2-4 毒草とパフォーマンス戦争
降りるのはけっこう久しぶりかな?(???)
「おはようございます!」
「はい、おはよ」
朝一番にサクラに起こされ、(見た目がアレな)朝ごはんをいただくことで俺の新世界生活二日目は始まった。
……一応昨日も新世界生活二日目だったんだよな……。
何ていうかスパン短くない?もうちょっと生活させてよ。
転生したからトラブル体質にでもなったのかなー?
ま、転生前もやらかしたことはいくつかあったけどさ。
「どうしましたアキラさん?何か食べられない物でもありましたか?」
「いやちょっと考え事してただけ。大丈夫おいしいよ」
「そうですか!」
そんな花の咲くような笑顔を童貞のまま死んだ青少年に向けるのはやめなさい。
うっかり手を出されたらどうするんですか。
というかこの子も一昨日会ったばっかの男と同棲してんのに一切警戒しないってのは随分と不用心だよな、別に手なんか出さないけどさ。
もしかしてとんでもなく強いとか?ハルマの娘だしありえなくはないだろうけど……
「なあサクラ」
「はいなんでしょう」
「サクラって強い?」
「あぁ……」
何そのため息とあきらめの混じった感じの言葉
「よく聞かれるんですよソレ……」
「ソレ……」
「『ハルマ・クイートの娘なんだから強いの?』とか、『武術やってるの?』とか、そろそろうんざりしてくるんですよね……。お父さんは別に武術とかを強要したことは無いんですけど」
「へー、でもツバメは?」
「お兄ちゃんは勝手にお父さんについて行ってるだけです。お父さんはお兄ちゃんにも強要したことはありません」
「ほー、でもツバメ結構強かったと思ったけど」
「お兄ちゃんの強さはどうあがいても“達人級下位”でしょう、強い人なんて他にも…それこそ王都にでも行けば山ほどいますよ」
フーン、ツバメってあれだけ派手に暴れたのにまだまだ弱いレベルに入るんだ。
やっぱりこの世界、修羅の国じゃね?
それよりも気になる単語が出て来たな。
「サクラ、“達人級下位”ってなんだ?」
「ん?ああ“達人級”ですね。この世界の簡単な強さを表す単位みたいなものです。十人力以上で“達人級”、百人力以上で“軍団級”、千人力以上で“災害級”、一万人力以上で“天災級”。桁が上がれば呼び名が変わる、簡単でしょう?」
「じゃあ“下位”ってのは?」
「それは“級”(クラス)をさらに細かく分けたものですね。下位は1~3、中位は4~6、上位は6~9。後ろに該当級の何人力をつけて考えるもので、10まで行くと上の級に、ってところですかね?」
「じゃあツバメは10~30人力か?」
「はい、正解です」
パチパチパチと拍手をしてくれるサクラ。
これ位ならハルマでもできそうなんだが………出来るかなあいつ?
それにしてもツバメの強さは最大30人力か、ヤンキー1クラス分くらいに考えとこ。
ちなみにハルマの狩ってきたのイノシシは10~20人力とのこと。
ヤンキー20人であのイノシシを倒せるかは知らない、この世界の人間なら可能だろう。
“じゃあハルマは?”って聞いたら意外な答えが返ってきた
「分かりません」
「分かりません?」
「というかお父さんが本気で戦ってるとこ見たことないですから」
家族にも本気を見せたことないのか……。
アイツそんなに秘密主義だっけ?と思っていると続けてサクラが、
「お父さんは『本気になれる相手が西部にはいない』って嘆いてましたから、多分そういうことです」
「あいつホントどこまで強くなってんの?」
結果ハルマの土星での位置付けは“強いのは間違いないけどどれだけ強いか分からない人”らしい。
何そのジョーカーみたいな立ち位置。カッコイイ
ちなみに理由は若いころ国中の強いやつとバチバチに戦って、その相手が今もかなりの強さを誇っているから。
王国の地域別で西部最強になるんだとか、アイツホント何なの?天才?そう言えば天才だったね。
「それよりアキラさんそろそろ約束の時間が迫ってるのでは?」
「あ!そういやそうだった!」
本日は戦争も無い日なのでクリス達に食える野草とかを教えてもらうことになってるんだった!
