表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
35/111

2-15 レオン・ハザード攻略戦Ⅰ

準備完了!では行ってきます!(アキラ・トコバ)

「あたーらしーいあっさがきた、きぼーのあーさーだー」“ピッピッピー”

「なんだその歌?」

「ラジオ体操の歌?」“ピー”

「なぜ疑問形?」

「俺も正式名称は知らんのさ」“ピー”

「じゃあ後の音は?」

「やっぱ笛は知らんかね?」“ピッピッピー”

「うるせー」


午前10時

朝といえば朝である時間帯

俺はレオンの住処にしている大岩の谷にやってきた。

前回同様、谷にはまだ日が差さない。

薄暗い谷底に俺とレオンは二人っきりだ。


「じゃあさっさと始めますか」“ピッピー”

「別にもっと伸ばしても構わんぞ?お前の寿命が少し伸びるだけだからな」

「別に伸ばす理由は特にないんだよなー。勝てばいいんだし」“ピー”

「できると思ってんのか?」

「出来なきゃこんな無謀は侵さんよ」”ピー“

「その音やめてくれ。気が散るしなんだか力が抜ける」

「なんだよーきっと知らないと思って作ってきたのにー」


そう言って口から笛をはなす。

この笛は昨日の夜に訓練をやっている隣で作成したもので、これにレオンが興味を示して“笛をやる代わりに味方になる”みたいなご都合展開にならないか期待したのだがどうやら失敗したようだ。

でもやる気は削げたので良しとします。

リコーダー分解したあの日が役に立つとは思わなかったよ。

人生何が役立つか分からんもんだね!


「なあついでに言っていいか?」

「なんだ?」

「お前の服、草臭い」

「だろうな、草だもん」


今回の服は動きやすいツバメから借りっぱなしの服にフードのついた外套のようなものを羽織っているのだ。

この外套は昨日サクラたちが集めてくれた“布のような草”から作られている。

この草は2日目にクリスに教わったのものでスリングにも使っており、昨日サクラたちに乱獲してもらったのだ。

色は素材の味を活かした緑色。

匂いは草木の汁を漬け込んで干したので森の匂い。

これを着込めば森に紛れる事間違いなし!

フードをかぶれば顔も隠せる。ノーフェイス・メイキング!


「まあ、それは置いといて……よーしやるかー!エイエイオー!」

「お前の掛け声は何でそんなに力が抜けるんだ?」

「知るか。えーと……出てこねーな」

「何やってんだ?」

「石取り出そうとしてるんだよ……う、く、取れんなちくしょう!」

「石がいるならそこ辺いっぱい落ちてるヤツでいいじゃないか」

「そうはいかん!この日のために用意した石なんだぞ!」

「めんどくせーな。始めたいのか始めたくないのかどっちだよ」


うるせー!俺だってここまで出てこないのは予想外だよ!

確かにレオンの言う通り周りには手のひら大の石がゴロゴロ転がっている。俺のポケットに入っている石と同じ大きさの石も探せばあるだろう。

だがだめなのだ。

この石は特別性!

この日のために黒く塗ってあるのだ!


「取れたー!」

「良かったな、で、何に使うんだその石?」

「この石は始まりの合図に使うのさ」

「合図?」


ああ、今回は鬼ごっこなのでスタートをどうするかに悩んだのだ。

レオンは身体能力の化け物だと聞いている。

村人の目撃証言が正しいのなら、

曰く“一歩で30m以上を飛ぶ”

曰く“ジャンプで10m以上飛ぶ”

曰く“100mを3秒で走る”

……ホントどこの改造人間なんだろう……。

サクラにそのことを話したら『ハザード一族はそれくらい普通に出来ますよ』だって。

つまり昔はこんなのが世界中の戦争で飛び回っていたって事らしい。そんな生物も滅びてるんだから歴史は分からないものである。


話を戻そう。

つまりこの化け物に普通の鬼が10秒数えるルールは使えない。

10秒間俺が必死に逃げても100m行かないだろうし、万が一リミッターブレイクして毎秒10m走ってもこいつは計算上4秒ほどで追いつくのだ。

『オリオンと亀』?だっけ?パラドックスは机上の空論でしかないのだ。


ならば100秒?

