6.ガレリア亀岡(京都府亀岡市) -徒然草のパワースポット
道の駅味夢の里は高速のパーキングエリアも兼ねているためか、夜間も明るく、人や車もそこそこあった。車中泊も二日目だったので、少しはよく眠れるようになった。
翌朝は七時半頃に起きてトイレに行き、洗面所で顔を洗った。きれいなトイレというのは気持ちがいいものだ。隣の古墳公園や近くの田んぼのあたりを散歩すると、爽やかな風が吹いて、気持ちがよかった。都会暮らしでは味わえない快感だ。
今日は京都を通って琵琶湖へ行くことにした。八時半頃に出発し、国道9号線に出て亀岡方面に南下していくと、前に通った旧園部町の市街地へ来た。途中のコンビニでサンドイッチとコーヒーを買い、朝食にした。ちょっと寂しいが、そうそう贅沢ばかりはしていられないのだ。
国道9号線をさらに南下すると、左手に大きな川が見えてきた。川下りで有名な桂川だ。このあたりはもう広々としていて、山は遙か彼方に見えるだけで、平地という感じがする。
しばらく行くと、近くに徒然草にも出てくる出雲大神宮があるとガイドブックに書いてあったので、行ってみることにした。パワースポットもあるらしい。
山陰本線の千代川駅の手前で左折し、桂川の橋を渡って左手に南丹高校を見ながらさらに進み、ちょっと細い道に入っていくと、田んぼの中に出雲大神宮の駐車場があった。そこに車を駐めて、狭い坂道を少し歩いて登ると、木々が生い茂る神社に着いた。隣にはちょっとした池があって雰囲気がいい。
大きな石の鳥居をくぐると、隣の池の方に弁財天の小さな社が祀ってあったので、お賽銭をあげて拝んだ。それから参道を歩くと、石のウサギの像が建っている。なでウサギと書いてあり、どうやら因幡の白ウサギと関係があるらしい。感じは現代風で、どことなくゆるキャラに見えてしまうが、頭を撫でておいた。
そこからさらに鳥居をくぐっていくと、本殿の前に狛犬があった。これが徒然草に出てくる狛犬だろうか。参拝に来た上人が狛犬の向きが普通と違うのに気づき、何か深いいわくがあるのだろうと感涙したら、たんなる子どものいたずらで、上人の感涙いたづらになりにけりというやつだ。
とりあえず本殿で参拝をして、ちょっと脇道から上っていくと、そこにパワースポットがあった。磐座という巨大な岩で、隕石かと思えるような形をしている。おれはその前に立って両手を上に伸ばした。すると何だか宇宙からパワーをもらったような気がした。
再び境内に戻り、真名井の水という御神水が湧き出ているところで水を手のひらで救って一口飲んだ。冷たくて清々しい味がした。
駐車場に戻り、道の駅ガレリア亀岡に向かう。田んぼの広がる中の道路を通り、桂川の橋を渡ってしばらく行くと、ガレリア亀岡に到着した。けっこう大きなモダンな建物だった。生涯学習施設とかで、いろいろなイベントが開催されるところらしい。
端っこの方に道の駅の物産品売り場とレストランがあったが、そのスペースは小さかった。おれは炊き込みごはんを一パック買い、車に戻って食べた。
道の駅を出て亀岡市の繁華街の方へ行き、亀岡城の横を通る。かつて亀岡城のあった敷地には今は大本教がある。
さらに先へ進むと、クニッテルフェルト通りと書かれていた。何だろうと思ったら、亀岡市の姉妹都市の名前らしい。
亀岡から嵐山までは保津川下りやトロッコ列車もあり、風情もありそうだ。しかしおれは一般道を車でひたすら京都方面へ向かった。
国道9号線で山の中を抜けて京都市内に入ると、急に開けてきて都会という感じがしてくる。すこし行くと、左手に仁左衛門の湯という温泉が見えてきた。昨日は風呂に入らなかったので、少し早いが立ち寄ることにした。京都桂温泉と書いてあるが、本物の天然温泉だそうだ。
入浴料七百円を払って中に入ると、大浴場に露天風呂まであった。おれは紙と体を洗い、露天風呂へ行ってゆっくりと湯船につかった。やはり温泉は気持ちのいいものだ。
すっかり気分がよくなり、おれは近くの松尾大社に立ち寄ることにした。松尾大社も近年パワースポットとして人気があるらしい。温泉を出て十分ほどで到着した。すぐ近くには桂川が流れ、背後には山が迫っていて、自然の気が漲っているように感じた。
赤い鳥居をくぐって参道を進み、手水舎で手と口をすすいで本殿の方へ行こうとすると、亀の像があった。これも撫でると御利益があるらしく、あちこちが磨り減ってピカピカしている。おれは頭と背中を撫でておいた。
本殿でお参りをしたあと、樽占いというのが目に付いた。弓から矢を放って樽の中に入れるというもので、せっかくなのでやってみると、矢は真ん中に命中し、自分でも驚いた。ちょっと高級そうなお守りをもらった。
こうしてこの日はパワースポットを二カ所も回り、温泉にも入ることができたので、おれは上機嫌で琵琶湖へと向かって出発したのだった。