始まったのだ



「皆の衆、此度の円卓会議に出席してくれて感謝するぞ。特に南方の戦場より駆け付けてくれた兵士団長のは感謝しかない」

「いいえ王よ。我らは王国の剣であり盾、そしてそれを振るう王の命なら親の葬儀を欠席してでも出席させていただきます」

「そうです王よ。たとえこの世の果てに居ようと王の命ならば足が千切れようともはらわたが飛び出そうとも走り続け、必ず会議に出席させてもらいます」


開始から過剰なほどの忠誠心を見せるのは王国騎士団長レストと王国兵士団長ダイナ

二人の出身は王国のスラム、目に余る強さと横暴さで王国の一角を騒がせたが、そこから20年前に国王に拾われ改心、現在に至る。

拾われた恩によって二人の国王への忠誠心は振り切っており、王の命令ならば死地へと意気揚々と走り出すだろう。

そこまでの忠誠心を向けられる王としても胃が痛いだろう。


「儂も二人の忠誠心は嬉しいぞ。だが流石にそこまでしてこの会議に出る必要はない」

「いいえ!」

「そんな事はありません!」

「そもそもお前たちがそんな状況で出席してくるなら私はすぐにお前たちを追い返すぞ」

「「ですが!」」

「そもそもお前たちがいなくなったらこの王国を誰が守るのだ?お前たちの死は場合によっては誰よりも重いのだぞ」

「「陛下!」」


感極まったのか目元が濡れている二人に対して苦笑いを浮かべる青年が一人


「……あの、もう話に入っていいですかね?」

「ああすまない『予言者』よ。二人は大体いつもこうなのだ」

「い、いえ!陛下に謝罪されるようなことでは!」

「そうです陛下!頭をお上げください!ダイナの頭なら地面にめり込ませておきますから!」

「すまない『予言者』殿!」ズンッ!


言葉と共に器用に体を折り曲げ、座ったまま頭を地面にめり込ませる。

レストも同じく地面にぶつけない程度にしっかりと頭を下げる。

向けられた方としては少々困る謝罪の仕方である。


「あ、あの頭を上げてください。僕は怒ってるわけじゃ無いんですか――」

「しかし陛下の腹心である君の話を遮ったなど!」

「今遮ってるんですが!?」


この二人の過剰な行動は善心で行われている点が質が悪い。

こうなると意地でも頭を上げないだろう。


「ダイナよ、会議が進まん、頭を上げよ」

「ハッ!」


国王の命令以外では……。


「何とも言えない気分になりますね……」

「この二人はそう言う人なので、割り切った方が心労は少ないですよ」

「そうなんですか……。あ、ところであなたは?」

「え、ああ、そう言えば初めましてですね。勇者のパーティーの一人で『magician』のギフトをいただいています。セリスと申します。えっと……出身は少しアレなので苗字は無いです。」

「ああ!あなたが勇者の知恵袋とされる『magician』殿ですか!ご丁寧にどうもありがとうございます」

「ち、知恵袋は言いすぎです。誰が言っているんですか!」

「オイラ」

「私もですよ?セリスさん」

「なんで!」


羞恥に顔を真っ赤にするセリスは隣の席に座る二人に抗議する。

声を上げたのは

勇者のパーティー『healer』アマーリエ・ウリテル

勇者のパーティー『thief』マーチス

である。


「まあいいじゃないかセリス。君が僕らの中で一番頭が良くて、僕らのために知恵を貸してくれるのは本当なんだから」

「な、う、ぐぅ……ずるいわよ……」

「へ?」


勇者にそう言われると黙ってしまうセリス。

心なしか先ほどより顔が赤い。


「さて話を戻そう勇者よ。まずはお主にも感謝を。王国中を飛び回っているお主を呼び戻すのは私としても苦渋の策だったが今回は勘弁してもらいたい」

「問題ございません陛下。王国民として生まれた身、そして部相応にも勇者として選ばれた身です。お師匠に届かずともこの力は王国のために使われるべきですから」


真っすぐと国王の目を見てそう言う勇者。

彼はここ最近増える『悪』による被害や王国の地方の腐敗を目の当たりにしているはずだが、その瞳はいまだに輝いていた。


「先代殿はお元気であるか?」

「ええと……便りが無いのは良い便りと言いますか…」

「端的に言いますと先代様はまた行方不明です」

「セ、セリス! いや、あの、陛下。あー、その、お師匠は目撃証言はあるのですが……」

「イヤよい、しかしなんとまたか……」


ズバリとしたセリスの一言で、頭を抱える国王に勇者が慌てて話題を変えようと話を振る


「と、ところでそちらの御仁が『予言者』殿ですか?」

「おお、そうであった。紹介がまだであったな。その通り彼が最近話題の『予言者』だ」


その言葉と共に国王が手を向けると彼は立ち上がった。


「初めまして勇者様とそのパーティーの皆さま。この度王宮に士官させていただきました『予言者』のエメラルドと申します」


そう言って深々と頭を下げた青年は顔を上げるとにっこりと笑った。



「では、今回の会議についてだが、その前に『予言者』に力について知っておるか?」

「ハイ。大変有名ですから」


勇者の言葉に“うんうん”と全員がうなずく


『予言者』

未来の詩……未来の事情を正確に予言できる。が、それは詩の形となって現れ、現れる瞬間と内容は本人も分からないため、他者の解釈がうまく出来るかどうかで話は変わる。未来を知ったところで回避できるかどうかは本人の努力次第である。自分の事は分からない。


