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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
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2-24 ガラと東西合併

さっぱり分からん(レオン・ハザード)

なんでスリーカードも分からないんですかぁ!(カミル)

俺が監禁小屋の外に出るとすぐの場所にガラが居た。

片手にナイフ、もう片方の手に銃を持ち、地面に座り込んでいる姿は紛争地帯を思わせる。

事実、紛争地帯から来た男だ、様にはなってる。


「エネルギーが異常なほど落ち込んだが、アレはどうなった」

「んー肩の力を抜いただけだって。それだけで何か張り詰めた空気が緩むんだからとんでもないよな」


俺には漫画で言う“気”を探る的なエネルギーを感じる力などないがそれでもあの小屋の中は居心地が悪かった。

なんというか、檻を隔てて猛獣と同じ部屋にいる気分になる。

安全だけど、ずっと威嚇されてる、みたいな。

あいつ自身は自己評価が低いがその力は絶大だ。

ただ、話を聞いた限りこの世界限定の能力のようだが。


「厄介な能力だ」

「同感だね」


村の人間全員に聞いたが、世界の操る能力など知るものはいなかった。

物知りなサクラや老獪なデニム爺さんですら知らないのだ、正直御手上げである。

あの力を使える状態で村に侵攻されでもしたら最低でも村人の半分は死ぬだろう、それでも俺たちが強気に出れるのはここが東村ではなくあの戦場だからである。

あそこは作ったばかりの掘っ立て小屋。

この7日間で増築、補強、強化を続けてきたが所詮は掘っ立て小屋なので暴れられたら簡単に壊されるだろう。

壊されても問題ないから掘っ立て小屋であるが。


「それでアイツをどうするつもりだ?」

「どうしようかねー。俺的にはあんまり殺したくないってのが本音かな、俺たちが元の世界に戻る一番可能性の高い潰すことになるしね」


ガラの話では目の前から一瞬で消えた事もあるらしく、少なくともアイツは元の世界に戻る手段を有している。

それ以前に元に戻る条件を提示したうえで戦争をさせていたのだ、自力での脱出が難しい現状でアイツは数少ない、いや唯一の帰り道と言ってもいい。

それに……


「それに……なんだ?」

「アイツのあの感じ、見たことがあるんだよ」


俺の頭に浮かぶのは俺を殺そうとした大男。

自称“神様”は話してみた印象とレオンとの戦闘中の印象は明らかに違っていた。

正気を失っているといった方が近いのかもしれない。


「悪か……」


ヤツの証言を思い出す。

そう言えばサクラに聞こうとして聞きそびれていた、後で聞いておこう。


「奴を生かすとして、村人が納得すると思うか?」

「向こうの世界に帰ったらアイツは無力みたいだし、最悪レオンをこっちに残すよ」

「戦ったらその余波で全滅の可能性もあると思うぞ」

「そーなんだよなー」


戦いだけで地形を変えるような奴らだ、近くにいなかったので分からないが、それでも奴らの拳がぶつかり合っただけで周りの泥は遠くからでも分かるほど大きく飛び跳ねた。

この世界の村人は脆弱とは言い難いが、それでもアイツらの戦闘力は組み分けで言うと災害級である。

一人で最低1000人分、一騎当千の字で行く猛者同士の戦いに、巻き込まれた周りの雑魚は、紙のように散り散りに吹き飛ばされるしかないのである。

それこそ無双系ゲームのように。


「どうする?みんなで出ていくって手が一番手っ取り早いんだけど」

「出たがらない連中はいるぞ。俺もその一人だしな」

「二つ名の獲得か、うーん気持ちは分からんでもないんだよなー」

「絶望的な状況で偶然見いだした希望だからな」

「うーん」


“神”を殺したら外には出られない

“神”を殺さなければ村人の反発は必至


「……ここで考えてもしょうがない。今は帰る、そんで村人の意見を聞いて考えるか」

「殺したくない理由が操られていたでは納得しないと思うぞ」

「実際は操られていたわけじゃ無いし、何なら記憶も残してる。それでもアイツは直接的な殺しはしていない」

「人を殺さなければ死刑じゃない、逆に人を殺したら死刑、線引きとしては分かりやすいな」

「殺人教唆と誘拐500件以上、殺されても仕方ないのか?……あーめんどくせ。俺を引き合いに出すか……」

「何か手があるのか?」

「あるような……、無いような……」


かなりの黒歴史にかかるのであまり思い出したくないのだ。

『赤』は。

落としどころとしては、それなりに痛い目にあってもらうかな?

