2-1 新しい世界
新しく降りてきたのはどんな人かな?(ベンジャミン・リンカーン)
チチ…チチチチ…
遠くで聞こえる小鳥の声に耳を澄ます
あー何かこんな事最近あったような?
「ん?」
目を覚ますとそこは
「知らない天井………どころじゃねー!」
青空の下だった。
◇
「えー?どういう事?」
俺はさっきまで馬車に乗ってたよね?
いや周りの木片みたいなのは馬車じゃないよね?
というかさっきまで夕方だったよね?…いや?俺は最後なにしてた?いきなり記憶が無いんだけど。気絶?睡眠?
俺の周りにはバキバキになった木片と眠っているサクラ……ツバメがいないな?あいつどこ行った?
少なくともこの状態では手掛かりが無さすぎる。サクラを起こそう。
「おおーいサクラ?サクラさーん?」
「んっううん………アキラさん…?朝ですか?」
美少女が寝ぼけている。かわいい。
………見とれてる場合じゃないな。現状について聞いとかないと。
「サクラ起きて早々だけどここがどこか分かるか?」
「え…?んん…??分かりません、家の近くの森ではこんなに木は低くないです」
ぐぅ最初から当てが外れた。
俺がこの後どうするか考えていると、サクラが気づく。
「あの、アキラさん?お兄ちゃんはどこに…?」
「それが俺にも分からんのだ、俺が起きた時にはいなかった」
「ええ!お兄ちゃんが私を置いてどこかに!あの鬱陶しいほど過剰な愛を押し付けてくる兄が!!!」
あぁ………やっぱ鬱陶しいとか思ってたんだ……。
ホントに報われないなアイツ。
しかし確かに変ではあるな、二日しか一緒にいなかった俺でもわかるほどツバメはサクラにベタベタだった。そんなヤツが最愛の妹を置いてどこかに行くか?
サクラと意見を擦り合わしていると奇妙な点は他にも見つかった、まずこの場所。
俺はハルマ達の村の近くの森かと思ったがサクラも知らない森らしく少なくとも自分の村の近くではないらしい。
次に俺たちの記憶。
馬車で世界の話しをしていたことは思い出せるのだが、途中から記憶が無い。サクラはツバメの声が聞こえたらしいがどういう状況で聞こえたか理解していないらしい。
最後に馬車である。
俺達が目覚めた時、大量の木片の上に横たわっていた。
バッキバキの木片だ、間違いなく変だろう。ちなみに服に入って地味にチクチクする。
サクラはこの木片を探ってみたところ自分たちの乗っていた馬車だと断言した。
木片の一つに家族の名前が彫ってあったらしい。そこにはハルマ、サツキ、ツバメ、サクラと彫られていた。
サツキと言うのはハルマの奥さんでサクラたちのお母さんらしい、少し前に亡くなったとか。
結局この場…見える範囲に…他には何もなく、この場を離れるか止まるか悩んでいると。
「ぉーぃ」
遠くで声が聞こえた。
「アキラさん」
「ああどうする?」
俺が聞いたのはこの問いかけに答えるかどうかだ、ちなみに俺は答えてもいいと思う。
サクラは無言でうなずいてくれた。よし。
「おーーいここだー!」
俺が声を張り上げて答えると声の主は聞こえたのかこちらに近づいてくるようだ。
ガサガサと茂みを音を立てながら近づいてきたのは金髪の外人青年だった。
「おぉ!やった、会えた。とりあえずよく来てくれたよ君達」
「おうこっちも来たくて来たわけじゃ無いんだが歓迎されるならよかったよ」
「ハハハ!面白いな君は!うん君の言う通りだよ、この世界は来たくてこれる世界じゃないからね。俺はベンジャミン、とりあえずついてきてくれるかい?ここは少しマズい」
そう言うと彼は俺たちに背中を向け歩き出す。
後ろから襲われるとは微塵も思っていないようだ。それとも襲われても大丈夫だという自信があるのか?
良い人っぽいがそれだけで警戒を解けるほど馬鹿ではない。
顔には出さないようにしても少なくとも警戒はしておくのがいいだろう。
◇
ついてこいと言われた道は坂道になっておりついていくのに苦労している俺たちにベンジャミンはペースを合わせてくれているように歩く。
良い人っぽいから良い人らしいにランクアップだ。
しかしなんだこの道?獣道みたいで歩きづらいな。
そう思った時にベンジャミンが話しかけてきた。
「歩きづらい道ばかり選んですまないね。西に見つかると厄介だからね。その代わりではないけど何でも質問に答えるよ」
ちょうどいい知りたいことは山ほどある。
「じゃあ質問①ここはどこだ?」
「まあまずはその質問だよね。ここは“箱庭”。神の作った世界らしい」
「嘘です!あり得ません!」
一個目の質問からサクラが反応した。
あり得ない?
