1-EX2 4月7日 常葉明の告別式
みーつけた。君にしよう。(???)
その日はむかつくくらい晴れ渡った日だった。
春休みの間、特にすることが無い私はぶらぶらと街を歩いていた。
高校に入ってすぐにできた友達は部活に誘ってくれたが本気になれそうもなかった私は断った。
その子は半年ほどで部活をやめたので入らなくて良かったと思った。
家計のためにバイトでもしようかと思ったがうちの学校はバイト禁止だった。
隠れてしている子は何人か知っているけど、たまに見つかってひどく怒られている。そんな姿を見ても、バイトをしようと思えるほど私は勇敢ではない。
結果的に長い休みに入ると街をぶらぶらすることが多くなる。
特にお金もかからず暇をつぶす方法がそれくらいしか思いつかなかったのだ。
私の先々月までのお小遣いは3000円、少ないがこれでもお母さんが絞り出してくれたものだった。母一人娘一人の母子家庭は結構つらいのだ。
しかし、と言うか、ついに、と言うか先月お母さんが倒れてしまった。
現在は生活保護を貰って生活している。
幸いと言うのか私の教育費はあの男が出しているので学校は問題なく行けるそうだ。
学校をやめて働こうとしたらお母さんに止められてしまったので渋々ではあるのだが。
母親が倒れて激動のように過ぎた3月を私は一生忘れないだろう。
そして不幸と言うものは連鎖するようだ。
4月に入った初日、エイプリルフールの終わりに私にまたしても爆弾が落とされた。
午後10時電話が鳴り、母が出たそして……
「花梨ちゃん落ち着いて聞いて、明ちゃんが亡くなったって」
「え?」
その電話は私の小中同じ学校だった幼馴染の訃報を伝えるものだった。
◇
その日は雨が降っていた
私と母は電車で葬式会場に向かう。
元々川一本挟んだら隣の校区と言えるほど街の端っこにあった明の家が会場として選んだのは隣町だったからである。
電車の窓に滴る水滴を見ながら、私は明との日々を思い出す。
『なあ花梨、春雨って春の雨みたいだから春雨っていうらしいぜ』
『へー、明は物知りだね!』
『いや俺も凍夜からの受け売りだよ。何であいつはあんな役に立ちそうもない知識を持ってんのかな?後半は聞いてないけど“バショウ”?とかいってたな』
『へー、バショウって何?芭蕉扇?』
『さあ?なんだろうな』
「フフッ」
「どうしたの花梨ちゃん?」
「あっ、えっと何でもないよ」
思わず笑いが漏れてしまった。
幸いなことに周りの人にはバレていなかった。
◇
私と母は会場に入り、懐かしい顔を見つける。明のお父さんだ。
2年ほど会っていなかったが恐らく今回ことの影響だろう、10歳も20歳も老けこんだように感じる。
向こうもこちらに気づいたのか声をかけてくる。
「おぉ花梨ちゃん。少し見ない間に奇麗になって。明はやっぱり人を見る目があったんだなぁ」
「はいそうですね」
恐らくおじさんが言っているのは小学校の屋上から明たちが叫び『小学生の主張事件』と名付けられた事件の事だろう。
あの事件は出入り禁止のはずの屋上に明たちが侵入し、それだけで満足すればいいものを思い切り叫んで先生に怒られまくった。4人組で行動していたあの頃では珍しく私が関与していない事件だった事と明の叫んだ内容のせいでよく覚えている。
明は屋上に侵入して大声で私に告白したのだ。
『かり――――ん!!!すきだーー!!けっこんしてくれーーー!!』
『かくとうおうにおれはな―――――――る!!!』
『せかいでいちばんひとをすくうおいしゃさーーーーーーん!!』
三人が三人ともバカバカしい内容を叫んだところで先生に捕まり、結局この後親御さんを呼んで校長室で怒られまくったらしい。
怒られた直後には泣いていたが、30分もすればゲラゲラ笑っていたのでよく覚えている。
ちなみに私はその時の返事をしていない。
仲間外れにされて悔しかったのと、堂々と告白されて恥ずかしかったので、出来なかったのだ。ただふざけてダーリンと呼ぶと明は嬉しそうに笑っていた。
そして結局返事をする前に逝ってしまった。
◇
「花梨か?」
そう呼びかけられて振り向くとそこには私のこの世に残った最後の幼馴染、降白凍夜立っていた。
「凍夜きてたの?」
「まあ、あいつの葬式だし、学校なんて行く意味も特にないし」
「どういうこと?……まさか前みたいにいじめられて!」
「違う違う、高校の勉強は終わったって事」
え?終わった?あと丸々2年残ってるんですが?
