2-5 本物の戦争
さあ始まりだ(???)
「ガーーーーラーーーー!!」
戦場に怒声が響く
声の主は東村の村長を務めるベンジャミン・リンカーン
その声と共にベンジャミンは駆ける
「来たか」
怒りをもって剣を振るうベンジャミンにその人物は静かに相対した。
ガギィン!!
戦場に金属音が響く、二度、三度
剣と剣の摩擦で火花が散る、二度、三度
接触した二人は一進一退の攻防を行い
ベンジャミンが相手を弾き飛ばしたことでいったんは決着をする
弾き飛ばした方も弾き飛ばされた方も攻防での傷は無い
ベンジャミンは相手に問いかける
問われたのは“ガラ”と呼ばれた中南米風の男
「ガラ!!これはどういうことだ!!」
「ベンジャミン、これは生存競争なのさ。あきらめて死ね」
「ふざけるな!!」
怒声と共にベンジャミンは再び飛び掛かった。
◇
「ハッ!ハッ!ハッ!」
俺は戦場を駆けていた。
文字通りの意味だ。
平和な日本ではありえない話だが、俺は今戦場を走っているのだ。
「どうなってる?どうなってる?どうなってる!?」
俺は必死に問いかけるが、返ってくる答えはない。
一昨日俺が見たものは間違いなく戦争ではなかった。
アレはたぶん諍いとか争いとかウォーゲームとか言われるものだ。
だが、今日行われていることは“戦争”だ。
ゲームで見るような銃や爆弾がはじけることは無いが、矢と槍と剣で行われる、血しぶきが舞い絶叫がこだまする、命が次々と失われていく、それは間違いなく戦争だった。
「ハッ!ハッ!ハッ!」
俺は必死に走っていた。
少しでも早くこの戦場から逃げ出すため。
この戦場は左右を岩壁で覆われているため逃げる方向は前か後ろに限定される、そして前が相手側なので、必然的に後ろ…簡単に言うなら回れ右して全力ダッシュである。
戦場は約1.6㎞で、真ん中あたりで敵とぶつかったから距離にして約800m。
全力疾走すれば5分とかからないはずの距離は今は極めて遠くなった気がした。
…いや遠いのは当たり前か、戦場をふらふら走りまわって、まっすぐ走ってないんだからな。
一応理由はある、矢とか槍とか後ろから飛んでくるときにまっすぐ走れるわけないじゃん!
そんなツッコミを心の中で行っていると後ろでひと際大きな悲鳴が上がった。
「う、うわぁあ!こっちに来るニャッ“グチャ!”」
「なんだこの怪物h“グチャ!”」
「やめろ!やめてくれ!殺さないでk“グチャ!”」
後ろを振り返るとそこには“怪物”がいた。
その巨体は明らかに異常なほど大きく、小さな人間二人分はあるだろう。
肩幅はさらに大きい、普通の人の何倍あるのだろうか?
大きく太ったその体に返り血を点々と浴び、その手に持った異常な大きさをした武器は体の比では無いほど血に染まっていた。
怪物の足元には先ほどまで叫んでいたであろう死体が真っ二つにされ、首を飛ばされ、ミンチにされ倒れている。
「やれ!ブッチャー!奴らを血祭りにあげてやれ!」
怪物の後ろで誰かが叫んだ。
そして怪物は明らかに普通の大きさとは違う肉切り包丁を持ってこっちを見た。
◇
「う、うおおおおぉぉぉお!!こっちくんじゃねーよ!!」
「ああぁぁぁ!」
怖い怖い怖い!
何だあのホラー映画から飛び出てきたような怪物は!!
身長3m肩幅1.5mってどんな人間だ!!それとも人間のか!!
それより“ブッチャー”ってどんなネーミングセンスだ!
肉切ナイフの“ブッチャーナイフ”から命名してるのか?!
完璧だよ!
完璧にハマってるよ!
あいつ以外にハマるヤツいないくらいハマってるよ!!
つーか何で俺はあいつに追いかけられてんの?!
先祖が何か悪いことした?
じゃあ悪いと思うから!
思うから追っかけまわすのやめて!!
ほら諺で言うじゃん、「長崎の仇を江戸で打つ」だっけ?そういう事!!そういう事だから止まってよ!!