石投げ、むち打ち、水責め、きつめの関節技、指十本突き指、雑巾絞り、しっぺ……

だめだな、後半に行けば行くほどネタに走ってる気がする。


「まあいいや、後よろしく」

「了解した」


そうして俺は村に、“元”東村、“現”東西村に歩き出した。



「おかれりー」

「おかり―」「りー」

「ただまー」


村に戻ると子供たちが迎えてくれた。

村の子供たちは一週間前よりも倍に増えている。

理由は簡単、村同士の合併にある。


“神”撃破の前日、俺は戦場にいた。



「やっほやっほやっほっほー」

「ふざけているのか?」

「この人はこれが普通なんですよ、ガラ」


戦場に“いた”のは西村村長ガラ。

ベンジャミン倒した彼はこの世界では、レオン、クリスに次いで3番目に強い人間。

俺が本日、戦場なんかに来たのはこいつに会うため、もっと言えば西村を味方につけるためである。


「こんなところに何の用だ?」

「それはこっちのセリフだったりして」


ちなみに今回は別にガラと話をつけてきたわけではない。

ガラはここ最近戦争の無い日は戦場にいることが多いのだ。

これは俺がレオン攻略を考えていた時に見つけた面白い発見である。

東村で聞いていた限りガラは西村に恐怖政治を引いているとのことだったが、目の前に人物はそうは見えない。

つい先日までは武器を握っていた両手には、花束が握られていたから。


「手の花束は味方用?それとも敵用?」

「……」


ガラは答えない


「大変だよな、人に嫌われるのは」

「……」


ガラは答えない


「でも、それは遠からず破綻するよ。それが分からないわけじゃ無いだろ?」

「……………だったら俺は間違っていたのか?」


ガラは答え始めた。


「俺は元々戦場の出だ。人に指揮するくらいなら出来るが、人を統治するなどやったことも無い。だから一番手っ取り早い方法を使った。それの何が悪い」

「悪かないさ、だけど問題は非常に徹しきれない所だな」

「何?」

「気づいてるよ、お前が無理してるってことくらい」

「誰が」

「みんなさ」


実のところコイツの統治は全く間違っていない、人を従わせる方法など突き詰めれば二つしかないのである。

それは懐柔か恐怖だ。

そしてこの世界の二人の統治者は違う方法をとった。

ベンジャミンは懐柔を行い、村を統治した。

ガラは恐怖で縛り、村を統治した。

これがこの世界の現状……そう思ったならバカである。


たった一人で600人以上の人間を脅せるかよ。


一人の人間が出来ることには限りがある。

コイツは力ずくで人を治めたなら男衆300人対1人で勝てるのか?

コイツは脱出しようとする人間を見張るため毎日毎日寝ずの番でもしてるのか?

出来るか。出来たとしても半年も続くか。


つまりはそういう事だ。

最初は恐怖だったのかもしれない。

でも今は違う。

ガラは信頼されている、少なくとも人殺しの戦争に反対されない程度には。


じゃなきゃとっくに村人全員逃げ出してるよ。

だって1㎞走れば隣の村だぜ?

そのくらいの距離なら、逃げたいなら逃げるだろ普通。


「ガラ、この戦争は不毛だと思わないか」

「いきなりなんだ」

「明日“神”を倒す」

「はあ?」

「お前はこの世界に残りたいんだろ?でも俺は帰りたい。だから“神”を倒す」

「何を言ってるんだお前は?」


大したことじゃない、ゲームで勝つ一番の方法はゲームマスターを味方につけることだ。

だから俺はそのつもりで行動していた。

“神”の打倒

それが出来るなら、この世界の出入りも自由だろう。

入れる人間が選べて、出す人間が選べない、なんて馬鹿な話があるか。

全滅なんて歌っている以上、仮に生きている人間全員を吐き出すことしか出来ないなら、一旦出してまた入れなおさせれば良い。


「そう言うわけだから手を貸して」

「そんなすかすかの理論を聞いて、ハイそうですか、と貸す馬鹿がいると思うか?」

「えー」

「第一アレには勝てん。そこのクリスチャンといないベンジャミンを連れて3人がかりでぶつかっても勝てる気がしない」

「おっ!神様の実力を知ってる感じだね?」

「アイツは西村に降りてきたからな、その時に感じたオーラは…思い出すだけで身震いする」


そう言って体を震わせるガラ、カタリじゃなさそうだ。


「フーン、じゃあとっておき切り札を切ろうか?レオン・ハザードを味方につけた」

「!」


俺はレオンを味方につけた経緯を話す。

ガラは“にわかには信じられん”とだけ言った、しかしそれと同時に“カタリにしてはバカバカしい”とも言った。

最後に俺は聞きたかったことを聞く。


「じゃあガラこれだけ聞かせてくれ、レオンと“神”どっちが強い?」

「……………」


ガラは質問に答えなかった。

しかし


「レオン・ハザードをうちに連れてこい。話はそれからだ」


そう言って彼は花束を置いて帰っていった。



「それでどうなったんだ?」

「別に?レオンを連れて行って終わり、そんだけ」


正直レオンを味方につけた時点で戦争はウチの勝ちなのだ、後は落としどころを見誤りさえしなければ平和的に戦争を止められる。

レオンを連れていき、戦争を終わらせ、翌日白旗を戦場の真ん中に交差させた状態で置く。

これだけで自称“神様”は降りてくるだろう。

ガラからの証言で天罰はヤツ自身が行う事は分かっていたし、ガラもレオンが勝つと予想していたのか、この計画を聞いてすぐに同意してくれたよ。


「そして今に至るか……」


戦争が終わり村同士は合併した。

そもそも戦争が終わった時点で村を分ける続ける必要もなく、西の村人が全員こちらに引っ越してきた形だ。

ペドロ達がやたらに作っていた家が役に立ち、すでにほとんどの村人が引越しを完了している。

東と西、禍根が無いと言えばうそになるだろう。

それでも両方の村の子供たちが手を取り合って遊んでいる姿を見ると、戦争が終わったんだと実感することが出来た。


「さて、準備しろベンジャミン。これからが一番大変なんだからな」

「ああ、神様の処遇か」

「それもあるが……。一番大変なのは帰った後の事だと思うよ?」

「ん?」

「だってお前ら半年以上行方不明じゃん」


そもそも俺はサクラを連れて失踪していることになっているだろう。

少なくともハルマの中では。


「(死にたくないな~)」


俺は下手したらレオン以上の脅威におびえなくてはならないことに、ため息を吐いた。

なんか中途半端になった……。

次回は日曜日更新。

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