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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
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2-16 レオン・ハザード攻略戦Ⅱ

アキラさんから合図……準備開始。(ダニエル・ハート)

“ドンッ!ドンッ!”とリズムよく地面を鳴らしながらレオンは森を駆ける

その一歩一歩は大地を揺らし、近くの木から鳥たちが飛び立った


「(しかしくせぇな、森の中からアイツと同じ強い匂いがする)」


その数は数えるのが(レオンにとって)面倒なほど

基本的に野生児のレオンは五感の全てが常人をはるかに超える

視力なら10.0を超え、聴覚なら閉所では音の反射だけで周りが識別できるほど、味覚ならバケツ一杯の水に果物の果汁を数滴入れるだけでその果物を答えるだろう

もちろん嗅覚も優れている

そもそもアキラの着ていた服は匂いがキツすぎるのだ、それこそ森の中でも一人一人見つけることが簡単に出来るほど

そしてレオンはこの道の先、一つ目のカーブを曲がろうとしている匂いを感知した


「(思ったより早ぇ、が、これで終わりだ!)」


急なカーブを一気に曲がり緑色の背中を視界に捕らえる

距離にして約30m

レオンにとっては一息で飛び込める射程距離


「捕まえた!!」


そう叫んで両手を前に伸ばし、地面を踏み込むと……


“ボコン!”


「あ?」


踏み込んだはずの地面が軽い音を立てて消えた


「はーーー?」


踏み込んだ勢いのままに空中を縦に回転しながら落ちるレオン

地面に頭をぶつけそのままばったりと倒れる


「(ひでぇ煙だ、というか……)アッチィ!!」


倒れたままの背中にジリジリと熱を感じて飛び起きる

よくよく見ると地面が少しだけ赤く光って見えた

というより煙が強すぎるせいでそれだけしか見えないのだ

幸いというか上空から降りてくる光で大体の穴の深さを測れる


「(随分落ちたな10m?15m?)」


レオンは無言で辺りを見回す

すると上から声が降り注いだ


「ワーハッハッハ!!どうだレオン毒煙地獄は!」


穴の淵に影が見える

輪郭では誰かまでは分からないが声を出している時点で隠れるようとしていない


「お次は毒ガス兵器だ!くらえい!」


次の瞬間、穴から降る光が明らかに小さくなる

それと同時にレオンに何かが飛んできて当たり壊れた


「馬鹿か俺に毒はきカッ!」


レオンの言葉は途中で止まる、それは今まで一度も味わったことのない感覚に陥ったから

意識が薄くなる、視界が揺れる、体がしびれる


「(毒?バカな!俺の“鎧”に毒は効かない!)」


しかし実際に起こっていることは毒の効果としか思えない

次々と降り注ぐ爆弾の中、レオンは決断する

穴から飛ぶ、飛んで捕まえる

本来なら攻撃はすべて真正面から受ける性分のレオンだが、今回ばかりはそれを捨て去る

呼吸もままならない状況でレオンは体の中の空気を全て吐き出すように吠えた


「ガアアアァァァァァァ!!!!」


叫びと共に穴の底は爆発する

土煙と毒煙が入り混じるが、レオンには関係ない

とっくの昔に穴から飛び出していたから、しかしレオンは失敗した

穴から飛び出るのは良いが、飛びすぎてしまったのだ

一瞬で穴を飛び出しさらに高く、穴の上空8mほどのところまで飛んでしまった

しかしそこでレオンは驚愕の情景を目にする


「なんだ?煙だらけ?」


それは森を飲み込む煙の大群

いつも岩山から見下ろしていた森は大量の煙に覆われていた

少なくとも自分が落とし穴に落ちる前はこんなことは無かったはずだ


「どうなっていやが『ヒュー――』あ?」


レオンのセリフを遮ったのはアキラの鳴らしていた笛の音

しかしそれはレオンの真後ろから聞こえた

空中に飛び出して言るレオンの後ろから

レオンは体をひねり音の聞こえた方を振り向く

すると……


“ゴインッ!!”