何でもないことのように喋ったの驚愕の内容だが凍夜ならあり得るのだ。
振白凍夜は天才である。
春間とは違い、こちらは勉学の天才。
特に数学では100点しか取ったことのない事しかなく、他の勉強も95点以上を維持し続ける怪物だ。
そして一度先生のミスで93点を取った時はフリーズして行動不能になっていた。
意識が高く実際に実力も高い、勉学に置いて春間が赤点をギリギリながら回避し続けたのは彼のおかげだろう。
そんな彼は前にあった時よりも少し背が伸びていた。
「背のびたねー」
「一応まだ少しずつ伸びてる」
「へー、昔は誰よりも小さかったのにね。ほら一番前の偉い人みたいなポーズしかしてなかったじゃん」
「そうだね、少しずつだけど変わったよ俺も」
「も?」
「花梨も……あーなんていうか……きれいになった」
「へへん、でしょう!でも私ってそんなに変わった?」
さっきおじさんにも言われた時にも思ったがそんなに変わった気はしない。
髪型も、服装も大幅に変わったものは無い。今は喪服だけど……。
「変わったよ」
断言されてしまった。天才様が言うならそうなのだろう。
「変化って自分じゃ分からないんだね」
「そういうものを変化って言うんだよ」
「あっ今の理系っぽい」
「理系だよ」
そうして私たちはたわいない、本当にたわいない会話を続けた。
けど最後に凍夜は、
「明にあの返事はしたの?」
「あのって?」
「屋上の」
「うぐ!……してない……」
「そうか」
「でも、私はきっと明にはふさわしくなかったと思う」
「?」
「私は明が一番つらい時にそばにいたのに何もしてあげられなかった。だから……」
「そんなのは俺も同じだ!!」
凍夜が突然叫んだ。
会場の人が一斉に私たちを見た。恥ずかしい。
「ごめん……」
「大丈夫大丈夫、気にしてない。でも……明にふさわしくないってところは変えないよ」
そう言うと凍夜は何も言わなかった。
このままじゃ久しぶりに会った幼馴染と気まずいまま終わる。話を戻そう。
「世界で一番人を救えるお医者さんになれそう?」
「おぼえてたのか!?………あーうんそうだね、今は新薬を考えてる」
「マジで!?」
「まじで、でも……花梨知ってるか?」
「何を?」
「明の最後の言葉」
「え?遺言みたいなの?」
「そうじゃなくて、最後にあいつは『ふざけるな』って叫んでるんだよ」
「え?」
「つまりあいつは誰かに殺された可能性があるんだ」
「嘘、でも警察は」
「警察は…“大人は信用できない”、僕は個人的に動く。花梨、真実が分かったら一番に君に伝える。約束するよ」
そう言うと凍夜は立って去っていった。
凍夜は県外の高校に進学しているので、少ししか顔を出せなかったらしい。私の声をかけた時にはもう明の顔を見た後のようだったらしい。
結局私には凍夜が何をしようしているのか分からなかった。ただ、ちらりと見えた目に暗いもの見えた気がした。
◇
お葬式が粗方終わり、最後に明の棺が降ろされた。
ここに花や手紙を入れていく。
私はそこでようやく、久しぶりに、幼馴染の顔を見た。
子供の時から笑いながら人に迷惑ばかりかけていた、中学生になっても変わらず面倒ごとに顔を突っ込んでいた、そして一人の幼馴染の死によって分かれた、私の幼馴染は死んでいた。
そこで始めて私は涙を流していることに気が付いた。
何か言葉を放とうとしても言葉は出てこない、ただ嗚咽があふれるだけだ。
立っていられなかった私は座り込み彼の棺にすがっていた。
本当に悲しいと言葉が出ない、それは2年前知っていたはずなのに今回はその時以上だった。
私は常葉明が好きだったのだ。
◇
霊柩車に棺が積まれ会場を後にした。
それを見ていた者が二人いる、一人は赤色もう一人は青色と派手な髪色をしていた。
彼らは自分たちの下で行われている、出来事を興味深そうに眺めている。
ちなみに“下”と言うのは間違いではない。
彼らは空中に浮いているのだから。
青髪の方が赤髪の方に話しかける。
「こんなところで会うなんて珍しいね、カン」
「そうだね、チョー。バラバラに降りるからまず会わないはずなのにね」
「それで君は決めたのかい?ちなみに僕は決めた」
「珍しいね!君はいつもいつも決めかねて遅いのに。今回はいつも一番遅い、シーも決まっているし何か起きそうじゃないかい?」
「それは僕も思ったよ、と言っても僕的には何か起きたら困るんだけどね」
「今回は自身が無いのかい?」
「いいや、むしろその何かを乗り越えられるのを見つけたよ。僕の地位は渡さない」
「そりゃ結構、でも僕も負けないよ?」
そこで会話は途切れクスクスと笑いあう二人。
楽しそうに下を眺め、そして互いに聞こえるようにつぶやく、
「「勝つのは僕だ」」
互いに放った言葉が全く同じ立ったことに驚き、そしてまた彼らは笑った。
夜は更けていく、この世界のどこかでまた命が魂が消える。
今回のこんな幕間で1章は終わりです。
彼(女)らの再登場にご期待ください。出るまで作者の根気が続けばですが。
次回の更新は3月12日(月)を予定しています。
予定なので1~2日ずれる可能性があります更新できなければごめんなさい。
最後にこんな駄文にお付き合いいただきありがとうございました!そしてできれば今後も読んでいただけると嬉しいです。感想もお待ちしております。




