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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
1章 墜落少年
12/111

1-10 戦う『怪腕』

邪魔をすルな!!(グローブ)

「ガァァァァ―――――!!!」


二人の空いた距離の詰め方は正反対だった

激突までの短い瞬間

大きく手を振り上げ叫びながら突っ込む『怪腕』

口を閉じ静かに拳を顔の前に構えるツバメ

先手は『怪腕』、攻撃はただの左腕の振り下ろし。しかしそれは必殺であることは粉々になった石畳で証明されている。


「(これ、食らうわけにはいかんよな)」


ツバメは体を左側にずらし攻撃をかわす、地面がまた爆発した。

しかしそれと同時に『怪腕』は右腕を横に振るっていた。


「(読まれてたか)」

「死ね!」


そして抱き着くように右腕は振るわれ……攻撃は空を切った、ツバメは宙に飛んだのだ。


「おらぁ!」


空からの蹴りが『怪腕』の顔面をとらえた。しかし『怪腕』は蹴りをものともせず動く!


「ガァァ!」


蹴った勢いで逃げたツバメを振り上げた腕は捕らえられず、ツバメは距離を取った。

ちなみにこの間7秒ほど、両者最初の攻防では決定打は得られなかった。



「(くそが、なんで俺は命がけの戦いなんてしてんだ?!)」


マジで意味が分からん、何で商売してただけでこんなことになるんだよ?どれもこれもアイツのせいなのに何で戦ってんのは俺なんだよ?俺が何をしたんだよ!?

くそが!恨むぜ親父、こんなのの御守なんて押し付けやがって。

……しかし親父の言うとおりになったな。



昨晩


俺が風呂から上がるとサクラと親父が待っていた。


「あれ?アキラは?」

「お前の部屋に押し込んだ」

「えー」


何で俺の部屋?家で一番狭いのに?

今日は寝づらそう。


「まあそんなことはどうでもいいだろ、早く座れ」


うん、親父にとってはどうでもいいね。

俺は成長期なんだけど。

睡眠必要だと思うんだけど。


「お兄ちゃん座って」


サクラが静かに怒ってる。怖い。

親父は何をした?と思いながら自分の席に座る。

ところで俺はいつ晩飯を食えるのだろうか?


「良しじゃあとりあえず、アキラのことを紹介しとくな。と言ってもお前らが子供のころに何回か昔話として話したから詳しくはいいな?」


俺とサクラはうなずく。

親父は俺たちが小さいころから前の世界の思い出を面白おかしく語ることがあった。

俺は外で遊ぶようになってからあまり聞いてなかったが「茶色い雪事件」で腹を抱えて笑った思い出がある。サクラは俺と違って家の中で母さんの手伝いをすることが多かったから俺よりも親父の話を聞いている可能性は高い。

そんな親父の話に必ずと言っていいほど登場するのがアキラだった、詳しくは教えてもらわなかったけれど親父は「あいつは俺の命の恩人みたいなもんだ」と語っていた。


「(そっかやっぱりあれはアキラさんのことだったんだ)」


ぼそりとサクラがつぶやくが親父は気にせず話を続ける。


「今日はあの時話さなかったことを教えようと思う、ところでお前らから見てアキラはどう感じた?」

「話に聞いていた通りとても良い人でした」


サクラが即答する。モヤッとするな。

ちなみに俺の答えは……


「そうだな、俺は何か苦手だなあの感じは。話してると嫌な予感がする」


……だった

その言葉に親父は満足そうにうなずく。


「お前らの答えはどっちも正解だな。しいて言うならツバメの方が正解に近いのか」

「どういうこと?」

「意味が分からん」


良いやつと嫌なやつはほとんど正反対じゃないか?