空中に鈍い音が響く

飛んできたのは一抱えほどある大きな石の塊

響いた音はレオンの“鎧”というこの世界でも“最硬”の物とぶつかることで響いたものだった

むろんレオンにダメージは無い

しかしながら当たった場所が悪い

レオンが石をぶつけた場所、ではなく

レオンと石がぶつかった場所、という意味で

それは中空

足場のない戦場でレオンはあまりにも無力だった


「がああ?ああ!あ!?あ?」


ぶつかった勢いのまま前に押し出される

ぐるぐると乱回転のまま落ちていく

墜落先は煙が支配する森

いくつもの枝を折りながら地面に達する

起き上がったレオンは驚愕する

そこは彼の知るいつもの森とは全く違っていた


「なんだよコレ……何だよコレ!」


森の中に草の強い匂いがいくつも動き続けている

“ブンブン”と振り回す音が其処ら中から聞こえる

上空を先ほどと同じ“ヒュー――”と言う音が通った

そして何より森を支配している煙は先ほど落とし穴の煙と同じ匂いがした


レオンは一生のうちで初めてといっていいほど恐怖した

今まで自分が生きていた領域があっけなく崩壊したのだ


谷から逃がすつもりは無かった

森の中でなら負けないと考えていた

結局は自分が湖に先について終わりだろうと思った


そのことごとくが潰されていく

勝ち目が次々と消えていく

その時レオンの脳内を一つの考えがよぎる


「(勝てない?)」


その最悪のイメージにレオンは……

恐怖する?

心を折る?


『否』


否である

世界最強はその最悪のイメージに


「ふざけるなぁぁぁぁ!」


ブチ切れた



「(やっぱおもしれぇなアイツ。つーか普通コレだけやれば折れるんだけど?何で切れるんだよ)」


レオンの叫び声が森を走る中、俺は森の中を疾走している。

え?森は毒煙だらけで視界が効かないだろって?

心配ご無用。

俺の『天眼』は上空に絶対に離れない人工衛星飼ってる。

俺が道に迷うことはこれからの生涯無いよ。いや人生の道とかは迷うかもしれんけど。

煙についてはもっと問題ない、これはそもそも吸いすぎなければ効果は無い。

ならレオンは何で簡単に効果があったか?

もちろんからくりがある、でもお楽しみと言う事で。

しかしあまり使うと頭が痛くなるな。

俺の現在の脳内は“上空”と“通常”の視界を二画面同時に見ながら走っているようなものだ。

ゲームとかのマップ画面と1人称視点の画面を同じ画面に被せて出していると思ってくれ。

余計に分かりづらいか?

