はぁ・・・うっかりですか。
来てくれてありがとうね
この話は、顔面ファイヤーな少女(元ネカマ姫ちゃん)が出没します。
消火器と火災警報器を用意してから、お読みいただくよう、よろしくお願いします。
とある、雪の降る夜。
街灯の明かりも殆ど無い、人通りの無くなった道を一人の少女が歩いていた。
この時間に、女性、それも齢14~16歳に見える少女が、一人で夜道を歩くのは些か危険すぎる。
ザク・・・ザク・・・
足首まで積もった雪を踏みしめながら、少女が向かった先は、一階部分が石造りになっている、二階建ての建物だった。
入り口には、可愛くデフォルメされたドラゴンが、槌で剣を叩く絵が焼き入れられた、吊り下げ看板が風に揺られている。
此所が少女の家なのだろう。
少女は入り口前で、ローブに積もった雪を払うと、建物の裏口から、建物に入っていった。
いや、帰って来たというのが正しいだろう。
勝手知ったるという感じで、玄関に置かれていた、ポールハンガーに無造作にローブを引っ掻けると、寒そうに身体を震わせながら、玄関に入って直ぐ近くの所にあった、階段を少し疲れた様子で登って行った。
建物の2階に上がって来た少女は、リビングらしい部屋に来ると、真っ暗な部屋でも迷う事なく、石で組まれた暖炉に近づき、おもむろに自分の左目の部分に手をやった。
何故?左目に何かゴミでも入ったのか?
違う、少女の顔の左半分は、派手すぎない装飾の入った、銀色の仮面で覆われている。
目の部分も閉じているので、ゴミが目に入る心配も無いだろう。
ならば何故。
少女が仮面を外すと、其処には、何も無かった。
否、有る事には、在る。
骨が剥き出しの顔が其処にはあった。
仮面を外すのと同じくして、少女の左目の部分から、翡翠色に似た、炎が燃え上がった。
その翡翠色の炎は、少女の髪にまで届いて居たが、髪が燃えるような事も無ければ、髪が揺れる事もない。
ただ、ホログラムで映し出された仮初めの炎の様に、燃え続けるだけだ。
部屋を明るくする事もない、不思議な炎だ。
だが、少女が、その翡翠色の炎に手を添えると、少女の掌に蝋燭の炎程の小さな翡翠色が移り、その翡翠色を暖炉に入れると、その瞬間。
暖炉には、明るい見慣れた赤い炎が灯り、部屋を照らしだした。
同じように、部屋の明かりを点けた少女は、一息着くと、暖炉の前にあるソファーに座り、直ぐに眠りだしてしまった。
余程疲れていたのだろう。
座った途端に、寝入ってしまった。
顔の右側だけ残された、歳相応の少女の寝顔で。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ん?此所は?」
それが、この世界、レリアースに来て初めて、口に出した言葉だった。
高原、俺が寝転がされていた近くには、踏み固められた様な道が延びていて、遠くに見える村らしき所に続いてる様だった。
そうなんだ、いつの間にか、俺は何もない高原の、ど真ん中で寝転んでいたんだ。
一体何時、高原に来たんだ?
俺の記憶が合ってるんだったら、数分前は、学校に遅刻しかけて、走っていたはずだったぞ。
それも、こんな自然の中を、ハ○ジみたく、走っていない。
日本の何処にでも有りそうな、商店街を走っていたはずだ。
何処から、記憶がおかしくなった?
あそこか!
近道しようとして、路地裏に入った所らへんだ。
曲がり角を曲がろうとした時に、変な声が聞こえたんだった。
確か、「ふぉえぇぇ~」だったかな?
それから、何かと当たって、視界が真っ暗になったんだ。
{変な声とは失礼だな~}
そうそう、こんな声だった。
{聞こえてるよね?ね?}
え?まじで何か聞こえるんですけど。
当たった時に、頭でもぶつけたか?