「どういうことだサクラ?」
「アキラさんは知らないでしょうが五大世界は1000年以上前に神々が“降臨した”ことで完成した世界です。神は世界を作るなんてしていません!」
サクラの断言に俺は懐疑の目をベンジャミンに向ける、するとベンジャミンは少し困った顔をして言った、
「そう、その通り。この世界では神は世界を創造していない、降臨しただけだ。でもこの世界を管理している神はそう俺たちに言ったんだよ。『自分がこの世界を創造した』ってね」
そう答えたベンジャミンは本当に困っている風だった、少なくとも俺には演技には見えない。でもなー演技旨い人っているからなー。どうなんだろ?
「かわりと言ってはなんだけどこの世界を神が管理してるって証拠ならあるんだ。君たちはどこから来たの?」
「どこだっけ?」
「土星、西方の都市ディオネです。それが何か?」
「そうか俺は火星からだ」
「「?」」
「ちなみに俺だけじゃない、この箱庭にはあらゆる世界から無理やり連れてこられているんだ。」
「!」
「?」
サクラはどうやら理解できたようだが俺にはさっぱり分からない。何かすごいのか?
「な、なるほど…確かにそれは凄いですね。」
「だろう」
「サクラサクラ、俺一切理解できないんだけど」
「アキラさんアキラさん先ほど街で言いましたよね。私たちが五大世界を行き来する手段は“裂け目”以外に存在しないんです。自在に世界を行き来できるのは神、それも金星に存在するイキガミだけ。もしその自称神が五大世界を自在に行き来できるのだとしたらとんでもない事なんです」
「フーン」
「ホントに分かってます?」
なんだかすごいことは分かった、ど〇でもドア持ってるみたいなもんだろ。
つまりこの世界でも空想の産物ってところか。
確かにすごいな。すごいけどあんまり感想が浮かばないな。きっと凄すぎるせいだと思うことにしよ。
「じゃあ質問②」
「さっきの話は流すんですね」
「うん。質問②この世界から帰る方法は?」
この質問にもベンジャミンは困った顔をした。そして一言だけ。
「ない。すまない元の世界に帰還する方法は今のところ不可能なんだ」
「えっ!」
「質問③帰還方法は見つかってないorあるけど使えない、どっち?」
「えっ!」
帰還する方法が見つかっていないことに驚いたのかサクラが声を上げた。そして俺が間髪入れずに質問を返したことにも驚いたようでまた声を上げた。
どうやらベンジャミンも驚いている、がすぐに気を引き締め質問に答える。真面目に答えようとするのは良いやつっぽいな。
「帰還方法は提示されている、けれど帰還を望んでいない人が多いんだ。そしてその帰還方法はかなり難解なだけじゃなく多くの人の賛成が必要なんだ」
ベンジャミンの質問に俺はさらに質問を重ねる
「質問④帰還を望まない理由は?」
「本当に早いね。質問④の答えはこの世界の特徴だよ」
「特徴?」
「この世界に連れてこられる人間は転生者が多いんだ。その数は約3割ほどでそのほとんどが二つ名を持っていない。そしてこの世界は時間の進みが遅いんだ。神がそう設定したと言ったいたけど、それはこの世界では救いなんだよ。特に転生者にとっては5年しか生きられないはずが50年、いやもっとかもしれない。あきらめていた寿命が戻るんだよ。そんなわけで出たがる人間は少ないんだ」
そう答えたベンジャミンの顔は堅かった。
どうやらベンジャミン自体はあまりこの世界に納得していないようだ。
“うそ…そんな…”と隣でつぶやいているサクラは話を信じられていないようだが、俺はこの話を信じることにした。嘘つくならここまで壮大な嘘はつかないだろうと思ってだ。
しかし時間の流れが遅い世界ね。サクラの反応から五大世界でも時間の進みは変わらないっぽいしこの世界を作ったっていう神にも信憑性がでてくるか?いや管理してるんだっけ?まあどっちも変わらんか。
そして俺は最後の質問にうつる、
「質問⑤開示されている帰還方法とは?」
気になるのは大勢の賛同を得なければいけない点とそれ自体が難解という点
多くの人間の力が合わされば基本的にできないことは無いと思いたいが…。
そう思っていると今まで足を止めずにいたベンジャミンが足を止めた。
どうやら坂を上り切ったようで木々が分かれ視界が開けている。
「さっきの質問に答える前にこの先を見てくれないか」
そう言うとベンジャミンは俺たちを促すように道を開けた。そしてその先には………
ワァァァァァ!!!
ワアァァァァァ!!!
飛び交う矢
突き出される槍
そしてぶつかり合う人間
そこで行われていたのは…
「戦争………ですか?」
サクラがつぶやく
ベンジャミンは答える
「その通り、そして開示されてる帰還方法はこの戦争で相手側を滅ぼすこと」
マジか。
アキラ、前世と合わせて合計4回目の墜落です
2章も限界まで毎日更新!




