目覚めよ!我が左目に封印されし、魔眼よ!!!
村人との、数時間にも及んだかくれんぼは、日が落ち始めた頃に一時中断となった。
明日こそ見つけ出してやると、村人の一人が叫んでいたので、今の内に少しでも遠くに逃げておいた方が良さそうだ。
この身体で良かった。
アンデッドの要素もあるこの身体は、疲れると言うことが殆どなかった。
逃げ切れた一番の要因を挙げるとしたら、そこが一番大きいだろうね。
後は、この服。
アンデッドでよく登場するリッチなんかが着てる様な、ボロボロのローブを、腰で縛っただけの物なんだが、これが隠れるのに役立った。
暗い茶色のローブが、ギリースーツ宜しく、しっかりと仕事をしてくれたみたいだ。
ただ単に、運が良かっただけなのかもしれないけど。
それで、この後の事なんだけど、どうしようか。
村人の声を聞いてて知った事なんだけど。
どうやらこの世界、魔物とか、モンスターとか呼ばれるのが出るらしいんだよね。
あれだよ、あれ、ファンタジーで勇者がバッタバッタと倒していくやつ。
老舗和製ゲームに出てくるような、デフォルメされた可愛いモンスターだったら見た目に優しいんだけど。
洋物ゲームに出てくる感じの奴等だったら、卒倒出来る自信はあるね。
リアルでグロいのは、苦手なんだよ。
あ、虫とかも嫌ですよ、はい。
で、話は戻すけど。
もうすぐ暗くなっちゃうんだよね。
どうやって、一晩過ごすかだけど。
謎の声が言ってたポーチには、何にも入って無かった。
ついでに底も無かったので、手を突っ込んだら、ポーチを突き破る事もなく、肘位まで腕が入った。
試しに石ころを入れたんだけど、意識して取り出さない限りは、逆さまにしても、出てこない感じだった。
だーけーど、今は役立たず。
村に忍び込んで、朝に逃げ出す。
これは考えてみたけど、すぐにダメって事が分かったわ。
絶対に寝過ごす自信がある。
朝起きたら、す巻きにされてて、火炙り直前10秒前とかだったら笑えない。
はぁ、あれしか無いわな。
元中二病患者を舐めるなよ!!
サバイバル動画に影響されて、家の庭で火を起こそうとしたり、原始生活始めようとして、両親に怒られたのは伊達じゃないって証明してやる。
俺の部屋に飾っておいた、魔剣フォレストガンプ、あれ、どうなるんだろ。
改造するのに一ヶ月かけた力作だったから、遺品として、大事にしてくれると良いんだけど。
さて、やると決めたからには、火を起こすぞ。
火を起こす材料は、直ぐに見つけることが出来て満足。
解した葉っぱとか、クルクルしやすそうな木の棒。
薪になる小枝を先に組んどいてっと。
後は、クルクルタイム。
煙が出るまで、ひたすら、ク~ルクル、ク~ルクル。
うん、ダメね・・・素人がやっても疲れるだけだったわ。
いや、一応、煙が出るところまではいったんよ?
そこからが難しかったってだけで。
んで、試してみたわけさ。
今こそ我が左目に封印されし炎よ、目覚めの時だ!!
簡単に付いたね、火。
一瞬で・・・クルクルやらなくて良かったじゃん。
小枝はともかく、太めの枝も一瞬で火がつく、超火力。
素手で触っても熱くもなんとも無いのに、不思議だね。
これでマシュマロとかも何時でも焼けるよ、やったね!
ひ~ま~だ~!!
やることが無い。
ずーーーーっと、火を見てるだけ。
ケータイも漫画も無いから、暇すぎてヤバイわ。
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で・・・朝なんだけど・・・
寝過ごしちゃったみたい。
昨日聞いた覚えのある声で目が覚めたんよ。
見つかってたら、ヤバかったよね。
悪運強いわ~自分。
結構近くに居るみたい。
え?逃げる予定はどうしたって?
めんどくさくなって、止めたよ。
これから、逃げる予定。
体力だけは、こっちの方が圧倒的に有利だしね。
そ~ろり、そ~ろり
あ・・・目が・・・合った・・・
ガサガサって音が近くで鳴ってたから、ヤバイな~って思ってたんだけど、ダメだったみたい。
太い腕、自分の腰位の太さはあるよね。
日に焼けた肌が、白髪の、渋めのダンディーな顔に合っていて、グッと来るものがある。
あの太い腕で・・・ってちゃうわ!!
