プロローグ
「あーもーメンッドクッサイ!」
夕暮れをバックに一人の少年が頭を抱え叫んだ。
中学生くらいの容姿の少年は珍しい真っ白な髪をしており、そしてもっと珍しく空中に浮いていた。
「なんでそんなに急ぐ必要があるんだよ!あと2・3年は大丈夫だろ!自分の分が終わった
からって人を急かさないでほしいよ!」
どうやらここにいない誰かに文句を言っているようだ、ただいない人に文句を言っても仕方ない事である、少年も気付いたのか大声は収めたようだが。
「そもそもさっさと決めたのは自分の責任じゃないか、それを僕らに文句言ってどうするのさ、1年2年休めると思ったのに僕の計画は台無しだし。今日だって特に何もなく1日が過ぎちゃったし。第一そんな簡単に見つからないし」
相変わらず文句だけはブツブツと湧き出てくるようだ。
何かを探しているようである、そんな少年の前に公立高校が現れた。
平地よりもだいぶ高い位置に立っていたので宙を浮く少年の前に現れたようだ。
「あー今日はここで終わりにするか、別に期待してないけど」
何を探しているかわからないがやる気のないことである。
壁をすり抜けて校舎に侵入した少年は夕焼けに染まる校舎をふわふわと浮きながら移動する、少年の姿は生徒たちには見えていないようだ。
本日は4月1日、春休みの終盤でありながら校舎の内外はにぎわっている。
特に運動部の声はひと際大きく校舎に響く、野球部、サッカー部、テニス部、陸上競技部、メジャーな運動部は一通りそろっているようで、入学してくる新入生を迎えるのに恥ずかしいところは見せられないと気合を入れているようだが、
「平均を大きく超えるがいるなー、まあ趣味に合わないからパスするけど」
少年の御眼鏡に敵う生徒はいないようだ。
続いては校内の部活
運動部とは違い校内の部活は教室の飾りつけや部室訪問者に配る小物の制作行っているようだ。吹奏楽部は勧誘のコンサートのリハーサルを、新聞部は号外を、写真部は作品の展示を、美術部は部員の合作らしい巨大作を、料理部は配るお菓子の試作を行っているようだ、どの部活も新入生獲得のために試行錯誤を繰り返しているようだが、
「パッとしないし面白くない」
バッサリだ、またも少年の御眼鏡には敵わなかったようだ。
「よし、帰るか。ゼツが文句言ってきたら無視!ヒーは元々そこまでうるさくないし何とかなるだろ」
宙を舞う少年はそのまま校舎を突き抜けて屋上に出る、そこには一人の男子生徒が背を向けて立っていた。どうやらフェンス越しに運動部を眺めているようだ。
「あーまだいたのか、まあ最後だし見ていこって…………アレ?」
少年の表情が変わる、目は見開かれ口はポカンと空いたままだ。
「アレ?アレレ?なんだこいつぐちゃぐちゃだ、今まで見たことないぞこんなの」
少年の口は滑るように語りだす、目は見開いたまま。
「なんだ!なんだ!なんなんだ!どういうことだ、こんなのありえない、情緒不安定とかのレベルじゃない、持ってる能力を見ても『こう』はならない、何が起きたらこうなるんだよ!!」
少年は独り言を続ける、時折声を荒げながら。
「どういうことだ?できてもやらないしできない、負担が大きすぎる、見えてないのか?僕が?………そういえば前にも似たようなことがあったような」
少年は苦悩する、理解できない男子生徒について。
「そうだ何かあった!なんだ!考えろ!思い出せ!こんなこと!…………………………」
そして、
「あっ」
氷解する。
「そうかそういうことか!あははははははははは!なるほどそれなら分かる!筋が通る!ぐちゃぐちゃと空っぽにも筋が通る!」
少年の目は輝いていた。やっとわかった答えと見つけた『なにか』に対して。
「決まりだ、君に決めた、君しかいない!あぁこれできっと面白くなる!久しぶりに楽しくなる!やっと始まる!始められる!」
どうやら少年の御眼鏡に敵ったのはこの男子生徒らしい、嬉しそうに宣言している。
「そうと決まれば実行だ。ちょうどいい場所だし、人目も多い、彼は賢そうだから大丈夫だろう。きっと夢も希望も捨ててくれる。よしいこう!!」
そして夕暮れが山の向こうに消えようとする瞬間、少年は男子生徒に向かって地面を蹴って走り出した。
小説を初めて書きましたお目汚しにならないように努力します
1章は毎日更新します