1-9 叫ぶ変人
さてあっちはどうなってるかな?まあどうせアイツがなんかしてんだろ(ハルマ・クイート)
「さあいらっしゃい!いらっしゃい!昨日取れたばかりの大イノシシの肉だよー!」
店の前を通り過ぎる人たちに俺は声を上げる。店と言っても布を広げただけのスペースだが。
現在俺の前にはハルマの狩ってきたイノシシの肉が並べられており、その大きさからか?かなりの人が立ち止まっていた。
「ねえ、お兄ちゃん、このイノシシは本当に昨日取れたの?」
「ええ!そりゃあもう昨日までピンピンしてましたよ。俺も解体に付き合いましたが何ならその時も動いてましたね!」
「へぇそれは生きが良いねぇ。ひとつもらおうかしら、おいくら?」
「毎度ありがとうございますお姉さん!銀貨15です!」
「あらお上手」
ちなみに話してる相手は4~50のおばさんだ
「おーいお兄さん、こっちにもくれる?」
「ヘイ毎度!いくつ包みましょう?」
「ふたつかな」
「銀貨30になります!晩御飯迷ってんなら隣の野菜も見ていったください、良いのそろってるんで」
「そう?なら見ていくわ」
隣ではサクラたちが畑でとれた野菜を売っている。
驚いたことにこの世界は野菜もでかい、大根が1mあってまだ子供とだという。土の養分とかどうなってんだろ?
おっといけない商売に集中集中!結局イノシシの肉が無くなるまで俺は肉を売り続けた。
◇
「どうなってんだアレ」
「さあ」
最近妹の返事が全体的に素っ気ない気がするが、それはうわさに聞くツンデレだと信じる兄、ツバメだ。
今日は週に一回の自由市の日だがいつもとは違うところがある。
今回の商売だが昨夜親父に言われ、肉と野菜を分けて売ることになっていた。そしてなぜかそのどちらかをアキラの奴に任せることになっていたのだが……なんであんなポンポン売れてくの?
客はアキラの方に周りの店から吸い寄せられていくように移動している、その後はこちらにも客を流してくるから文句はないのだが。ホントにアイツ今日が客商売初めてか?信じられん。
向かいの店なんかほとんど客が来ずにぐったりしてる。いや向かいだけじゃないな、ここ辺の客は必ずと言っていいほどアキラの店に立ち寄りほかの店は閑古鳥が鳴く……ほどではないがいつもより明らかに活気がない、例外はアキラが客を流すうちの店くらいだろう。
「すげぇ……」
「けど心配だよね、他のお店の人に難癖付けられなければいいけど。」
「オラァ!手前何のつもりだゴラァ!」
サクラの言葉を聞いていたようなタイミングでアキラの店に難癖が入った
「あっやばいな、間入ってくる」
「待ってお兄ちゃん」
そう言ってサクラに止められる、アキラはなぜか悪漢にニコニコと話しかけていた。
「ヘイらっしゃい、何の御用で?」
「客じゃねんだよ兄ちゃん。随分と荒稼ぎしてくれてるようじゃねーか?アァ?」
「おや?お客さんじゃないのかい?では何の御用で?」
平然と答えるアキラとは対照に周りの客は離れ始める。
「今言っただろ?ここでの商売やめろや、そんでもってここでは二度と商売すんな。痛い目にあいてないだろ?」
「痛い目ってそんなバカな、ハッハ、言う人初めて見た」
凄む悪漢、笑うアキラ、奇妙な状況は長くは続かなかった。
「そうか、お客さんじゃないなら遠慮はいらんか。」
「あっ?」
アキラの突然の言葉に悪漢が首を傾げた。
瞬間『ヒュン!』悪漢の目に何か白いものが飛んだ。
「アギャ――!!」
「おらぁ帰れ帰れ!商売の邪魔だ!じゃなきゃもっとお見舞いするぞ、このクイート家特性大根で作った大根おろしをな!」
いつの間に作ったのかアキラの手にはパチンコが握られており、地面に置かれた小皿には大根おろしが乗っている。
パチンコで大根おろしを飛ばしたらしい。大根おろしって飛ぶのか。
「なっ!ぐっ!くそが!なめてんじゃっ『ヒュン!』うわっぱっ!辛―――!!」
今度は悪漢の口に入った。アキラは堂々とした口調で言い切る。
「辛いだろ?大根の下の部分で作ったからな!俺はこの位の距離なら百発百中だぞ、目玉炎症で失明したくなかったらとっとと帰れや!」
「っふ、ふざけんな!てめーなんか距離を詰め………待て、いっ今何て言った?クイート家と言ったか?」
「そーだ、ハルマ・クイートのクイート家だ。何だ震えて?」
「おおおおっおう、なっなんだ、いっ、良いイノシシ肉じゃねーか!一つもらおうかな!?」
いきなり態度が変わった、そりゃそうだ。悪党だって親父を敵に回したくはないだろう。と、思ったら、
「ヘイ毎度あり!銀貨30枚です!」
こっちもか!ほれぼれするような変わり身だな。
「ところでお兄さんお勧めしたい商品があるんですが……」
「おっ、おう!それももらおう!」
「ありがとうございます!」
結局、その悪漢はかなりの商品を倍額で買わされて帰っていった。
◇
「いやー働いたなー!」
「そりゃあれだけの肉を2時間で売りさばくとな」
「アキラさんすごいですね!」
いやー称賛の声が気持ちいい!商売っていいものだな。
俺の店のイノシシ肉はかなりの好調で売り上げ2時間ほどで完売した。
「しかしあのパチンコ百発百中なんてすごいです」
「確かに良く作ってたな」
「いやいやあんなの嘘だよ。たまたま当たっただけ」
「は?」
なんだ二人とも信じてたのか?
