2-22 神の全力
同時に2話投稿しています。
先に2-21からどうぞ。(牧村尚也)
「おおおぉぉぉぉ!!」
「ははははははは!!」
拳がぶつかり互いに弾きあう
その勢いで泥が彼らを中心に大きく飛び跳ねる
二人を一瞬隠すほどの高く上がった泥はその戦いに誰も介入できない事を表していた
◇
岩壁の頂点
二人の戦いを見守るのはこの世界屈指の強者たち
ベンジャミン、クリスチャン、アキラ、そしてもう一人……
しかしベンジャミンはケガの治りが速いとはいえ完治には至っておらず杖を突いたままだ
アキラに至ってはいないよりマシ程度でしかない
戦力は実質二人である
彼らはあわよくばレオンに手を貸そうと、もしレオンが負けても次の戦いに活かせるようにと、戦闘の良く見える位置に陣取っていたがそれは杞憂に終わる
彼らから見てもその戦いは異常だったのだ
少なくとも自分たちが介入すれば10秒の内に数回は死線を潜り抜けることになると彼らは理解していた
「おーおー、凄いな。レオンの動きに合わせるってどんだけバケモンだよ」
「一応神様を名乗ってるだけはありますね」
「ああ、あわよくば、なんて考えてた自分が馬鹿らしく思えるな。アレについていけるのは俺たちの中でもクリスくらいだろう」
「だってさ、クリスはどうよ?ついていける?」
「ついていくことは出来ますが、あの調子じゃすぐにエネルギーが切れてリタイアですね」
「「そうなのか?」」
「えぇ……。戦闘初心者のアキラさんはともかく兄さんは知っててくださいよ……。まあいいや、二人も知っていますよね、『二つ名』は“魂”に強く結びついていると」
「え?何でいきなり魂?」
「もうちょっと説明をくれ!」
「黙れバカアニキ。結びつくんですよ魂とエネルギーは」
「「へー」」
「そもそも二つ名の力は“魂の力”…“ソウル”を消費して使われます」
「「ほー」」
「そして“ソウル”はそのまま体力にも直結しているんです」
「「ふーん」」
「だから体力を使うと二つ名が使えなくなり、逆に二つ名を使うと体力が無くなる。こういう戦闘においては“持ちつ持たれず”の関係なんですよ」
「んー、ゲームのHP削って攻撃するみたいなもん?」
「まあ、大体あってますね。そしてそんな事も知らなかったせいで兄さんはあの失態を犯したんですね!」
「う!言わんとて下さい……」
「そんな事も知らずに戦場に立っていたのか貴様は、逆に驚きだな」
「お!いきなり話に入ってくるところ見ると寂しくなったか?“ガラ”」
西村村長ガラ
“この世界で強者を呼ぶならば彼は外せないだろう”というアキラの考えでこの場に呼ばれた男
呼ぶまでにはもちろん一悶着あったが今は置いておこう
少なくとも、この世界で戦いに精通しているのは間違いなく彼である
「ん?どうですか?ん?ん?」
「黙れ殺すぞ。それより向こうが動く、仕掛けるのは……神か」
◇
「ははははは!!最高だ!手がしびれるなんて何時ぶりの事だ!楽しいぞ“神”!」
「言ってくれるなレオン・ハザード……!(こっちは指の骨に間違いなくひびが入ってんだよ!)」
何度かの拳のぶつけあいを制したのは全身不可視の鎧を着込んだレオンだったようだ
いや、“神”に拳同士をぶつけるつもりなど一つもなく放った拳に勝手にレオンが合わせていただけのようだが
レオンは嬉しそうに戦いを続ける
今まで自分とここまで渡り合った相手はいなかったのだ、たまりにたまった行き場のない暴力は今たった一人に向かって放たれている
そして“神”にとっては間違いなく地獄である
殴っても傷一つ付かない明らかに身体能力が上の化け物が嬉々として襲ってくるのだから
逃げ出したくなるし、逃げ出せればどうにかなるのだがそんな隙も無い、仕方なく“神”は覚悟を決めた
二人は泥の上を跳ねるように移動する
冷静さを取り戻してきたのか“神”がレオンに話しかける
「なんで逃げる!戦え!」
「レオン・ハザード、僕は今日ここに天罰を与えに来たんだよ。天罰ってわかる?悪い行いに悪い行いが帰ってくる事さ。それなのに何で君が邪魔をするのかな?」
「“その天罰が予想通りだったから”」
「……どうやって知った?」
「俺も知らん、頭の良いことは頭の良いやつに任せることにしてる」
会話に出たのはおおよそレオンの考えとは思えない答え
“神”はレオンを操っている、もしくは使っている存在がいると気付くが、それが誰かまでは分からない
しかし“神”は足を止めた
もし交渉の余地があるなら戦う必要はない
「なあレオン・ハザード。君が何を吹き込まれて僕と戦ってるのかは知らないが、もし何か望みがあるなら言ってごらん?僕は神様だ。この世界に事なら何でもできる!」
「俺は“神様”と戦いたい!」
話を聞かず、レオンは立ち止まった“神”に拳を入れる
が
その一撃は阻まれてしまった
隆起した大地によって
見ればすでに下には泥は無く、硬い大地があるだけだった
「このために逃げたのか!」
「じゃあくたばれ」
その言葉と共に大地は大きくうねりを上げる
ビシッ!バキッ!と音を立てながら地面が盛り上がっていく
「僕は神様、この世界の支配者、その意味を教えてあげるよ」