{大丈夫、気のせいじゃないよ。君は至って正常だ}
そうか正常か・・・・って、誰だよ。
「誰かいるんだったら、出てきて下さい」
{残念だけど、今のところ君以外、近くには誰も居ないよ}
「いや、声がしますよね?出てきて助けて下さい。此所が何処だか分からないので、帰り道が知りたいんです」
{あー、ゴメンね、今、君と話してるのは、思念体?君の世界でいう、神様とか仏様的な感じに似た存在?僕はそっちに行けないから、テレパシーって言ったら分かりやすいかな?君の頭の中に直接干渉して、話してるんだよね}
「神様?居ないだろ、そんな、あやふやな存在。からかわないで下さい」
{ん~、信じてくれないね~。君きみ、自分の身体を見てみなよ、そしたら、少しは分かってくれるんじゃないかな}
「身体?なにか違・・・う・・・って・・・」
{どう?分かってくれた?君が今、どういう状態なのか}
「女の子っぽいです・・・手が・・・」
{元々、君って男の子だったから、違うよね。声も女の子っぽいし}
「ぇ・・・でも、なんで?」
{えっとね、それを語るには、聞くも涙、話すも然々っていう、話が}
「いや、真面目に、答えてください」
{ごめんごめん、ちゃんと説明するから、怒らないで}
{君はね、うっかり消滅しちゃったんだ}
このテレパシー?の主が言うには、順を追っていくと、こんな感じだった。
1、思念体と、ぶつかった時に身体が耐えられずに消滅。
2、思念体の世界では、原生生物に被害を出すことは禁じられている。もしもの時は、上手く誤魔化す事になっているらしい。
3、うっかり身体を消滅させられた俺の身体が、うまく元に戻らなかったので、俺の記憶の情報から復元した。
元の世界では、俺の事はバラバラ殺人事件になっているらしい。ゴメンねテヘペロだとさ。
4、俺の新しい身体が、元の世界には合わないらしく、異世界、俺の身体でも合いそうな世界に移動させた。
5、今に至る。
だそうだ。
「それでも、これは、あんまりじゃないか?これって、俺が使ってたゲームのキャラクターだぞ」
{それは、まぁ、あれだよ、君の中で、一番気持ちが強かったし。ぶっちゃけると、少し嬉しかったりしない?}
「ま、まぁ、確かに、憧れではあったかな」
{だよね、ガチのネカマで、お姫様してた位だし}
「は!?おま!俺の記憶見たのか?」
{当然、全部見たに決まってるじゃないか、そうじゃないと、身体も戻せないしね}
「ああーーー!!マジかよ!忘れろ!今すぐ忘れろ!!」
{ごめんね、一度、見たも物は、僕の記憶に統合されてしまうから、忘れらんないや、記憶を切り離すのも、痛いし、やりたくないね~}
「へ~、記憶をねー、切り離せるんだ・・・今すぐ切り離してくれ、そもそも、うっかりミスなんだろ?そしたら、この事も許してやるから!」
{機会があればね~、あ、そろそろ、時間だ}
「え?ちょっと待てよ、此所の事、なにも聞いてないぞ!」
{あー、だめだ、此所は、レリアース、君のゲームにあった、ポーチ?それはサービスだか・・・・}
「こら!まて!」
この後、何回も呼び掛けても反応が無かったから、本当にテレパシーみたいなのが切れたんだろう。
さて、どうするか・・・
とりあえず身体を触ってみる。
柔らかい。
女の子の身体なんか、学園祭で手を握ったりした位だったもんな。
胸は・・・
そっと、服の上から触れてみる。
やわらか!
大きさは、よくわからん。
身長も、多分、ゲームのと同じ位だろうし、150と少し位かな。
腰回りも触ってみたけど、スゴい括れてるね。
それで、一番の問題。
顔・・・気を効かせてくれてたら、いいんだけどなー。
右半分、ほっぺた、スベスベでフワフワだ。
左半分、ヒタ・・・、固い、ツルツルだけど、アレダヨネー。
はい、残念な事に、本当に、そのまんま、同じにしてくれやがりましたよ。
顔の左半分、ガイコツです。ホラーです。
目の所は、燃えてた筈だけど、熱くは無いし、髪も燃えなさそうです。
これは、仮想の世界だから、皆、受け入れてくれてた訳であって。
現実じゃ、これ、ダメなやつだろ。
はぁ・・・、まぁ、あの声も、この身体に合う世界って言ってたし、こういう姿の人も居るんだろうな。
そう思ってた時もありました。
高原から見えていた村に辿り着いた瞬間に、俺の姿を見た、女、子供は絶叫を上げながら逃げるわ、男共には農具で追い回されるわで、散々な目に遇いながらも、なんとか逃げる事ができた。
今は、俺が逃げ込んだ近くの茂みを、農具で武装した村の男達が、探し回ってるところ。
遥か遠い異世界で言葉が分かるのは嬉しい事なんだけどもさ。
「あの醜いアンデッドは居たか!?」
「此方には居ない!まだ近くに潜んでる筈だ!」
「絶対に逃がすんじゃないぞ!」
・・・と、散々言ってくれてる訳なんだよね、俺はモンスターかよ!
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「マッチ、マッチはいかが~」