あんな急ごしらえのパチンコがうまく起動するわけないじゃん。
近ければ大雑把に大体の場所には当たるが、遠くになるとかなりぶれる。あのくらいの距離でも2発目は目ではなく口に入った、それくらいの精度だ。
全部まぐれだし、大体パチンコなんて久々に作ったし。
「おい待て、お前当たんなかった時はどうするつもりだったんだ?」
「全力で逃げて人ごみに紛れたかな?まあいいじゃん終わったことは」
なぜか呆れられているようだ、二人とも力が抜けている。
そんなことよりも売らなくていいのか?
「アキラさんはもう休んでてもいいですよ」
「そもそも完売は目的じゃないし」
えっまじで?
実はこの自由市で売れ残ったのはハルマ家の食事になるらしい。どうやらこれからハルマが肉を狩ってくるまで野菜生活になるようだ。
なんかごめんね?
そんなわけでこちらの野菜ブースではもう売り上げは気にせず適当になっているようだ。
そうすることで俺が取ったお客さんを返してやり周りに恨まれないようにしている意味もあるらしい。
なんかホントごめんね?
そんなわけでクイート家の自由市は惰性のようになっていた。
「暇だな」
「いや自由市であんなに大盛況だった方お前の店がおかしい」
暇になった店からこうして周りを見ていると、かなり人の出入りが多い。
なかなかの高スポットだったらしいなココ。
俺の店が盛況だったのは俺のビギナーズラックだけじゃなかったらしい。
「(多分関係ないな)」
「(うん)」
サクラたちが何か言ってるが聞こえない。悪口じゃなきゃいいな。
サクラたちの声を聞き流しながら俺は人ごみの中にひと際目立つ人物を見つける。
それは上から下まで全身ローブで覆われた大男。2mはあろう体躯を縮こませているのでかなり猫背になっている。
そんな行為をしながら歩く大男に目を取られるとぶるりと体が震えた。
少し風が吹き始めた。
その風を受けて大男のローブが揺れ中の顔がちらりと見えた、どこかで見たような?最近知り合いが死んだ覚えはないのだが。
うんうん唸っているとツバメが声をかけてくる。
「どうした?」
「いやあの人どこかで見たような気がするんだよな」
そういって大男を指さす、ツバメの動きが止まった気がした。
「(おっおいあいつはいいだろ、それよりこっちで遊ぼうぜ)」
なぜか小声になったツバメを無視して考える。
最近見たような?
「(おい!いいだろあんな大男、きっと珍しいから目に留まっただけだって)」
そう、あれは大男なのだ、だからと目立つのだがそれだけで目がとらわれるほど馬鹿じゃない。
2m…そういえば最近みたよう………あー!
「あー!おい見ろツバメ、賞金首のグローブだ!よし行け捕まえてこい!」
「なんで気づくんだお前はー!!」
そうだそうだ、さっき見た掲示板に情報が乗ってたな『2m以上の大男』って。
しかしなぜ切れてるんだツバメは?
しかし俺は考える暇もなく吹き飛ばされる。
ドゴォン!!
吹き飛ばされた俺の見たのは俺の立っていた場所が爆発した風景だった。
そしてそこには……
「手?いや腕……なのか?」
パラパラと地面の破片が落ちる中でのっそりと動くその男の腕は明らかに〈異形〉、
2mの体躯に勝るとも劣らないサイズで真っすぐに立ちながら地面に指先がついていた。
そういえばこいつの二つ名は……、この思考の先を考えるよりも早く相手の方が先に動いた。
その体格に似合わない速度で俺に肉薄し腕を振り上げ、そして振り下ろ……
「ストップだ『怪腕』のグローブ」
……されることは無かった、いつの間にかグローブの隣に立っていたツバメが振り上げた腕をつかんだのだ。
続けてツバメが言う
「こいつは俺の連れだ、確かにイライラさせられることはあるが別に殺すほどじゃないんじゃないか?」
「殺す、消えろ、いなくなれ!」
ツバメの話が聞こえないのかもう一方の腕を振り上げるグローブしかしまたしてもその腕は振り下ろされることは無かった。
ドゴォ!!
凄まじい音とともに今度は飛んで行ったのはグローブの方だった、ツバメが蹴り飛ばしたのだ。
「こいつを殺されると困るんだよ、ケンカの相手なら俺がしてやる。かかってこい」
「ガァァァァ―――――!!!」
『怪腕』グローブVS『』ツバメ・クイート
戦闘開始
初戦闘開始!
少し遅れて申し訳ありません。
動きの表現が難しいので手直しするかもです。
1章は毎日更新します