全力疾走、その言葉を体現するような走りで俺は戦場を駆け抜けた。
戦場の草原を踏みつぶし、倒れている人間を見殺しにして。とにかく走った。
しかし走っても走っても怪物は追いかけてきた。
そしてどれだけ走ったのだろう?5分くらいだった気もするし1時間走ったと言われても納得するくらい全力で走った。
お互いが息も絶え絶えになるころ、ついに俺は追い詰められた。
戦場を大きく横断したらしく、俺が落ちた森の反対側、岩山を背にした岩壁に追い詰められた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「ブフー…ブフー…」
…あー死ぬなコレ
走りすぎてもう動けんし、
何ならこいつ包丁振り上げてるし。
少なくともここから逆転なんてことができるほど俺は強くない。(強かったとっくに戦ってる)
あーあ、せっかく転生したのにここでまた死ぬのか、せめて俺が死んだらループする設定になってることを祈るか。神様にもらった記憶はないけど。
そう思って壁に背を預け俺は空を見上げた。
振り上げられた包丁から目をそらすためなのか、それとも運命なのか、俺は何か光ったのを上に見つけた。
「あれなんだ?」
俺が見上げた先を指さすと、ブッチャーも上を見上げた
ヒュー――――――――――――――――
何か近づいてくる?…いや降ってくる!
ド―――――ンッッッッ!!!!
地面が爆発した、
俺たちの前に降ってきたソイツは金と銀のまだらな長髪を振り乱しながら立ち上がる
訂正しよう、ブッチャーは怪物では無かった、“怪物”にふさわしいのはこっちだ。
俺はそれをまざまざと見せつけられることになる。
◇
「レ、レオンだぁー!レオン・ハザードが出たぞぉーー!」
誰かが叫んでいる
レオン・ハザード?……昨日聞いた世界最強の怪物か!
そういや岩山に住んでるとか言ってたな、何でこのタイミングで降りてきたのかは不明だが助かった!戦争は終わりだ!
レオン・ハザードが来たら戦争は終わり、両陣営が決めたルールだ。
…でもそれ破ったからこういう血みどろの戦いになってるんだよな……。大丈夫かな?
俺の心配をよそに西村は引き始めた、もちろん東村も。
戦いは無事に終結しつつあるらしい。
“助かった”と、ほっと胸をなでおろすが俺の前にはブッチャーがいる、こいつから離れない限り俺に平穏はない。
ゆっくりと逃げ出そうとすると
「うああぁぁぁあ!!」
何を思ったかブッチャーがレオン・ハザードに飛び掛かった。
肩口に振り下ろされる極太の肉切り包丁、俺はレオン・ハザードが死んだと思った。
しかし
ゴギィィン!!
何か岩盤でも叩いたような音がして肉切り包丁の方ががはじかれた。
「あ?なんだお前?俺と遊ぶか?」
振り下ろされた勢いでよろめくこともなく、そう言って振り向いたレオン・ハザードの顔は心底嬉しそうで、
ヤツが振り向いた瞬間、ゴオゥ!と風が吹いた気がした。
俺はヤツの前面に立っているわけでもないのに汗がダラダラと湧き出た、
心臓が早鐘を討っている、
ニゲロ!ニゲロ!ニゲロ!
誰かが言った気がした、もしかしたら俺が言ったのかもしれない。
「う、うあぁ、うあああああああ!!」
半狂乱になったブッチャーが肉切り包丁を振り回す
レオン・ハザードはそれを全てガードもせずに受ける
首に、腹に、右腕に、左腕に、右肩に、左肩に、胸に、腰に、頭に、受ける
ゴインッ!ガインッ!ギャインッ!
そんな金属音とも摩擦音ともつかない音が何度かして
バギィィィィン
ブッチャーの肉切り包丁が折れた
空中を飛び地面に刺さる極太の刃を唖然として見守ったブッチャーに声がかかる
「オイ、これで終わりか?…じゃあ行くぞ」
その言葉がかかるや否や
ドォンッッ!!
大きな爆発音がして俺の顔に“ベチャベチャ!”っと液体が掛かった。
それがブッチャーの血液だと気付くのに俺は2秒ほど時間がかかった。
見上げた岩壁、約5mほど上
そこに埋め込まれたのか染みになったのか分からない状態になったブッチャー
ブッチャーガシンダ?
ナンデ?
一撃、俺が逃げ惑るしかなかった相手はたった一撃で死んだ。
「オイ」
放心状態の俺に声がかかる
「オイお前。お前も遊ぶか?」
俺は目の前が真っ暗になった…
◇
「ふ、フフフ、フハハハハハ!!フハハハハハ!!」
俺は立ち上がり回れ右して全力Bダッシュ
幸運なことにレオン・ハザードは追いかけてこなかった
「アキラ!よかった無事だったのか!」
撤退するベンジャミンに合流する、どうやら俺たちは最後尾らしい
“アレダ”
「ベンジャミン、この戦争を終わらせる手段を思いついた」
「え?」
“アノチカラダ”
俺は走りながらベンジャミンに宣言する
「レオン・ハザードを味方につけよう。それでこの戦争は終わりだ」
「はあ?!?」
“アノチカラガホシイ”
アキラが本格的に動き始めるのもここからです
2章は限界まで毎日更新です
最近更新を普通に遅らせる自分が嫌いです