俺はチョロインか!!
逃げる!!
それしかない。
だって、昨日見た村人とは全然雰囲気が違いすぎる。
こう、なんて言うのかな?覇気?みたいなのが、ダンディーな叔父様の身体から溢れてる様な気がしたの。
でっかい、身長が2メートル位は有りそうな叔父様と、同じくらい、おっきくて、ぶっとい剣が背中に見えたしね。
少し舐めてたかもしれない。
いや・・・舐めてたわ。
地球でも、何か出たってなったら、戦える人が出てくるもんな。
異世界でも同じこと。
こういう人が出てきますよね~。
詰んだ?
自分の方が足が早いと信じて、走って逃げる?
命乞いしてみる?
私は悪いアンデッドじゃありませんって。
叔父様は、俺の顔を見て、一瞬、ギョ!!っとしたけど、他の所、アンデッドの部分以外の所を見て、どうするか悩んでいる感じだし、今のところ、直ぐに襲ってくる感じはしない。
此方から危害を加えなかったら、なんとかなりそうな、空気もある。
あ・・・ちょっと待って、剣に手を触れないで。
決まった・・・走って逃げろ!!
幸い、此所がだだっ広い高原とかじゃなくて、森の近くだから、そこに逃げ込みさえすれば、小さくて、身軽な俺の方が有利になるだろう。
叔父様に背を向けて、全力ダッシュ。
俺が逃げると思ってなかったんだろうね。
振り替える瞬間、呆気にとられてたよ。
ダン!!
後ろから凄い音がしたと思って振り返ったら、信じられない様なスピードで叔父様が走ってきた。
陸上短短距離走の選手も真っ青じゃないかな?
それくらい早い。
叔父様じゃなくて、ターミ○ネーターの方でしたか、スイマセン。
叔父様に捕まるギリギリで、森に逃げ込むことができた。
森に入っても終わりじゃ無いのは分かってるけど、叔父様の追いかけてくるスピードが遅くなった。
鎧に、剣に、でっかい身体だもんね。
木とかが邪魔して、俺に追い付けなくなってる。
差は広がらないんだけどね。
どんどん森の深い所まで逃げていく。
これ・・・帰り道、分からなくない?
何処をどうやって来たのかなんて覚えてる訳がない。
どっちから来たのかも分かんない。
えーーーっと、どうしよう。
それに若干地面が柔らかくなってる気がする。
だから、叔父様との距離も少しづつだけど、確実に広がってるね。
体重が軽くて身軽な俺と違って、金属の鎧を着てる叔父様は、地面に足を取られやすいからかな?
このままだったら、逃げ切れる。
その時、後ろから、叔父様の声とドシャ!!っていう音が聞こえた。
転けたのかな?
止まって、振り返ってみたら、叔父様の身体が腰の所まで沈んでいた。
これ、ヤバくない?
叔父様も出ようと必死になって身体を動かしてるけど、動く度に少しづつ身体が沈んでいってる。
このまま逃げれば助かる。
けど、確実に叔父様は死んじゃう。
相手は俺を殺しに来てたんだぞ。
助けるとか・・・
うーーーーん。
目が合っちゃった。
必死な目で見つめないでよ。
しょうがないな~。
「あのー大丈夫ですか?」
「っく・・・殺るならとっとと殺れ」
「見逃してくれるなら、助けますけど、どうします?」
「助けるだと!?アンデッドがか?」
「いや、この顔は、多分アンデッドなんでしょうけど、半分は生きてると思いますよ?」
「・・・俺も焼が回ったな・・・分かった、見逃そう。おかしな真似はするなよ」
「何か出来そうに見えますか?か弱い女の子に言う言葉じゃないですよ」
「クッハハハハー、アンデッドが自分の事を、か弱い女の子と言うか」
「も、もう~、助けませんよ」
「すまん、冗談だ」
「っで・・・どうしたら、いいです?」
叔父様の指示に従って、なんとか、叔父様を沼から助け出すことに成功。
もう、俺に何かしようっていう雰囲気も無くなって、今は、普通にダンディーな叔父様にしか見えない。
森の出口まで連れていって貰えないかお願いしないとだ。
自分一人じゃ絶対に、遭難する。
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