「つまりな、アイツは凄く良いやつなんだよ、そして嫌なやつなんだ。」


俺たちの目線が一気に冷える、何の解決になってない答えだな。

親父は耐えきれなかったのか言葉続ける


「えっとだな、あいつの性格は良いやつなんだよ。けどなあいつの性格以外は嫌なやつなんだよ」


訳が分からん


「あいつの性質とでも言おうかな?アレは厄介ごとを呼び寄せる性質があるんだよ。全くあいつは悪い事してるって考えはないんだ、でも厄介ごとを引っ張ってくるんだよ。俗にいうトラブル体質?とにかくあいつといると必ずと言っていいほどトラブルに巻き込まれるんだ、それがあいつの嫌な部分」


なんだそれ?そんなの縁を切ってしまえばいいじゃないか。何で親父はそんなトラブルに付き合ってたんだ?俺の問いは口を開く前に話の続きで答えられる。


「俺がそれに気づいたのはこの世界に来てからなんだよ、この世界に来たからかもしれんけど。とにかくあいつから離れてようやく気付くくらいに自然にトラブルを起こすんだよ。こうしてお前らにこの話をするのは明日の自由市であいつが俺から離れることになっても必ずどっちかがアキラについてくれって頼むためだ。あいつはこの世界に疎いから何かしらの問題を起こすはずだ、そうなった場合どうにかして助けてやってくれ。頼む」


そういうと親父は頭を下げる

俺は息をのむ、父親が頭を下げて俺たちに何かを頼むところを初めて見たからだ。


「お父さん、私は言われなくてもアキラさんを助けるつもりでしたよ」

「「えっ何で?」」


驚いた俺と親父のセリフが被る


「なんでって、お父さんが教えたんでしょ『情けは人のためならず』って」


呆れたように答えるサクラ

へー親父ってそんなこと言ってたんだ、知らなかった。

そう言うと


「お兄ちゃんは何で覚えてないの?」


軽く怒られた

多分どうでもよかったからかな?


「というわけで、俺も近くにいる予定だが頼むぞ」

「親父が離れなきゃいいのでは?」

「そうもいかんのだ、トラブルはいつどんな形で起こるか分からんのだからな。時には予想外のことが起きる可能性もある」

「例えば?」

「そうだな……街にクマが出るとか?」

「ワハハ!そんなまさか」

「そうだよな!ワハハ」

「もう!お父さんたらウフフ」


そうして昨日の会話は終わった

ちなみにこの後俺は晩御飯は食べれたことを追記しておく



そして今

クマは村に出て、街にはクマより質の悪いやつが出た。


「(こんなのもう呪いだろ)」


アキラの体質に恨み言を吐きながら俺は戦闘を続ける

あれから約二分

幾度か小競り合いのようなものが続くが決定打は無い

そもそもこの勝負は奴との一騎打ちでもないはずなのに何で衛兵は出てこないんだ?


「ガアァ!」


また『怪腕』の腕が俺の体を掠った

こいつの強さはそのリーチだ

俺の身長はあろうかと思うほどの腕を振りまわしさっきから俺を一切近づけさせず、反撃をさせてくれない。

最初のサイズから明らかに大きくなっているのは二つ名の効力だろう、このサイズが最大かどうかも分からないので近づきづらいのだ。これだから二つ名持ちは厄介なんだ!


「くそっ、やっぱり懐に入るしかねーか」


吐いた言葉と同時に覚悟を決める。

こいつの弱点はそのリーチの長さによって自らの懐に入られると何もできなくなることだろう。

だから俺に距離を詰めさせない。少なくとも攻撃自体はやりづらくはなる。


「ウガァァ!!」

「(勝負だ)」


つぶやく言葉を置いてきぼりにするように一気に最高速度まで加速する。

今まで見せていた速度より数段速いだろ?わざと落としてたんだからな!

振り下ろされる腕を掻い潜る。

俺の狙いに気付いたのか腕を無茶苦茶に振り回す『怪腕』。

けどもう遅い、何発もの一撃必殺を躱し切り俺は……


「遠かったぜ」

「ぐっ!」


『怪腕』の腕の内側にいた。

ここからなら……


「何十発でも打ち込んでやらー!!」


今までの鬱憤を晴らすように打ち込んでいく俺。

昨日今日でストレスたまってんだよ、主に今回の原因のせいで!

後ろに飛んで俺を引き離すように動く『怪腕』だが動きはさっきよりも遅い。

そりゃそうだろうあんな大腕振り回し続けてエネルギーが持つわけがない。


「(ここで決める!)」


腕の伸び切ったやつに反撃はできない!