気づいた俺は急いで朝ごはんを掻き込んだ。
◇
「おはようございます。時間ぴったりですね」
「おうおはよ」
「おはようございます」
集合場所である森の淵に行くとクリスが待っていた。
ちなみにベンジャミン達は居ない、村長として戦争の準備とか色々あるらしい。
やっぱ戦争は面倒だな。
「では行きましょう。道は一応開いていますが草の棘に気を付けて」
「「ハーイ」」
元気なお返事と共に森に入る。
今回俺だけでなくこっちの世界生まれで野草を日常的に食しているサクラも野草について習うのは訳がある。
この世界、他の世界とのつながり無かった閉鎖的な環境だったせいか、植物がかなり独特な進化をしているらしく場合によってはサクラでも危ないことがあるらしい。
そんなわけでサクラも一緒に野草取りをすることになったらしい。
「今回はサクラさんがいるのでありきたりな植物は咲けて、特に注意する必要のある植物…毒性の強かったりするものを紹介していきますね」
「ハーイ、先生ちなみにどうやってその植物が危険だってわかったんですか?」
「兄さんの二つ名『先頭』は集団の中で一番だと能力が上がる力です。そんなわけで兄さんに率先して食べてもらいました」
どんな訳かは知らないがベンジャミンは人柱になったようだ。南無。
能力を上げた状態で植物を摂取することで死ぬ危険性を下げたって事かな?
どっちにしても南無南無、
ん?あっち風に言えばアーメンか?
死んでないからどっちでもいいか。
少し行くとクリスが立ち止まってしゃがみ込む、その先には鮮やかに緑をした野草が
「ではこれを見てください。サクラさんは分かりますか?」
「はい、“ミドレラ草”ですね。ギザギザの葉っぱが特徴的で、食べられる野草でも一般的なものです。主に汁物に使われます」
「完璧な回答です」
「やった!」
「…ミドレラ草ならですが」
「え?」
そう言うとクリスはそのミドレラ草なる草をむしった。
草からは血のように赤い汁が流れ落ちる。
「これは“ミドレラ草モドキ”と言うこの世界の固有種です。本来のミドレラ草なら汁は緑色なのでそこで見分けてください」
「へー、ちなみにこれは食うとどうなるの?」
「お腹を壊して最悪死にます」
「へ?」
いきなりとんでもない言葉が飛び出した。
「この世界に飛ばされたメンバーで最初期の人間にこの世界の出身の人がいました。その方はこの野草を食べて真っ先に死にました。それどころかこのパンデミックは東西の村人を合わせて22人の村人は殺し、残った人も腹痛で1週間ほど動けなくなった人が続出しました」
「え?うそ?マジ?」
「マジです。ちなみに兄さんは一番最初に食べて3日ほど下痢が止まらなかったので、これは使えると現在も人柱に使っています」
やっぱり人柱だったのか、それよりもマジかそれ?毒性が強いなんてものじゃないだろ。
「この事件を機にどちらの村でも昼食・夕食は大皿二つ用意して食べるものを村人で分けなければなかったんです。半分は最悪死んでも、もう半分で回せるようにと」
何だろ、飛行機の機長・副機長は機内食を二人別々のを食べるって話を聞いたことがあるがそれの笑えないバージョンかな?
最悪が“死”なのが笑えない。
“一応そんな事態は起きてないんですけどね”とクリスが続けたが怖すぎる話だ。
ちなみにそれは優秀な人柱がいる東村の話だそうで、西村は同じような事件を2・3度起こしているそうだ。
クリス達がやってきたのは半年前と聞いてるので半年の間に村人4~50人殺してる毒草達。
初めて間近に感じた植物の強さに背筋が凍えたよ。
その後半日かけて特に注意する毒草を聞かされた。
“あの草は燃やすと中毒性が高い煙を大量に出す”とかあの草はこの草と混ぜると飛んでもなく毒性が強くなる“とかリアルに聞かされたのは初めてだよ。
一応日本でサバイバルに憧れた時サラッと調べた食べられる草とかはほとんどなかったよ。似た草はあったけどもれなく毒草だった、しかも食べるとラりるヤツ。
ホントこの世界修羅の国なのかな?植物すらたくましいってどういうことだ。
だが毒草以外にも面白い知識を聞けたのは良かったな。
布のような草や水につけるとゴムのようになる木の蔓、自力でお酒を造るウツボカズラ似の植物などサクラも知らない固有の植物も多かった。
ゴムみたいの伸びる蔓はもらってきたのでパチンコ強化しよっと。
◇
その夜
俺たちは村に戻るとまた歓迎会を開かれた。
こいつら理由つけて飲みたいだけじゃねーの?