残念ながら100秒でも追いつかれる。

今回の目的地は俺とレオンが昨日ばったり会った湖。

S字に曲がった道なりに行けば約800m

毎秒8m、文字なら行けるそうではあるが、俺の50m走のタイムは平均より少し上の7秒台。

約1秒に7mであり、これは後を考えない全力疾走のタイムである。

森は真っすぐぶち抜いて走ると約300m

森には木とか枝とかあるが、肉切り包丁を無傷で受けたレオンには今更だろう。

というわけで3秒

そうするとレオンは俺が二つ目のカーブを曲がったところで俺よりも先に湖に着く。

後は…わかるな?

つまり100秒では俺の全力疾走をリミットブレイク前提になる。

無理である。


では1000秒ならどうだろう?

それなら間違いなく俺が勝つ。

だが相手は災害とすら言われるレオン・ハザード。

納得がいかないとちゃぶ台返しされ、俺は湖の魚のエサになるだろう。


他にも別の人に頼んで合図してもらうとか、運任せに葉っぱが何枚落ちた時とか考えたがすべて却下した。

“細工をした”とか考えてレオンが気に入らなければ結局この勝負は意味が無いのだ。


つまり今回の鬼ごっこは“必ずこちらが勝つ勝負であってはいけない”しかし“絶対に負けられない戦い”という矛盾を抱えているのだ。

個人的には負けていい戦いなど無いと思うが、今回は命がかかっているのでなおさらである。

さて、長々と話したが俺なりに今回の勝負の答えは出している。

つまりレオンが納得する勝ち方ならいいのだ。

納得を何よりも優先するぜ!(レオンの)


「俺にいた世界には“コインを投げて地面に落ちたら決闘開始!”ってルールがあってな」

「ふむ?」

「そのルールを改良して今回は、この石を俺が思いっきり上に投げて地面に落ちたらお前が追い始めるというルールにします」

「ん?それのどこが合図になるんだ?」

「なるほど……。お前さてはバカだな」

「なんだとテメェ!」

「怒るな怒るな、ちゃんと説明してやるから」

「むぅ」

「いいか俺が投げた石は空中を飛ぶだろ……空中ってわかる?」

「それくらいわかるわ!」

「なら良し。そしてお前は石が地面に落ちた時にスタートする。いいか地面だぞ!壁とかに当たってもノーカンだからな!」

「分かった分かった」

「そして俺は石が地面に落ちるまでの間走って逃げる訳だ。OK?」

「?オーケー?」

「……分かってないならもう一回言うぞ」

「いや、いい、大丈夫。つまり石が落ちるまで俺はお前を追えないんだな?」

「大正解。あと石が落ちるまで一歩でも動いたらお前の負けだからな」

「んー?まあいいか」


俺はレオンの言質を取った。

そして俺の命を預けるのはもちろん俺の強肩……ではなく、


「スリングって知ってるか?」

「なんだそれ?」


もちろんスリング先生。

ジャイアントキリングは古代より投石と相場が決まってる。

殺したいわけじゃ無いけど。

俺はその辺の石を布に入れ振り回し実演する。


「こうやってブンブン振り回して……」


“ビュン!”

“バッカーン!”


「おお!なんだ今の!もう一回やって!」


おお食いついた!