彼が王宮に召し抱えられたのは、ほんの数か月前である。

彼は元々王都下町で有名な占い師として商売を行っていた。しかし事情が変わったのは約1年前、世界が彼に“二つ名”を与えたのだ。

しかもそれは未来を予言するというトンデモナイものであった。

元々有名だった彼の名は王宮に轟くまでになり、王都で彼の名を聞かない日は無いとされるほど有名人になった、と言うか、なってしまった。

その力をめぐって裏の人間が動き出したのだ。

このままではマズいと気付いた彼は、元々の人脈と伝手を使い裏の人間から半年ほど逃げ回っていたが、それに限界を感じていた。そんな折に王宮から士官のスカウトがあったのである。

そして彼はこれ幸いと王宮に逃げ込む形で現在の地位に座ったのである。


現在は能力のほかに、占いで鍛えた聞き上手の腕(というか耳)を生かしそして的確なアドバイスを行うこと、口の堅く外では聞いた話を絶対に漏らさない事、そもそも女性陣はこの手の占いが大好きな事、とで貴族に人気の何でも相談役として働いている。

彼が一番多いのが人間関係の悩みなのはどこでもいっしょだと気付いたのは最近である。(恋とか)

ちなみに彼は口が堅いので、ここでは初めましてでも実はそうでない人もいる。(女性陣とか)


そして緊急でこの会議が行われるのは彼が最近行った予言の内容についてである。


「一昨日の朝がたでございます。私にある一文が降ってきました、そしてそれが今回の会議の内容でございます」


そう言って彼は手元の紙を読み上げる。


〈シノハジマリ

 ウゴク ナナトガ

 オチルハ ハクテン

 ソシテ ムジンノチデ

 メヲサマス ヤクサイ

タダヒトガ ニゲルコトヲヤメルトキ 

 オワリノハジマリ〉


「なんだこれ?」

「分からん」

「抽象的すぎますね」

「わかんない」

「分かりません」

「分かりませんね」


王と『予言者』を除いた出席者全員の意見である。

ほとんど全員が分からないと言い切るその詩は確かに意味不明である。

何しろ詠った本人がまるで理解できていない。


「ゆっくりと読み解いてくれ、そうすれば分かるだろうが今回の詩は無視できない内容が多すぎる」

「……まずは“ナナトガ”でしょうか?」

「うむ、これはそのままの意味で“七大罪”であろう」

七大罪とは『悪』の力の影響下で生まれる強力な二つ名である。

これが生まれる=『悪』が動いている、と考えても全く問題ないほど『悪』とのつながりが深い。


「厄介ですな、長年の戦いでその能力こそ分かっているものの攻略法などありませんし……」

「では、“ヤクサイ”とは『悪』でしょうか」

「可能性は高いでしょうね」

「では、“ムジンノチ”とは?」

「私と国王様は北方だと考えています」

「確かに北方は人が少ない、いや、いないと考えてもいいだろう」

「“ハクテン”とは何のことだ?」

「白い狐?では?」

「死の始まりとは物騒な……」

「ポープは何か気になることは無い?」

「………僕は」


白熱する予想のなかで勇者が口を開く


「僕は最後から2番目の文の“タダヒト”が気になるかな?ただの人なら“ヒト”と書けば十分の気がする」

「……つまりこれは誰かを指していると?」

「僕はそう思う」

「確かに私の詩は多数の人の事を指すなら“ヒト”と書かれることが多いです」

「ならばこの“タダヒト”の特定をしなければなるまいな」



そして1時間後。

議論をやりつくしたとは言い難いがこの後の予定も考えるとそろそろ時間であり結論が急がれたため国王が言い渡す。


「うむ、白熱した良い会議であった今日はこれでお開きとしよう。北方には近く使者を出して様子を見るとしよう」


国王の言葉と共に席を立ちあがり各々が出口に向かう出席者。

その時


「ああ!」

「どうした!」


立ち上がったと同時に叫び座り込む『予言者』

そして言い放つ


〈サムキチデメザメルハ アク


 スベテヲ ノミコミシモノ


 セカイハ カレヲキテンニウゴキダス


ソレハ トメラレナイナミトナル〉


「な!」

「なんと……すまぬ皆の衆この後の予定はお預けになりそうじゃ」


国王の言葉が会場に染み渡った。

ようやく2章が終わった!

想像より倍は長かった!

実際最初は1章+2章で30話前後の予定でしたので本当に倍になってます。

そして3章に向けての力をためるための1週間ほど休みをいただきます。

次回はたぶん次の次の月曜日?かな?

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