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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
23/111

2-3 少数派脱出組

この世界はとても暮らしやすい、だけどうまい話には裏があるのだ.....(クリスチャン・リンカーン)

「君たちに頼みたいことがあるんだ」


ベンジャミンは真剣な顔でそう言うといきなり頭を下げた。

ゴチンと音を立てそうな勢いで頭が机に当たる。


「頼む!協力してくれ!」

「待て待て!いきなりなんだ!」

「僕たちはこの世界から出ていきたいんです」


クリスが言葉の足りない兄を補足するように言った。

出ていきたい、なるほどね。

歩きながら微妙な顔をしていたのはやっぱりそう言うわけか。


「だったら何で俺たちにそれを明かす?」

「あなたは二つ名持ちでしょう?それなら元の世界に戻ってもデメリットは無いはずです。それにサクラさんは姓が“クイート”、この世界の苗字で転生者ではないと断言できますから」

「違う。さっき会ったばかりの人間になぜそんな大事なことを明かすかって聞いてるんだ」

「っ…それは」

「単純に人が足りてないからなんだよなぁ」

「全然足りませんもんね」

「というかぁ!!20人も言ってないぃ!!」


おい………


「い、いえ、そのなんというんでしょうかこの世界はとても居心地がいいので元の世界に未練の無い人はあっさり受け入れてこの世界で天寿を全うしようとするんです。だからこうやって帰ろうとする人の人数は少なくて.........」


だんだんと小さくなる声でクリスが言い訳みたいな事をする。

こいつらあんまり内情を知らない人間を自分たちの派閥に巻き込もうとしたな。

というかこんな狡い手に引っかかるヤツいるのか?

まあ、


「まあいいけど」

「え!!」

「なんで驚くんだよ」

「だってこの手段で入ってくれた人がいなかったもので……」


やっぱりか。

もう方法変えろよ。


「別に俺はお前らに誘われなくても帰還方法は探すつもりだったから別にいいよ」

「本当か!ありがとう!」

「…で脱走計画はどこまでいってるんだ?」

「…………」


それを聞いた瞬間全員が黙った


「オイ、なんだその間は」

「えーっとですね、西村のこの世界から出ていきたい人間と連絡してるくらい…です…かね」

「やっぱさっき言ったことは取り消しで」

「待って!待って!」


えぇいまとわりつくな!

だってそれほとんど何もやってないのと同じじゃねーか!

大して距離も離れてない村との連絡だけって子供のおつかいか!


「これでも最初よりは進歩したんです!だってそうでしょ!パフォーマンスとは言え戦争やってる村と秘密裏に連絡できるんですよ!これって結構アドバンテージだと思いませんか!?」

「知らん!それなら新しい人間が落ちて来た時、近い場所にスパイでも送り込めば勝手に拾っていくだろ!」

「そんな汚い真似は出来ん!」

「戦争にきれいもキタナイもあるかーー!」



結局こいつらの脱出計画は計画とも言えないレベルだと分かった。

そもそも半年前にこの世界に来てから脱出組と残留組に分かれていたそうだが、時間が経つにつれ村人のほとんどがこの世界に気に入ってしまい最終的には最大100人を超えていた脱出組のほとんどが残留組になってしまったらしい。


「引き止めろよ」

「兄は優しいので…」

「優しさって時に自分を傷つけるよね」

「はい………」


元々考えていた計画など出来なくなってしまいとにかく人を増やそうと今回のような小狡い手を使ったとのこと。

まあ、人手が足りないのは面倒だよな。

大衆の意見って強力だし。

多数決って便利だし。


「で、この状況か?」

「はい、東村の脱出組はお二人に入ってもらえれば20人。今の東村の人口が約400人なので0.5%になります」

「あんまり威張れる内容じゃないよな」

「はい………」


そうかー脱出組は弱小派閥かー。

どうしよっかなー。

ちなみにこの世界も次元の裂け目が発生するらしいが、一度見つけたらしいが5分も持たず消えてしまったらしい。

サクラは裂け目は100年単位で持続すると言ってたので不思議ではある。

一度見つけた時は持続するものだという認識でいたから帰るチャンスを逃したとのこと。


「あなた達はどうあっても帰ろうとしますか?」


クリスが聞いてきた。

不安なのだろう自分たちが弱小派閥と知られて。

だが俺の意見は変わらない。


「帰るよ。俺一人ならともかくサクラはハルマの所に送り返さないといけないから」

「私もアキラさんの意見を尊重しますから脱出組です」

「そうですか…」


そう言うとクリスは安心したのか少し笑った


「とりあえず常識的な意見を言ってくれるあなた達が味方になってくれてよかった。今日はお疲れでしょうからお休みになってください」

「どこで?」

「こういうときのために家は多く作ってあるのでそこに、お二人は同じ家でいいですか?」

「いや「はい良いです!」


サクラなぜ断言するんだ?