やっぱりこういうのは知らないか。

コイツ狩りとか道具使わなそうだしね。

その後3回ほど石を壁にブチ当て粉々にした。


「どうだ!これなら貧弱な俺でも高く高く石を飛ばせるのだ!」

「おお!すげー!」


パチパチと拍手までしたレオン。

ドンだけ食いつくんだよ。

ぶっちゃけ布と石があればだれでもできるぞ。


「じゃ始めますか!」

「おー!」


これから命がけの鬼ごっこをするとは思えないテンションだ。

そんなテンションの中、取り出したのは黒い石

今日のために普通の石をあるもので塗って黒くしたのだ。


「なんか黒いな?」

「これなら落ちてくるとき分かりにくいだろ?」


一昨日の蛇、アレが落ちて来る直前まで気づかなかったのには理由がある。

あの蛇黒かったのだ。それこそ腹の部分まで真っ黒。

黒い影の中に黒い蛇、そりゃ見つかりにくいわ。

ほとんどの時間帯で太陽の見えない、影ができやすい谷ならではの進化だろう。

それに倣い真っ黒にした石は手元で光を鈍く反射している。

布で包みブンブン振り回しながらレオンを見ると、俺から10歩ほど離れた場所で待機していた。

ちなみに俺基準で10歩だ。


「じゃあな、思ったより面白かったぜ」

「そんな事ないさ、これからが面白いんだぜ」


勝負前の短い言葉を交わし俺は体を身構える。

狙いは斜め上、谷から突き出すように生えた細い木。

さあ、勝負だ!


“ブンッ!!”


風を切る音と一緒に飛び出した黒い石は俺の目標通りの弧を描き……


“ボスッ!”


「ん?」

「よっし!」


見事石は木に引っかかった。


「よっしゃー!大勝利かーくてーい!」

「え?」



「いやーすみません!頭良すぎてすみません!」

「オイ待て、アレは無しだろ」


嬉しそうに俺に謝るコイツは満面の笑みだ。

俺の斜め後ろ上に生えている木に引っかかった石はどういうわけか全く落ちてくる気配が無い。

いや、少なくとも無効だろう?普通そうだろ?

だって木に引っ掛かるなんて普通予想しないだろ?

そう言って近づこうとするとコイツは手を前に突き出し


「おっと動くなよ、石が地面に落ちていないなら勝負は続行だ。一歩でも動いたらこの勝負は俺が湖に着く前に勝負が決まるぞ?」

「な!」


ニコニコと笑いながら言ったコイツはジリジリと後ろににじり歩く。

ゆっくりと俺から離れ、そして急転するといきなり走り出した。


「ワハハ昨日言っただろ!どんな手を使っても勝つって!俺がゴールするまで動くなよ!見張ってる奴がいるからな!」


走りながらそう言って離れていくアイツは“ワハハワハハ”と笑いながら谷から抜けていく。

しかしアイツは勘違いしている。

俺が動かないのは別にルールに則っているからではない。


「(あの野郎ぉぉ!!なめやがってぇぇ!!)」


最初は呆気に取られて、アイツが離れていく頃は怒りで爆発しそうで。

俺は掌を力の限り握る。


「上等だ。上等だよ。そっちのルールで潰してやるよぉぉ!!」


そう言って目の前の石を拾いあげると、

勢いのまま体をひねり、

あくまで足は動かさず、

全力で投げた。


“ドオォォォォン!!”


爆発音とともに細木は消し飛び、木のくっついていた壁は吹き飛んだ。

木に引っかかった石ももれなく消し飛んだだろう。

俺は上を見上げるとそこにいるはずの人物に声をかける。


「見張り!!」

「は、ハイ!」

「動いていいか?いいよな!いいって言えぇぇ!!」

「ハイィィ!!」


泣きそうな声で返す見張りの存在は最初から気づいていた。

いつもはしない人間の匂いが崖の上からしていたからな。

しかし今はどうでもいい。

あの野郎に地獄を見せる方が先だ。


「ブチ殺してやるぞぉぉ!!」


“ドォンッ!”と地面が爆発する音を聞きながら、俺は跳躍し3歩で谷から飛び出した。



「ヒュウ―、流石というかなんというか」


上に配置したダニエルが松明を二回回す、“ウゴキアリ”の合図だ。

予想以上に速いなー、もう少し持つ思ったのだが。

しかーし、


「こちらも準備完了。さあ勝負だ災害」


俺は先ほどのレオンに見せたわざとらしい笑いを止め、ニヤリと笑うと深くフードをかぶった。

レオン・ハザード攻略戦開始!

そして前回までのタイトルは長すぎたので変更しました

こんな風に時々変更していくことがあると思いますがご勘弁を

次回は金曜日の予定です

感想コメントもらえると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