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梅雨

作者: 波止 晴信

書いちゃったから投稿します。

 週四で雨の予報。

 梅雨の到来である。

 部屋干しが増えて、一年の中で、最も部屋が臭くなる時期が来たのである。 かと言って、わざわざコインランドリーに行くのも面倒。 お金をかけるのも、なんとなく嫌。


「今年も我慢しかない」


 別の方法を考えるのも、また面倒。




 面倒といえば、こういうときである。

 朝は晴れていたのに、帰るときにザアザアと雨が降っているとき。 さらに、傘を持ってくるのを忘れたとき。


「降らんったやんけ」


 午後四時過ぎ。 大学の四限目の講義が終わり、帰る学生が一段と多くなる。 その中で傘を忘れる学生は少ない。 入学当初ぐらいのときに、傘の貸し出しをやってるとかどうとかの話を聞いたことがあるけど、肝心のどこで貸し出しをしているのか分からない。 返すところも知らない。

 今日の講義も終わったし走って帰るものありかな、と一瞬思っけど、普通になし。

 教科書が濡れて、へにょへにょになるし、服が濡れるのが普通にヤダ。

 階段の横のベンチに腰掛けて、ぼんやりと外を見る。 止む気配がない黒々した曇天の空。 ドアが開くたびに雨の音が耳に入ってきて、ふと思う。

 梅雨は春の風物詩なのか、夏の風物詩なのか、どちらなのか。

 暇潰しに調べてみると、夏らしい。 俳句での夏の季語の中に「梅雨」があるとの理由から、梅雨は夏という知恵袋の答え。

 また暇になった。 階段から降りてくる集団といちいち目が合う。 入ってくる集団とも目が合う。

 不思議なもので一人で来る人とは、なかなか目が合わない。

 ……どーでもいいけど。

 頭の中をからっぽにして、ぼんやりしていると五限が始まるチャイムが鳴った。 入ってくる人も降りてくる人もいなくなった。

 これで気まずい思いをしなくていい。


「さて、帰るか」


 雨の中を走る。 スマホの入ってるズボンが重く、ずり落ちそうになるのを、何度も引き上げて走る。

 大学に入ってまともに運動してなかったせいで、すぐに息が上がり、足の回転が遅くなる。 次第に歩いてしまう。

 一度歩くと、もう一度走る気にならない。

 一度濡れると、もうどうでもよくなる。

 スマホのことを考えると、少しだけ足の回転が速くなる。

 ちょっと走って、すぐに歩く。

 

「あぁ……、しんどい」


 そう口にはするが、気分は思いのほか悪いものではない。 たまには濡れるのもいいかなって思うが、またちょっとだけ走り出したい気持ちになる。


「明日の部屋は臭くなるんだろうな」

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