でもそうとしか言いようがないのだ、この気持ち悪い視界は。


「(あーコレやっぱり目閉じて使うようだよな、何で普通に使えるんだろ?……っと)」


走りながら自分の能力の研究をしていると所定の位置に着いた。

ここから走ればすぐに湖だろう。


「(さて正念場だな)」


俺は昨日の事を思い出す。

俺の勝利条件とレオンの勝利条件を。



「よう。やっぱり来たな」

「…………なんでいる」


昨日の今日で悪いと思うが俺はレオンを待ち伏せした。

というのもレオンの行先はなんとなく想像がついていたのだ。


「まず森の道。あれ作ったのはお前だろ?」


人間の高さに揃って折れた木の枝や踏まれた草。

あれを見た時は人間大のどんな獣がいるのかと想像したが。

なんてことない、“人間大”ではなく“人間”が作っていたのだ。

そもそもこいつの防御力なら木の枝くらい気にせず突っ込むだろうし、世界最強の通り道なのだ、他の獣も通らないだろう。


「一番気になるのはここ数か月前にはあの道が無かった事だけど……」

「別に大した理由じゃない。お前らが来るようになったからミダシナミ?に気を使っただけだ」


なるほどねーこの野生児にも一応常識はあったか。

“ミダシナミ”って言ってる時点であまり期待はできないけど。


「それよりお前何でここに湖があることを知ってる?ここは獣たちも寄り付かない場所だぞ?」

「上から見た」

「は?」


湖は『天眼』の力で簡単に発見できた。

上から見下ろして水場を探すだけだったからな。

それにもう一つ面白い発見もできたし、昨日は運が良かったよ。

で、昨日のくすぶりを解消するため俺は昨晩作った釣り道具を持ってレオンを待ち伏せたわけだ。


「今日来たのは昨日言った『鬼ごっこ』の明確なルールを決めるためだ。と言っても鬼ごっこ自体はいいな?鬼が相手にタッチしたら勝ち。逃げ手は逃げきれば勝ち」

「ああ、なんかそんな感じだったな」


レオンの了承を貰い俺は説明を続ける。


「お前の勝利条件はスタートからゴールまでに俺を捕まえる事。俺の勝利条件はスタートからゴールまでお前に捕まらない事」

「俺、別にやるって言ってないけど?」

「前に言ったんだろ?お前を倒せたら倒した奴の味方になるって。それに則ってやるんだよ」

「あー何かそんなこと言ったような?」

「覚えてないんかい!」


俺のツッコミにレオンが少し驚いた顔をする。

ナンデ?


「なんだよその顔?」

「……お前は俺が怖くないのか?」

「は?」


何を言ってるんだこいつ?


「これから味方にするやつを怖がってどうするんだよ?」

「は?」


全く何のモンスター気取りなのか、バカバカしい。

同じ人間を無条件で怖がるほど俺はバカじゃない。


「ふ、ふふ、はははは!!そうか!俺が怖くないか!いやー久々に聞いた!」


嬉しそうに笑うレオンはそう言って地面に座った。


「他にルールはあるのか?ないなら帰るぞ?」

「スタートは昨日会った谷の中でいいだろう。ゴールはこの湖でどうだ?」

「どこから湖だ?」

「そうだな……。じゃあ俺はこの湖に飛び込むことでゴールにしよう。道のりは当人の自由で。ここまでOK?」

「おーけー?」

「じゃあここからが本番」

「はい?ルールは終わりだろ?」

「これはどっちかって言うと宣言になるけどな。俺とりあえずは勝つための手段は選ばない主義だ」

「ふんふん」

「というわけで、明日は色々使う罠、人、攻撃。何でもありにする。いいな?」

「待て」


ここでレオンから待ったがかかった。


「人ってのはなんだ?今回の勝負は一対一じゃないのか?」

「ああ、今回は俺以外の村人も多数参戦させるつもりだ。攻撃、防御、色々する。でも狙うのは俺だけにしてほかのヤツらは手を出さないでほしい」

「おい、それは流石にそっちに都合がよすぎるぞ」


そりゃそうだろうな。

かってに戦場に放り込んだ選手に手を出すなは通じないだろう。

だから……


「その代わりお前が俺を捕まえたら俺を殺してかまわない」

「は?」

「俺以外狙わない代わりに俺を殺していいって言ったんだ。聞こえなかったか?」

「ば、馬鹿かお前!!言っとくが俺はお前に負ける気がしないぞ!」

「奇遇だな、俺もだ」

「……なあ、お前頭大丈夫か?負けたら死ぬんだぞ?何でそんなに堂々としてんだ?」

「失礼な奴だな、別に死ぬつもりはねーよ。それにこっちは一回死んでるんだ。もう一回死ぬくらい屁でもねー」


俺のセリフに呆気に取られたのかレオンがフリーズする。

ちょうど話も終わったし帰ろ。そう思うとまたレオンが笑いだした。


「は、はは、ハッハハッハ!!いいなお前!その心意気買ったよ。お前の仲間には手を出さんその代わりお前を捕まえたら殺す。それでいいんだな!」

「問題ねーよ、死なんから。ぜってー勝つ。そんだけだ」


俺の宣言にレオンがニヤリと笑う。


「じゃあ明日の朝、岩谷で会おう」

「ああ」


そう言って俺たちは分かれた、俺は道なりに歩くように。

レオンは森の中を突き進むようだ。


…………


「レオ―ン!お前水浴びしに来たんじゃねーのー!」

「あ!」


そして時は今に経ち戻る。



「(来た)」


目標確認。

こちらの予定通り森を突き進んで来たようだ。

“ザッザッザッ”と音を立てながら森を歩くヤツが湖に迫る。

さあ最終局面だ。

遅くなって申し訳ない!

次回の更新は日曜日の予定

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