お酒は今日も遠慮した、さっき製造元見ちゃったから余計ね。
俺が果実水をのんでいるとベンジャミンが話しかけてきた。
「よう!楽しんでる?」
「まあね、それより明日は戦争だろう?いいのか酒なんか飲んで」
「いいさ別に、明日もお遊びの戦争なんだから。危険ならもっと別に有るけど…」
「なんだ危険って?」
「この世界で最強の怪物さ」
そう言ってベンジャミンが話し出したのは驚くべき話だった。
その怪物は俺たちが落ちた森の対岸に位置する岩山に住んでいて、その崖から飛び降りて、まさに戦争に飛び入り参戦し、両陣営を相手取り大暴れする、とのこと。
30mはある崖から飛び降りるだけでも信じがたいが、そいつはこの戦いで一度も傷を負ったことが無いらしい。
それは飛んでくる矢や槍を全てよけているとかではなく、逆にすべての攻撃を受けてなお傷一つないらしい。
一度ベンジャミンが全力で槍を突いてみたがそれでも傷一つ突かず撤退を余儀なくされたとなこと。
両陣営は話し合い“アレが出たら戦争は終わり、とにかく逃げる”ということで合意したそうだ。
…なんだその戦術核みたいなのは。
小さな世界とはいえ単体で戦争を抑止するとは…本物の化け物だな。
ソイツの名は『レオン・ハザード』まごうことなきこの世界最強の怪物である。
◇
深夜0時
それは西村での会話
一つのテントで二人の人間が話している。
一人は鍛えられた体をした30代くらいの中南米風の男、もう一人はごく普通のどこにでもいそうな青年
男が先に口を開く
「そうしなければならないんだな」
「ああ、ぼくもいい加減嫌気がさしてきたんでね。その代わり約束は守るよ」
「分かっている、俺にはそれしかない。だが断った場合どうする気だった?」
「もしもの話かい?実力行使さ」
「何?」
「あれ?君ならわかると思っただけど分からない?僕は強いよ」
そう言うとその青年から風が吹いたような気がした。
男は汗を吹き出し椅子から崩れ落ちる。
「な、はっ、や、やめてくれ!お前の強さは分かった!」
「ありがとう、あんまり“コレ”使いたくないから分ってくれてうれしいよ。それじゃあ頑張ってまとめてね~」
そう言って青年は席を立った
男は慌てて質問をする
「ま、待て!お前は何者なんだ?」
「ん?最初に言っただろ?“神”さ」
そう言って赤髪の青年は姿を消した
◇
「いやーいい戦争日和だなー」
「戦争に良いも悪いも無かろうに」
「ハハハ!そりゃそうだ!」
俺がこの世界に来てから3日目
ついに俺は戦争に参加する。
東村では戦う力を持つ男衆は200人ほどだが、もしもの時に備えて50人ほど村に残しているそうで、この戦場にいるのは150人である。
向こうの西村サイドも戦争の準備をしているのか兵を配置しているがこちらよりも多い気がする。実際多い。
人数差を拮抗させているのは二つ名持ちらしくこの戦争には村の二つ名持ちが全員出撃している。…と言ってもベンジャミン達3人+俺だけど。
初めての戦場、と言ってもお遊びなので滅多なことでは死なないらしく、矢は矢じりが無く、槍は先が丸まっているらしい。
“気楽に行け”って言われたのでそれなら気楽にいこう。
横でへらへらしていたベンジャミンの顔が変わった
「正午だ行こう」
それだけ言うとベンジャミンが前に出た。
それを皮切りに多くの兵士が声を上げながら進撃する。
矢が飛び、槍が突かれる。
「おーーーーーー!!」
俺も適当に叫びながら持った槍に力を入れながら走る、
するとどこからか飛んできた矢が隣で走っていたやつに刺さった。
刺さった?
「え?」
「ぎゃーーー!」
「痛い!痛い!」
「なんであいつルュ!」
何か叫ぼうとしていた兵士の頭に矢が刺さって倒れた。
前線では西村の槍に刺された兵士が血を噴き出している。
これは…
これは……!
「ほんもの?」
新世界生活3日目
俺は本物の戦場に巻き込まれた。
偽りの戦争が終わった。
遅れて申し訳ない!
書いてると辞め時が分からなくなってしまったんです。
2章は限界まで毎日更新。