そう確信した俺はラッシュの回転数を上げ、何発、何十発と打ち込んでいく。

そしてやつの巨体はついに折れ曲がった。


「(良し!!)」


そこで俺は視線の端に伸び切った腕が映った

……伸び切った腕?なぜ戻さない、腕のサイズを戻すなり、できなくても腕を折りたためば、

そう思い一瞬目を離した瞬間やつの体が俯いたまま浮いた。


ドンッッ!!


多分そんな音がしたんだと思う、

音と同時に俺は空中を飛んでいたっぽい、

その一瞬後に石の壁に叩きつけられたみたいだ、

……どうもはっきり言えないのは俺にはこの瞬間の記憶がないからだ、

俺の記憶があるのは石壁を突き破り壊れた石が降ってきた瞬間だったよ。



ガラガラと石壁が崩れる音を聞きながら俺は青年の方へ向き直る。

今の蹴りは腕の内側に入ってきた相手用の攻撃。

腕を目一杯伸ばし地面を掴む、そして体を持ち上げ全力で腕を引き戻す。パチンコのような要領で相手に膝蹴りを打ち込む技だ。逃げようとしても両サイドは俺の腕に囲まれているのだ。

俺の腕から逃げた相手は今度は腕に阻まれる形で蹴りを食らう、自分でもよくできた技だと思う。

そして蹴りを食らったあの少年はもう無理だろう、死んでいないかもしれないがまともに動けるはずがない。

しかしかなり善戦された、ダメージを食らいすぎたな。

まあ戦闘力のない一般人を殺すだけだ問題ないだろう。

……なぜ俺はあの青年を殺さなければいけないんだ?思い出せない……。

まあいいか。殺してから考えよう。

そう思って青年に歩みを進めると意外なことに青年は逃げずに話しかけてきた。


「あんたすごいな、ツバメ30mは吹っ飛んでったぞ。生きてるかなー?」

「命乞いはしないのか?」

「アハハしても意味なさそうだから。それよりあんた戦闘中より言葉がまともになってるけど、何で?」


言葉?戦闘中?何のことだ?

……思い出せない、どうでもいいか。

俺は右腕を上げる。

青年はまだ喋る。


「で、何で俺は殺されるのかな?」

「知ってどうする?」

「いや、何か悪いことしたかなーって考えてまして」


こいつを殺す理由なんて俺の方が知りたいくらいなのに、いや待てホントに何で俺は?

俺の動きが止まったその時、青年は何かを構えた


「いまだ!!」


“バヒュッ”と言う音と共に何かが首元に当たった


「あー!こんな時に限って外れやがる!このポンコツ!」


何かよくわからないが、飛んできたものは外れたらしい


「何がしたい?」

「んー、最後の抵抗かな?」

「意味のないことだ」


そう言って腕を振り下ろそうとするとどこからともなく現れた何かが地面に刺さった。

針?いや串?

そちらに気を取られていると


「意味はあったみたいで」


そうやって青年はニヤリと笑った。

ああ……そうだお前は……

その笑顔を見て何かをつかみかけた瞬間、右わき腹に衝撃が走り俺は吹き飛ばされた。



「おせーよツバメ、死ぬかと思った」

「その割には随分と余裕で」


この野郎、死の淵から復活してきた人間にかける第一声がそれか?

一応命の恩人なんだけどな!


「で、どうすんのアレは?」


そう言ったアキラの目線の先には起き上がろうとしている『怪腕』

隙をついて全力の蹴りを打ち込んだはずなんだけどな?自信なくしちゃうぜ。


「パチンコで石でも飛ばして手伝おうか?当たったらすまん」

「すまんですむか。いや邪魔すんな、ここまで来たら俺が決着をつけてやる」


そう言って俺は前に出る。

いいぜ『怪腕』親父用のとっておきお前にくれてやるよ。

俺だけのスペシャルをな!


ツバメ対グローブの戦闘は次回で決着です。

書いてて二人の位置取りがうまく表現できたか不安です。

1章は毎日更新します。感想もお待ちします。

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