“神”の足元に10mほどの小山が作られ、レオンを見下ろす
大地を操るなど人外の力である
しかしレオンは引かない、むしろ笑って前に進む
この世界の世界最強は引くことを知らないのだ
「はっはー!楽しくなってきた!」
◇
「おお!どうなってんのアレ!」
「地面が隆起して……山になった……」
「そう言う二つ名なら分かるが……レオンと打ち合っていた点はどうなる?」
「簡単だ」
「「「?」」」
地形を変えるという大ごとを、簡単にやってのけた力を見てもガラは冷静だった
「どゆこと?」
「やつは常々俺に言ってきた、『自分はこの世界の支配者だ』と。ならばアレくらいは出来るだろう」
「レオンと打ち合って、さらにあれだけの力を……」
「神って言うか化け物だな……」
「大丈夫!!」
場が暗くなりかけたのを察知しアキラが大声を上げる
「向こうが化け物ならこっちは災害だ!レオンが勝つ!」
「というか勝ってもらわなきゃ困るんですが」
「そのとうり」
クリスの言葉にガラが頷く
少なくともアレに勝つイメージは沸かない
そんな中アキラは一人考えていた
「(しかしあんなにエネルギーを使ってもいいのか?それとも回復する手でもあるのか?)」
◇
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
爆発音とともにレオンは山を駆けあがる
小山はあちこちが隆起するがレオンの速度には及ばない
最後の一歩で“神”の目の前に飛び上がり拳を振りかぶる
「かかったな!」
次の瞬間“神”は後ろに倒れ、その足元から尖った地面が飛び出す!
空中にいるレオンは避けることが出来ずまともに食らってしまい、そのまま地面に墜落するかと思いきや
「んなろっ!!」
「は!?」
とっさに尖った先を掴み、空中で停止して見せた
伸ばした腕を最速で折りたたみ、その勢いで“神”に迫る
「くらえやぁぁ!!」
「ひっ!」
“神”が周りの地面が隆起させ自分の周りを覆う
厚い土の壁がレオンの前に立ちふさがる
普通は勢いのままぶつかれば大ケガだが、鎧のあるレオンには関係ない
拳を振るい飛び出た地面を次々砕いていく
そして
再び神の眼前に現れる
「おらぁぁ!!」
「ひゃあぁぁ!!」
ドンッッ!!
山の表面が爆発した
……しかし拳の先には“神”はいない
「あぁぁああぁあ!!」
なぜか山の表面をゴロゴロと転がっていったからだ
約10mを転げ落ち地面にぶつかった“神”はひどく呼吸を乱しうずくまった
「は?」
「ゼェ…ゼェ…うぅ痛いぃぃ……」
その滑稽な様子にレオンの足が止まった
先ほどまで強者の位置にいた人間の変貌ぶりを考えるなら当たり前だろう
しかし神はほくそ笑む
思いもよらずレオンの足が止まったのだ
「(これなら!)」
神は奥の手の準備を始める
それは神自ら封印した力だった
◇
“神”は演技を続ける
大げさなほどに
「痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!」
「???」
地面を転がりまわる自称“神様”を見てレオンは首を傾げる
訳が分からない
「(なんなんだコイツ?無茶苦茶だな?)」
弱いと思ったらいきなり強くなり
強いと思ったらいきなり弱くなり
ここまで混乱したのは人生で二度目だ(一度目は先日のアキラ戦)
しかしそれがいけなかった
少なくとも足を前に出し続けることが重要だった
結果レオンは大きな“チャンス”を逃すこととなる
ボッ!っという音がして風が吹いた気がした
レオンはとっさに身構える
風の発生源は地面にうずくまったままの“神”
そしてソレはゆっくりと立ち上がる
「ありがとうレオン・ハザード、君の油断のおかげで用意が出来た」
胸に手を当て深くお辞儀をする“神”
その姿は先ほどまでとはまるで違い、自身と力に満ち溢れていた
否、見た目だけだは無い、その体から感じるエネルギー量も膨れ上がっていた
今までの戦いでわずかに上回っていたレオンからすれば一転して窮地に立たされた形だ
「後の事を考えるとこの力は使いたくなかったんだが君ほどの男には使うべきだろう。今まで全力を出さなかったお詫びに見せてあげよう、これが正真正銘、神の全力をだ!!」
そう言って“神”は勢いよく飛び出す
腕を後ろに垂らし、姿勢は低く、前のめりになりながら
山を駆けあがる速度はレオンと比べても勝るとも劣らない
そして拳を構え
ドォンッッ!!
凄まじい音と共に戦いは決着する
「アエ……」
「え?」
神の拳は構えられたまま、打ち出されることは無く
レオンは構えた拳をまっすぐ前に出すと、そこに前のめりになった顔面が飛び込んできた
勢いのまま拳に突っ込みそのまま
「気絶?」
フラリと倒れまた山を転がり落ちていく”神“
レオンはその後をまた追わなかった
『傲慢』レオン・ハザードVS『????』自称“神様”
戦闘時間6:07
勝者 『傲慢』レオン・ハザード
かくして、レオンは本気の“神”と戦うチャンスを逃したのである
衝撃の決着!
さあ、後は2章走り切るだけだ!
次回は水曜日更新予定。
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