1-OP
少年、常葉明は複雑な顔で悩んでいた。
真っ赤に燃える太陽に照らされる街をフェンス越しに見ては小さくため息をつく。
「俺は何をしてるんだろう」
アキラは独り言をつくと屋上のフェンス近づく。
本日4月1日エイプリルフールも終わりに近づきネタ晴らしの時間になっていた、そんな中、アキラは春休み中の学校にふらりと現れ、なにをするわけでもなく学校をさまよっていた。
赤く染まったグランドでは運動部が大声をあげながら練習に励んでいる、日のかかる校舎では文化部が和気あいあいと活動していた。
しかし彼は一人だった。部活動に入るわけでもなく趣味に時間を割くわけでもない、ただ学園生活を一人で過ごしていた、友達はいない、もちろん恋人もいない、別にいじめられていたわけではない、周りとのつながりを作ろうとしていなかった。
少し前までは違っていた、生涯の親友が二人、心をときめかせた幼馴染の少女、彼の周りは人であふれていた、少年は人に恵まれていた。
そんな彼が周囲に壁を作り出したのは2年前から、交通事故で親友を亡くした時からだった、多くの人がアキラを励ましたが、結局アキラは今までの調子を取り戻すことはなかった、そして気づいた時には一人になっていた。
「馬鹿だよな、俺はいろんな人に迷惑かけて結局全部失った、過去を振り切るのは得意なんだけど、いやだからこそ、振り切れないことを知らなかったんだろう。自分一人で振り切ろうと意地になって後ろばかり見て自分の手元が見えてなかった」
フェンスまで到達してもアキラの独り言は続く。
「人に支えられていたことも知らないで自分のことばかり考えていた。人の心配を全部無視して自分だけで踏ん切りをつけようとしていた。悲しんでいるのは自分だけだと勝手に思ってた。だから俺は一人になった」
アキラはガシャンという音を立てながらフェンスを掴む。
「春間、俺はどうしたらいい、花梨と凍夜にどんな顔すればいいよ、お前ならどうしただろう、友達作るの得意なお前ならなんかいい案出すんだろうけど、俺には思いつかないよ。」
フェンスを掴む手は強く握られ夕焼けを受ける顔は泣きそうになっていた。
「なあ、何で死んじまったんだよ春間」
頬を雫が伝う、彼が泣いているのは今日が親友の命日だから、15歳の誕生日に死んでしまった親友を思い出したからだ。
そのまま少し泣き続けて涙が止まったのは山の向こうに日が沈もうとしていた時だった。
「暗くなる前に帰るか」
ぽつりとつぶやき少年が振り返った次の瞬間、後ろで強く風が吹きつけたかと思うと真っ白な髪をした少年がアキラを突き飛ばした。
「は?」
混乱するアキラの言葉と同じくして
ガガガガガガガガガガガチャン!!!
すさまじい音とともにさっきまでアキラの掴んでいたフェンスが崩れる。
突き飛ばされた衝撃で後ろに下がると崩れていくフェンスとともに屋上から墜落する。夕日が山の向こうに消える一瞬太陽の光は一層強く輝く。
その輝きの中で突き飛ばした白髪の少年はニヤニヤ顔で笑っている、その顔を見て突き飛ばされた方は今までのナーバスな気分をかなぐり捨て吠える。
「お前ふざけんじゃねえええええええええええ『グチャ!!!』
にやつく白髪の少年にブチ切れながら彼は常葉明は死んだ。
◇
4階建ての校舎の屋上から墜落死した被害者を見て突き落とした加害者は満足そうに笑う
「うまくいったね」
派手な音を立てたせいか片付け途中の運動部が集まりだした、少年の断末魔の絶叫を聞いたのか文化部も窓から顔を出して状況を確認している。
そんな中でふわりと浮かぶ白い球を掴み白髪の少年が一言。
「じゃあ行こうか僕らの世界へ」
そして白髪の少年は夕闇に溶けるようにして消えた。
その後、アキラの絶叫の証言をもとに屋上は調べられたがそこに被害者以外人がいた痕跡は一つも見つからず、少年の死は老朽化したフェンスが寄りかかられたせいで壊れた、という不幸な事故と断定された。
小説を書きだして2話目
毎週投稿できる作家さんはすごいと思いながら投稿
1章は毎日更新します