俺の疑問をよそに外に出される俺たち案内役は声の大きいペドロ。


「よろしくぅ!!」

べちゃべちゃべちゃ!


俺を唾が襲う


「…うんよろしく」

「…よろしくおねがいしますね」


俺が守るように前に出ていたのでサクラには被害は無い。

おっさんの唾で美少女を汚すわけにはいかないからな。

というかそろそろ文句言っていいかな?


「おいおっさん唾が飛ぶからあんまり叫ぶなよ」

「おっさんとはなんだぁ!!俺はまだ23歳だぞぉ!!」

「「ええ!!」」


俺たちが驚くのは当然だろう。

だってどう見ても40代にしか見えない。


「俺は二つ名を獲得するのにぃ!!2年ほどかかってぇ!!こんなにもぉ!!歳をとってしまったぁ!!だがぁ!!今では満足しているぅ!!」


へーやっぱり10倍の速度で年をとるって大変なんだな。

恐らく寿命も大幅に縮んでいるとのこと、身近にいる転生者がハルマだけであいつは普通に年を取っていたから感じなかったけど改めてこの世界の大変さが分かった気がしたよ。


少し行くと一軒の家の前で立ち止まったペドロがこちらを向いた。

サクラを後ろに距離を取る。


「ここがぁ!!お前たちの家だぁ!!俺が作った家だからぁ!!大切にしてくれぇ!!」

ぺちゃ


唾が地面に落ちる

良し!被弾は最小限に抑えた。

俺は少しガッツポーズ、それを見ているペドロはなぜか首をかしげている。

コイツ自分のやってることに何か疑問を抱かないのか?

思考すると怒りが返ってきそうで面倒なので考える事を変えよう。

そうして俺は視線をペドロから家に移す。

それにしてもこの家そこまで大きくないな、

寝る部屋は分かれてるといいんだが。


“今晩は歓迎会だからな!!”と言っていたペドロと別れ、家に入って分かったが部屋は二つしかなかった。

リビングルームとベッドルームだけ、しかもベッドは一つしかない。

俺たちはこいつらに俺たちの関係性を教えていないので文句は言えないが、欲を言えばベッドは二つ欲しかった。

若い男女同じベッドで寝かそうとするってどういう事なんだろ。

仕方ない…


「サクラベッドではお前が寝ていいよ。俺は地面でも寝れるから」

「いえ大丈夫です!一緒に寝ましょう!」


いえサクラさん俺が大丈夫じゃないんです。

具体的にはハルマとかツバメとか……そのあたりが大丈夫じゃないんです。

別にサクラに欲情するわけではないが、あの二人にバレたら俺はもう一度転生の機会に恵まれるかもしれない。

転生系に憧れていなかった訳ではないが流石に2度目はいやだ。

最終的に地面に敷布団を敷いて寝ることでサクラは折れてくれた。

俺の未来は助かった。


その夜、歓迎会と称した飲み会に招待されたが俺は未成年なので飲酒は遠慮し、料理ばかり食べていたらなぜかブーイングを食らった。

別にいいだろ酒なんて飲まなくても。



飲み会が終わり

あてがわれたばかりの家に帰ると俺は元々用意されていた机に倒れこんだ。


「疲れた」

「そうですね、何か暖かい飲み物でも入れましょうか?」

「いや大丈夫大丈夫。サクラは疲れてないの?」

「ええ、飲み会は村でも時々あったので慣れてると言った方が良いですけど。ああそうだお酒と言えば……知ってました?お父さんは一滴も飲まないんですよ」

「え、なんで?あいつザルだったよな?」

「お父さん、お母さんと結婚する前にお酒臭い人は嫌いと聞いてから一切飲まなくなったみたいです」


ほーう

あのハルマがね、あいつ中学の時も何回か飲んでるとこ見たことあるけどな。

俺も一回だけその場のノリで飲んだことがあるがあんまり美味くなかったって事しか覚えてない。

“あの時は凍夜の件で大変だったんだよなー”

そう言うとサクラが食いついてきたので子供の時のエピソードをいくつか話してやったら楽しそうに聞いてた。

こんな話がウケるとは思わなかったが美少女の笑顔が見れたので良しとしよう。


明日は飲み会にクリス達が参加していたので近くの森で食べられる野草の見分け方などを教わる予定を取り付けた

次の戦争は明後日なのでそれまでの息抜きとしよう。



ちなみにアキラも酒には強い設定です。

2章は限界まで毎日更新!

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